第09話 雪が降る('98. 1.15)

 1/8の雪も激しかったが、今日1/15のこの雪の降りようはどうだろう。朝から降り続いて、弱まるどころか勢いを増すばかりである。西から大風もやってきて、風雪状態になり、夕方がピークだと言うからたまったものでない。休日だったからまだよかったものの、外出していたらと思うと、背筋が凍りそうだ。(この荒天の中を働く方々、出かけざるを得ない方々には、敬意を表すばかりです。)

otoshidama-free.jpg 1/1はJR東日本の正月サービス「お年玉フリーきっぷ」を使って、列車の乗り継ぎで1日を過ごした。大宮から長野行新幹線で終点まで、長野からは、特急みのりで3時間かけて新潟まで、新潟からは酒田の手前、余目まで特急いなほに乗り、余目から山形までは快速月山で、といった具合。長野県に入れば雪景色が拝めるだろうと期待していたがそれがさっぱり。黒姫、妙高高原あたりでやっと雪にお目にかかることができ、新年初雪!などと喜んでいたのと裏腹に、この東京での隔日での雪三昧には感動を通り越して、うらめしさすら覚える。直江津から新潟、そして余目までの日本海沿いは、雪一色だろうと思っていたのが、豪雪の地であるはずの長岡ですら、雪を見ることがなく、村上から北にかけてようやく雪混じりの天気になった程度。今年は暖冬だし、雪は少なそうだ、なんて考えていたのが嘘のようである。余目から新庄に向う最上川沿いの雪渓が思い出される。自宅裏手の荒川河川敷も人の姿は皆無で、ひたすら真っ白だからそれなりの情感を湛えているものの、やはり最上川の森厳とした雪景色とは訳が違う。明日は止むだろうか、といった不安をかきたてるばかりの風景である。

 北国・雪国の人からは一笑に付されそうだが、雪に弱い首都圏の有様は目を覆うばかり。1/8は憂き目に遭った。渋谷を21:00に出たところ、山手線は超満員。逆方向に一駅戻ってから乗り込み、おまけに席を確保することもできたので、これはもう行けるところまで行くしかないと決め、本来なら新宿で埼京線に乗り換えるところを、そのまま乗って池袋をめざした。ところが高田馬場駅に着いてから動かない。車内アナウンスが原宿駅付近での倒木事故を伝える。明治神宮の敷地の木が倒れて、架線を切ったらしい。乗り換えミスと悔やんだところで仕方がない。山手線上下とも止まってしまったので、振替で営団地下鉄東西線~南北線と乗り換え、王子をめざすことにした。どうにか、王子まではすんなり来れたのだが、その後がまずかった。京浜東北線が来ないのである。これは後で知ったことなのだが、何でも鶴見付近でやはり架線事故があって、立ち往生したそうである。その立ち往生列車を待っていたので、30分以上も雪の映える飛鳥山の森を見て過ごすことになってしまった訳である。(おそらく、事故が発生してから復旧するまでの長いインターバルを駅でひたすら待ち過ごした人もいたんだと思う。) これまでに体験したことのないような満員列車に揺られ、赤羽に着く。さて、埼京線だが、夜分のせいもあり、これまた来ない。やはり30分程待たされて、自宅に帰りついたのは、実に23:30だった。ふだん渋谷から自宅最寄り駅まで通しで乗った場合、たかだか20数分だからおそろしく時間的回り道をしたことになる。多分、新宿で乗り換えていたら、遅くとも22:00には着いていただろう。大手町で15cmと発表された東京の「大雪」がもたらした交通マヒのこれはほんの一例である。

 何よりひどいのは、田町を21:00に出て、小田原に朝の6:00に着いたという社内の知人の同僚の話。これは東海道本線の普通列車が横浜駅手前1kmあたりで、立ち往生したものの、それが架線断線が原因ということを車掌、駅員何ら把握しておらず、あいまいなアナウンスで乗客を4時間以上も車内に閉じ込めてしまった、という事故にその人は巻き込まれてしまった。田端にある管制室に各線区からの事故情報が集中したために、全てを処理しきれず、列車の適切な運行を指示できなかったことがこの事故を招いたと、報道番組がふれていた。線路内に降りることを制止し続けた結果、身動きがとれなかったこの時の乗客は、結局、手動で扉を開け、横浜駅まで線路伝いに歩き、待合室で眠る、長蛇の列に耐え、タクシーで家路に着く、といった顛末を余儀なくされた。横浜駅に着いた頃には、振替手段になる他の鉄道は終電もなくなっていた訳だから、その時の心情たるや察するに余りある。情報の分散処理の必要性と、指示が来ない場合に求められる本当に必要な状況判断と勇断の大切さを感じた。

 雪に弱い首都圏だからと嘆くより、それを承知の上で、自らでリスク管理する必要も欠かせないと思う。もし同じような事態になった時、自分の判断で手動で扉を開け降車を試みるのは、リスク管理の観点からすれば当然と言っていいかも知れない。

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