第6話 エコリレーのフィナーレと市民環境フェスティバル御池('97.11.30)
☆東京モノローグ、今回は東京を離れて京都からのレポートです。
11/29のJRダイヤ改正で新大阪~博多を走っていた500系新幹線のぞみが東京入りすることになった。指定席を電話予約する時に偶然気がついて、何はともあれ乗ってみることにした。今回の改正で500系を乗り入れたのは、やはり地球温暖化防止京都会議(気候変動枠組条約第3回締約国会議=通称COP3)に備え、東西から京都入りする乗客の輸送スピードをアップする意図と同時に、JRとしてさりげなくPRを込めたかったからでは、とふと思った。
「ストップ!地球温暖化 列島縦横エコリレー」の自転車は東京~京都の間を約20日間かけて走ってくる訳だから、それをたったの2時間14分で来てしまうのは、何とも申し訳ないと言うか、物寂しいと言うか。速さに感激するよりもそうした感情が強かったのは確かである。加えて、地道に人力で走り続けることの偉大さと、エコリレーに寄せられるたくさんの思いやメッセージの重さ・熱さを感じずにはいられなかった。とにかく自分にできることは、全国から京都をめざして集まってくるその自転車の隊列を出迎えることと、11/30のエコリレーのフィナーレを飾る京都市内での自転車パレードの準備くらいなもの。スタートからゴールまで走り通した方々の労にはとても及ばないものの、少しでも手伝うことができるなら、と馳せ参じた次第である。
景観論争を起こした京都の新しい駅ビルは、確かに論争を呑み込むかのような威容で、古都の玄関口とにしては立派すぎるつくりだと思った。COP3で訪れる外国客は、この京都駅を見てどう思うだろうか。太陽光発電はあるようだが、他に風力発電の設備を付けるとか、雨水を使った中水道を設けるとか、壁面緑化なり、ビオトープを作るなり、もっとエコロジカルな駅をめざしてもよかったのでは、と思う。とは言え、集客力は抜群だし、皆さんにこやか顔で駅ビルを堪能しているのがよくわかったので、それはそれでよしとすべきだろう。駅ビルをひととおり見物した後、まだ自転車が到着するには時間があったが、とにかく集合会場である山陰本線の二条駅へと急いだ。
16:30の集合に対して、17:00までに着いた自転車隊は3コース分。街宣カーの先導に続いて、続々と自転車が走り込んでくる。出迎えの人数はちょっと少なめだったが、労をねぎらう声援と拍手で大いに盛り上がった。感極まる場面である。東北・太平洋コースの隊もやってきて、自分が第一京浜で乗ったであろう自転車と再会した時は、言い知れない歓喜を感じた。翌日は6つのコースに分かれた自転車パレードが市内を縦横に走る。パレードは大谷大学にいったん集結した後、連なって京都市役所をめざしてフィナーレを迎えるという設定。二条駅の集合会場は、その6つのコース分けが既にされていて、自転車が手際よく並べられていく。何台くらい運んだのか覚えていないが、それだけ夢中になって作業していたんだと思う。自転車と旅を続けてきた旗幟は、風雨や排気ガスと闘った後と言うか、当然のことながら、かなり摩耗が進んでいた。使用に耐えるものとそうでないものを分けたりしながら、残りの自転車隊の到着を待つ。すると辺りが暗くなり始めた頃、大粒の雨と稲光が襲ってきた。この時の低気圧は静岡でも猛威を奮ったそうで、東海道新幹線を止めてしまったと言うから空恐ろしい。新幹線で足止めを食って、11/30の準備で京都入りする筈のスタッフの到着が遅れたこともあとで聞いた。ともかくこの大雨のせいで、残りのコースの自転車は、走行を中断し伴走のトラックに積み直しての到着になってしまった。盛大な出迎えができなかったのが惜しまれるところである。
さて、雨が降り尽くしてくれたおかげで、寒さは厳しかったが、11/30は朝から程々の天気となった。予定ではもう一度二条駅に行って、自転車パレードの出発の手伝いをする筈だったが、急遽、フィナーレの会場になる京都市役所へ行くことになった。そこで開催される「市民環境フェスティバル御池」の設営準備の人手が足りなかったのである。いつものアースデイのメンバーと合流し、エコリレーのブース出展の準備と、エコリレーの各コースで集めた様々な方達の寄せ書きが詰まった長~い布を貼り出す作業に徹した。他のNGOの出展を見て回ったり、東京で顔なじみの方々と会話する余裕が少しはあったのでよかったが、布を人目に留まるようにセッティングするのには本当にてこずった。時折強く吹く風のせいで、布を掲げるポールが倒れてしまうのである。結局、地面に直接貼り付けるなどして、何とか収拾。あとはエコリレー(自転車パレード)の到着を待つばかりとなった。そしてその時は訪れた。予想していたのとちょっと違う現われ方だったので意表を突かれたが、14:00を回った頃、京都府と京都市の長、それに岩垂元環境庁長官の先導で、自転車約600台が次々と市役所の玄関前めざしてゴールイン。感動的なフィナーレ(温暖化への取り組みはこれからがスタートでしょうが)を現場で体感・共有することができた。
エコリレーは総勢約1万名の方々の参加を受け、その間集めた自治体首長からのメッセージ数は、最終日の京都市と京都府を含めて1395になったとのこと。フィナーレには大木環境庁長官も駆けつけ、荒巻府知事から1395のメッセージが手渡された後、COP3の成功に向けた決意表明がなされた。(COP3では、このメッセージに託された思いを受け止め、国益ではなく地球益を優先する形で、大木議長にはまとめあげてもらいたいと思っています。)
エコリレーでは1件の事故や負傷者も出なかったと言う話を聞き、安堵すると同時に、クルマ社会の今日にあって極端なことを言えば、神憑り的なものを感じた。自転車の復権、底力を示したこの一大プロジェクトは、温暖化防止にかける多くの人たちの熱く厚い思いが実を結んだ成功例として、そして具体的な温暖化防止行動・環境保全行動を促す原動力として、記憶され、継承されることは間違いないだろうと思う。
市民環境フェスティバルの撤収後は、エコリレーの紹介ブースを国際会館で出すと言うので、その準備に向かった。12/1の国際会議初日は、パスの余分が出なかったため入れず、外側を見て回っただけだったが、11/30にちょっとだけ入れたのは幸いだった。X線の手荷物検査に面食らったり、場内の照明やコピー機がフル稼働状態だったのに閉口したりしたものの、国際会議の緊張感・臨場感が体験できたのは、今回のお手伝いツアーでのもう一つの大きな収穫と言える。
会期中はアースデイの常連スタッフは現地にいます。こっちは留守番しながら、会議の行方を見守るのみ。心からエールを送りたいと思います。
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