第33話 コンタクトレンズ('99. 1.15)
高校受験の勉強中に視力が落ち、視力回復のトレーニングなどもいろいろ試みたものの、結局メガネを着用するようになって、10年。その後、メガネに代えて、コンタクトレンズをするようになって、3年と10カ月が経っていた。コンタクトレンズの替え時というのがよくわかっていなかったので、レンズを着けていて痛みを覚えたり、よく見えなくなってきたら、その時買い換えればいい、程度にしか考えていなかったのが正直なところ。その日も特に違和感なくコンタクトレンズを着けて、赤羽に出かけていたのだが...
赤羽図書館を出て、アーケード通り(地元名:LaLaガーデン)に向って歩を進めていた時である。不確かだが、右手が左目に触れたのだろう。途端、左の視界がぼやけてしまった。場所は、赤羽図書館と赤羽公園に挟まれた小さな交差点を渡り、西友に抜けたあたりである。いつものように単にレンズがずれただけのものとタカを括っていたが、今度ばかりはついに落としてしまった。これまで数々の修羅場(失くしたのは専ら室内だったが)をくぐりぬけて、持ちこたえてきたのだが、とうとう人通りの中、地面を這って捜す、というよくある?!パターンを自らが経験することになってしまい、顔面蒼然+胸中騒然状態である。西友の駐輪場の傍らだったので、自転車の出し入れがある上、歩道の幅が狭く、行き交う人がただでさえ多い、という悪条件。おまけに、日光が射さないロケーションなので、何となく暗いし、寒風がちょっとでも吹こうものなら、身に滲みることこの上なく、とても落ち着いて捜索できる状態ではなかった。駐輪場の整理にあたる警備員風のおじさんや、通りがかりの人などを一時巻き込んで、20~30分費やしたものの、とうとう見つけることはできなかった。落とした即刻に、誰かに踏まれてしまった可能性、強めの寒風に乗って、遠くへ飛ばされてしまった可能性、どれも高いものがあり、ここは一つ、断念するのが筋と言い聞かせて引き揚げることにした。3年10カ月も使ってきた訳だから、ここで失くなったのは思し召しだったんだろう。
95年の3月頃から、左の視界を支えてきたレンズ。レンズにはその分の記憶が刻まれている。もったないという以前に、共に生きてきた片棒を失ったような、大げさだがそんな思いもちょっとあって、哀愁漂う土曜日の昼下がりであった。
紛失したその日のうちに、渋谷にあるYコンタクトレンズに向った。はじめてレンズを買ったのが同じ店の東京駅前にある本店だったが、診療券・カルテが共通だったので、すんなり手続きでき、ありがたかった。この時ふと、本店に残っている顧客データ上の住所を更新していなかったことを思い出し、又、本来なら定期点検の知らせに応じて、レンズの具合を診てもらい、替え時に備える、そんなことを思い出したのであった。つまり点検の知らせが来なかったことで、3年10カ月のロングラン使用になってしまった訳である。相棒を失った右目のレンズだが、試しに顕微鏡レベルでチェックしてもらったら、案の定「このレンズで眼球が痛みませんか?」と言われる始末で、許容を超えるキズが付いていたのがわかった。係の人がその特殊スコープを覗きこんでいる時間がやけに長いから察しはついたが、何ともお恥ずかしい限り。左も相当傷んでたんだろうな、とここでまた失ったレンズを思い返す筆者であった。ともあれ、年が変わって間もないことだし、これを機にと、両目とも新調する運びとなった訳である。おかげで視界も気持ちも入れ替わり、打って変わって清々しさ漂う土曜日の夕刻となった。めでたしめでたし。
今までのは、とにかく丈夫なのがとりえのレンズだったが、今回は酸素透過性と汚れにくさがポイント。丈夫さを過信して、粗雑な扱いをした結果、多量にキズを付けることになってしまったので、その点ひとまず反省し、今度のレンズは丈夫さでは劣るため、なお一層の丁寧な扱いをせねば、と肝に銘じるのであった。その代わり、今後は乾燥感が少なくなるので、実に助かる。ふとした弾みで落ちてしまったのは、眼球表面とレンズの間が潤ってなかったためか。これなら落とす心配もまずなくなるだろう。ただ、レンズ本体が透明なので、万が一落とした時が厄介だ。今までのは薄いブルーだったので、出し入れの時に洗面台に落とすことがあってもすぐに探し当てられたが、今度はちょっと手こずりそう。ともかくはじめから丁寧な扱いを心がけるに超したことあるまい。保存液と酵素洗浄剤も今までのを継続して使えるが、新品ゆえ、まめに手入れしようと思う。
...保存液の話が出たついでに、ひとこと。協和コンタクト発売の保存液に、容器の消毒液が残留しているものがあるとのこと。製造時のトラブルによるもので、この保存液を使用すると、角膜を損傷する等の危険があります。すでに被害も出ており、協和コンタクトでは現在、回収を進めています。ご注意を。販売時期:1998年1月~7月頃、容量:120ml(対象ロット番号:0907・0909・0910・0911・0912・1002)及び180ml×2(対象ロット番号:8079・0179・1179・2179・1089・2089)です。(東京都消費生活総合センター発行「東京くらしねっと」No.21より)
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第33話 コンタクトレンズ('99. 1.15)
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://mt.chochoira.jp/mt-tb.cgi/36
コメントする