第19話 「ソウルキッチン」('98. 6.15)

 「東京モノローグ」と名づけたこのコーナー。いまさらながら名前の由来を語らせてもらえば、メトロポリタンテレビ(14ch)で夜、放映されていた「東京モノクローム」という番組にヒントを得たのと、巷に「東京○○」というのが何かと耳目に付くようになったのを受けてのことで、あまり大した意味がある訳ではない。東京は筆者の故郷でもあるので、日常の東京(及びその周辺)での生活を書き綴ることで、何となく東京への愛着を示したい、という意図はあるが、正直なところ、書きたいことを筆に任せて書いているだけである。

 今回は従来路線をちょっと変えて音楽の話を少々。筆者地元の赤羽で、駅に最も近い図書館と言えば、西友・ダイエー界隈にある赤羽会館にある図書館だが、ここで貸し出しているCDは、時々筆者好み、かつ新作に出くわすので重宝している。世田谷区、品川区に住んでいた頃は、なかなか借りられなかったものも、北区の図書館では容易に手にできる。たまたま赤羽近辺にはその手の音楽愛好家が少ないのか、それとも単に筆者が年をとり、流行音楽から遠ざかりつつあるからか、は定かでないが、ともかくありがたい限りである。

soulkitchen.jpg 佐藤永子なんて書くと誰のことだかわからないと思うが、EPOと言えば、知っている人は増えるだろう。「DOWNTOWN」や「土曜の夜はパラダイス」が某番組のエンディングでかかっていたのを聴いて、そのポップさと歌声の良さに魅了されてかれこれ15年。お気に入りのシンガーソングライターの一人であるが、そのEPOが今年3月に出した新作CDを今回は借りることができた。その名も「ソウルキッチン」。しかしながらアルバムタイトル曲は収録されていない。つまり10曲ある作品全体のイメージを総称してアルバムタイトルにしたようである。なかなか味なタイトルだと思う。

 出たての頃のどこかの音楽評論に、「前作までどこか型にはまったような感じがあったが、それが見事に解き放たれている。自分が本来やりたかった音楽に帰着したようだ」とあったのを思い出す。なるほど確かに、1曲目からこれまでと違う伸びやかさやリズムが感じられる。...最初に出かけたEPOのコンサートは、今から10年前。まだポップシンガーとして名を馳せていた時期である。その後しばらくポップ調が影を潜めた感があったが、91年に英国ヴァージンレコードとの契約で「FIRE&SNOW」なるアルバムを発表。ここに収録された各曲の洗練されたリズムやビートは90年代EPOの新境地を感じ、また心地良いポップスが聴けると期待させる力作だったが、このアルバムのラストの曲「赤い川」は日本の伝統民謡を彷彿とさせるもので、他の曲と趣を異にしていた。実はこのラストの一曲が、今にして思えば、90年代EPOの音楽の原点だった、と言っていいと思う。2回目にコンサートに足を運んだのは92年の末。「FIRE&SNOW」とは打って変わって天然というか自然体になった次のアルバム「Wica」をひっさげてのコンサートである。当然アコースティックなバンド編成なのだが、何かしっくりこない。5年前のPOPなEPOはどこへやら、といった感じで少々拍子抜けしたのを覚えている。もっともこの時に書いて出したアンケートがきっかけで、その後できたEPOのファンクラブに入会することになったり、会員向けのプライベートなライブにも行けたので、ご縁はあったのだが、何となくここ5年程、EPOの音楽に違和感があったのは確かである。前作「DANCE」で多少、昔ながらのポップ感が戻ってきたようにも思ったが、今聴いている「ソウルキッチン」の方が優っている。評論の言う通りだと思ってしまった。

    1. 「BLEEDING HEART」:何より歌唱が力強いし、バックも歌を盛り立てている。シングルカットしてもよさそう。
    2. 「soramimi」:スチールドラムが耳に残る。ポップなリズムが帰ってきた感じ。
    3. 「Nonane」:詞なき歌声に、重く響くギターが調和する。
    4. 「月のない夜」:近作でよく出てくるなつかしい民謡調の曲だが、ピアノだけの単調さをトロンボーンが巧くカバーしている。
    5. 「イワンのばか」:音が重なり、グルーブが高まっていく展開。8分近い大作。
    6. 「寂しくならない別れの言葉」:ポップで心地良い。特にストリングとグロッケンが効果的。エンディングもいい。
    7. 「聖き彼の人」:気持ちが落ち着く一曲。宗教音楽的だがパーカッションが荘厳さを抑えて程好い。
    8. (1曲飛ばして...)
    9. 「Wonderful Life」:某発泡酒のCFで流れている曲。CFバージョン(シングル版)と異なり、よりブギウギっぽい仕上がり。
    10. 「心の旅」:(特にコメントなし)

 肩の力が抜けた自然体な感じは残しつつ、力強さやポップ感、それにビート感が加わったのが喜ばしい。「ソウルキッチン」と名づけたのは、魂をこめつつも、自由自在に音楽を調理したい、調理できるようになった、という気持ちの表れかも知れない。そのうち買い求めに行こうと思う。(ちなみに筆者愛聴のEPOソング上位3曲は、3.疑似恋人達の夜、2.真夜中に2度ベルが鳴って、1.雨のケンネル通り、である。どうやら80年代EPOにまだ傾倒しているようだ。)

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