第46話 メンテナンス('99. 8. 1)
物を大事に長く使おうとする心がけはあるつもりなのだが、よく物を駄目にしてしまう。扱いが粗雑なせいもあるのかも知れないが、何と言うか不運が多いのである。ここ数カ月を振り返るだけでも、i)高校時代から気に入って使っていた青い傘を自宅玄関の通路手すりにかけていたら、強風で飛ばされて骨が折れてしまった。ii)日比谷公園のバザーで破格値で買ったナップザック(買い物袋の代わりによく使っていた)がアースデイの書類等を詰め込んでいたら、ヒモが切れてしまって、ただの袋になってしまった。iii)通勤用に使っていたカバンの肩かけ用のバックルが壊れてしまい、単なる手提げカバンになってしまった。iv)履きなれていたスラックスの膝の部分に穴があいてしまった。(衣料品はこの他にも事故が多発している)などなど。恥ずかしながら、これらi)~iv)については、その後ろくろく手入れもせず、中途半端な状態で家の中で転がっている。
さて、第43話で書いた自転車通勤だが、出足こそ順調だったものの、6年乗り回していたおかげで、実は後輪が摩耗していて、徐々にタイヤのハリがなくなり、とうとう空気が抜けてしまい...というのが、5月下旬のこと。新宿界隈の自転車屋巡りをしたが報われず、結局、東急ハンズに持ち込み、パンクの応急手当をしてもらい、事無きを得るも、パンクを引きずって結構うろうろしていた後だったので、いよいよ摩耗がひどくなっていて、「これじゃまたすぐパンクしますよ」と忠告を受けていた。前述したように、物を駄目にしてしまう筆者だが、この自転車はメンテ&維持すべしと念じ、そんな訳で、いい自転車屋を見つけて、早めにタイヤ(ゴムの部分)を交換したいものだと、ちゃんと考えていたのであった。しかし、6月は思いの外あわただしく、とうとう自転車屋に行けなかった。ハンズの応急手当でごまかしごまかし自転車に乗っていたが、やはりまた空気が抜けてきたのが、7月半ば。職場の近所のちょっとオシャレな自転車屋さんは、やはり「青山価格」で高く、タイヤとチューブと工賃でしめて約7,000円なんて言うもんだから、いよいよ困ってしまい、意を決して、自転車を扱ってそうな西友をめざすことにした。なぜ西友かと言うと、筆者が学生時代お世話になった下高井戸の西友では、パンクの修理が300円+消費税だけ、という破格、加えてその店のおじさんがやたら親切だったことを記憶していたからである。(顧客満足の好例と言えるだろうか。) 10年前の当時、他の自転車屋では、800円~1,000円かかっていたから、その破格ぶりは擢んでていた。10年経った上、しかもパンク修理ならぬタイヤの交換ともなると、やはり値が張るとは思ったが、その西友下高井戸店の対応があった故、ともかく西友をめざそうと決めた次第である。
職場をほぼ定時に出て、事前に調べておいた西友(中野、高円寺...)をめざすことにした。さすがに下高井戸となると、新宿から30分はかかってしまうし、ここではずすと他に心当たりがないので、店舗が複数ある中央線沿線に決めた訳である。どこまで空気が持つかの根競べの中で、ともかく代々木を抜け、山手通り沿いに、初台~中野坂上~東中野と北上する。が、自転車が万全でないので、どうも時間がかかる。職場を出て、約40分。東中野駅をまたぐ陸橋からは中野駅が見え、「よし、もう少し」のはずだった。しかし、素直に早稲田通りに出ればいいものをなかなか行き着かず、上高田界隈に迷い込んでしまい、さらに、何とか中野通りと早稲田通りの交差点までたどりついたと思ったら、西友があったと思しき場所は、何と最近躍進中の大御所100円ショップ(3階建て)に変わってしまっていたからビックリやらガックリやら。辺りも何となく暗くなり始め、心細くなってきたが、気を取り直して、「よし次は高円寺だ。」
警察大学を超え、環七通りを横断し、駅南側の商店街に入る。商店街をちょっと外れたところに、西友を発見。しかし、2階から上は住居アパート(店舗はB1Fと1Fのみ)という小規模店である。自転車を数台売ってはいても、修理を受け付ける空間はない。「さあ大変だ!」 いよいよ焦ってきて、最後の望みをかけて阿佐ヶ谷をめざす。途中、随所でシックな(昭和40~50年代を彷彿とさせる)民家を見かけ、ほのぼのとするのだが、心理的に余裕がない状況だから、何ともやりきれない。(もっと明るいうちに、ゆっくり走りたいものだとつくづく思った。) 杉並区の中央線沿線を走るなど、学生時代にもなかったことなので、どうも土地勘がつかめず、ちょっと行くとすぐ中央線から離れてしまう。だがどうにかこうにか駅が見え、駅前の西友に着くことができた。大型店なのは、昔から知っていたので、もう安心。ただ自転車売場は5階にあるので、周囲の注目を浴びながら、エレベーターに乗せ、運び込むことになる。店員さんはどこかのんびりしたとこがあって、ちょっと心配だったが、話のわかる人で実に助かった。工賃1,800円はちょっと高いかも知れないが、タイヤ1,580円、チューブ780円と足して、合計約4,400円で済み、ここまで来た甲斐があったと重々思う。後輪のスポークが一本駄目になっていて、安定感が悪いこと。スポークが一本外れると、連鎖的に外れ出して、車輪自体が駄目になってしまうから注意が必要なこと。前輪・後輪とも安定感が悪くなると、いよいよ車輪ごと交換しないといけないので、その場合は買い換えた方が安いこと。チェーンがたるんでいるので、締め直したが、逆に前よりも金属疲労を起こしやすくなるので、やはり注意が必要なこと。などなど、ご教授をいただき、すっかり感服してしまった。6年乗った、とは言っても、もっときちんとメンテナンスしていれば、これほど手を煩わすこともなかっただろう。店員さんは一見穏やかだが、心中を察すると何も言えない。ともかく自転車を知る人ならではの極意と意気に触れる思いであった。
この日の西友は21時までだったので、二重に助かった。が、実は阿佐ヶ谷まで来ると、距離的には下高井戸と大差ないことに後で気づく。とんだ小旅行になったが、帰りの足は至って軽い。チェーンが軋む音もなくなり、快調快調。丸の内線沿いに青梅街道をひと走り、阿佐ヶ谷を20時45分に出て、新宿には21時10分頃、着いた。往路の難儀が嘘のようである。
という訳で、自転車は立ち直り、再び快適な通勤をしていたのだが、最近になって、通勤途中で愛用していた、超簡単操作のヘッドホンステレオがイカレテしまった。現在、これまた調子が良くなく、何年かほったらかしだった超複雑操作のヘッドホンステレオを代用しているが、筆者のモノを駄目にする習癖(いや、不運)はまだまだ続きそうである。でも日頃からの手入れとしてのメンテナンス、完全に駄目になる前の修復としてのメンテナンスは、ともに心がけたいものである。
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