第57話 散乱ごみ・・・入口と出口からの解決案(2000. 1.15)

 クリーンアップ等、美化清掃活動を繰り返しても、なかなか減らない散乱ごみや不法投棄ごみ。そうしたごみを元から絶つために、拾ったごみのデータを集め、業界団体等に対策を求める一方、捨てさせないために、きれいな状態を維持するなり、マナー向上を呼びかける等の努力を続けるものの、なかなか根本解決には到らないのが現実かと思います。

 クリーンアップという手段の他に、散乱や不法投棄をなくし、環境保全、生態系保全につながるごみ対策はないものか。ここで、いくつか考えられる策を記させていただきます。

1.グリーン購入の視点

 ごみはモノの最終形です。散乱ごみについても、拾って、分けて、再資源化できるなら、立派な資源なのですが、風雨にさらされ、資源化できなくなってしまった「ごみ」が多いのは自明です。何とか分別して、使えるものは再資源化して、微量でも循環系を創り出せればいいのですが、そうしたルートや仕組みを散乱ごみで作るのは至難です。

 メーカー側には、資源リサイクル法(再生資源の利用の促進に関する法律)や容器包装リサイクル法の縛りで、放棄されてしまったごみを放置しておけなくなる状況に直面することも想定されますが、通常のルートに乗らないごみについては明確な規定はなく、当然、回収義務や罰則が伴わないので、結局、消費者のモラルに依存せざるを得ないのが実状と思われます。

 相対的に環境負荷の少ない製品やサービスを選んで購入することを広く「グリーン購入」と言います。消費者同様、企業にもそうした環境負荷低減型製品・サービスを利用する、ユーザーとしての立場がある一方、特にメーカーは、実際にそうした製品・サービスを作り、提供するサプライヤーとしての立場もあり、二面性があります。サプライヤーとしてのグリーン購入は、グリーン仕入れやグリーン調達という言い方もしますが、①環境負荷を抑えた流通経路で部品・原材料を集め、環境負荷の少ない製造工程で作る、②再生素材を多く取り入れたり、リサイクルしやすい設計や構造にしたり、長期使用に耐えるものを作る、③有害物質を排斥したものや省エネ・省資源型の部品・原材料を採用する、といったことを総じて、グリーン購入と考えるメーカーが増えています。

 クリーンアップで回収したごみを徹底的に分別し、再生できる状態に持っていけば、このサプライヤーとしてのグリーン購入につながるルートが開拓できる可能性があります。ペットボトルを再利用した衣料品や雑古紙を使った印刷用紙や梱包材はよく引き合いに出されますが、この他にも、貝殻の粉末を配合した消しゴム、CDケースの透明な部分や車のバッテリーケースを再生して作ったボールペン(軸)、ウィスキーの樽を使った家具や鉛筆、ポリエチレン(PE)の廃ガス管を使ったイス、などがすでに世に出回り始めていますので、散乱ごみを供給源とする再生素材・材料が現れる日もそう遠くないことかも知れません。

 しかし、ごみを拾って、リサイクルしたり、再使用に回すのは、どちらかと言うと、出口の議論です。出口を何とかする一方で、やはり入口から、ごみの発生を含めた環境への負荷を抑えようとするのが、グリーン購入の考え方の原点です。出口と入口の両輪から解決策を進めていけば、きっと「ごみ」になる部分の総量を減らしていけるものと考えます。

 マナー向上をよびかけるのであれば、よく言われる「3つのR」そして「1つのL」に沿って、発生源を抑える(環境負荷を減らす)ことも欠かせないと思われます。つまり、

①そもそも買う必要があるのかどうかを考える、そしてどうせ買うなら、ごみの出ないものや軽量かつコンパクトなものを買う(Reduce=減らす)

②どうせ買うなら、再生素材を多く含むもの、次にまた再生できる素材でできたものを買う(Recycle=再利用(使用前のリサイクル))

③一度買ったものは、修理・修繕等を通して長く使う(Long-life)

④使い終わった後に、他者が再使用できないか、別の用途に使えないかを考える(Reuse=再使用)

⑤いよいよ捨てる時には、徹底的にリサイクルできる状態にする、又は適切な処分をする(業者選定を含む)(Recycle=再利用(使用後のリサイクル))...

 これは、一般消費者のみならず、企業や自治体など職場でも励行すべき行為と考えますが、いわゆるグリーンコンシューマリズムと関連するもの、つまり日常生活や居所を中心として考えることですから、散乱ごみとは直結しない面もあります。そこで考えられるのが、次のような観点です。

2.上位の散乱ごみの中で自然分解素材で作れるものは、その比率を高める

 ごみが散乱するのは、その場で飲食したり、喫煙したり、という付加的な(緊急を要さない)行為をする人が多いことが原因でしょう。特に、海岸や河川敷、森林、山道、自然公園など、自然とふれあうのを主目的に出かける場合、娯楽や飲食は必ずしも要らないはずが、自然はおつまみ、そんな感覚でそこにやって来る人が多いことに由来するように思います。自然を心から楽しめないから、そうした行為に及んでしまうとすれば、これは大量消費・大量廃棄がもたらしたゆがみそのものです。これをヒトの性癖としてあきらめるのは悲観に過ぎるので、ある程度の発生はやむを得ないと考え、ごみをごみ化させない工夫、つまりそのものを自然に溶け込ませてしまう工夫があってもいいと思うのです。

 もちろん、分解するから捨ててもいい、などということになってしまっては、これまでのマナー向上にかけた苦労が水の泡になってしまうので、公然にすべきものではありません。が、何年も放置されたままで、生態系毀損や環境汚染になるよりはましでしょう。まずはメーカー側の努力を促し、それを評価することから、だと思います。

 分解する途中で、鳥や魚が飲み込んで、害が及ぶようでは無意味なので、飲み込んでも害にならない成分や素材を使うことが求められるでしょう。タバコの吸い殻(特にフィルター部分)、スーパーやコンビニの袋、弁当の容器、食品トレーはそうした材質への代替が可能でしょうし、梱包用の発泡スチロールはトウモロコシカスなどで作った緩衝材に、缶やビンの飲料は紙製(分解性のいいもの)容器に、などなどが考えられます。すでに進行中のものもありますが、これらの代替や物質の量そのものの削減を強力に推し進めるために、優先的にこうした商品・製品を選んでゆくことが求められるでしょう(もちろん、購入する場合は、あくまで必要に迫られ、かつ適正に処分することが大前提ですが)。ごみを散乱させてしまう人たちが買うものを先回りして代替素材に替えていくことで、負荷を予め減らしていくことは十分に可能です。

 通常の処理ルートに乗る廃棄物全体からすれば、散乱ごみはわずかな量かも知れません。しかし、ごみの発生そのものを抑える上では、上述の点について常に考え続けたいものです。出口に加え、入口についても並行して取り組んでいきたいものだと思います。

※本稿は、日本環境行動ネットワーク(JEAN)クリーンアップ全国事務局の「JEAN通信」80号(2月17日発行)に掲載される予定です。

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