第69話 TOKYO FM開局30周年記念コンサート(2000. 7.15)

 山下達郎のFM番組を聴いていたら、TOKYO FMが開局30周年を記念してスペシャルイベント(コンサート)をやるとの告知が流れ、何とご夫人、竹内まりやが出演し、バックの演奏の指揮(いわゆるバンマス)を達郎氏が行うと言う。しかし、よくよく聴くと竹内単独ではなく、cannaとSING LIKE TALKINGとのジョイントだと言うので、さほど盛り上がらず、チケットも買わず、実は最初は放っておいた筆者であった。その後の番組の告知で、チケット完売?ととれる話が出たので、「ま、今回はいっか」と見送っていたのだが... 時おいて、新宿のとあるチケットショップを覗いてみたら、1枚7,500円のところ、7,000円で売り出されているのを発見。これも何かのご縁、とすっかり色めきだったのだが、7月11日というのが仕事の佳境にぶつかりそうなので、様子を見ることにして、ひとまずお流れ。しばらくしてまた覗いてみたら、今度は一気に6,000円に値下がり(つまり2割引)していたので、仕事はさておき「よし買いだ!」と思ったら、所持金が...。(^^; 日曜日、ちゃんと現金を準備して駆けつけたら、今度は閉店時間を勘違いしていてまたしてもお流れ。という訳で、流れ流れて7月11日(火)当日、午前中は仕事で成増方面に行くことにしたので、その足で新宿に寄り、やっとの思いでGETした、という一波二波のチケット入手劇と相成った。当日まで売れ残っているとなれば6,000円からさらに下がって5,000円か、と仄かな期待もあったが、そこまでは甘くなかった。それでも売れっ子某のプラチナチケット○○万円なんてとんでもないに比べれば何とありがたいことか。

000711.jpg 武道館にはこれまで「EARTH VOICE」という1回限りのジョイントライブ(詳しく書くと長くなるので省略するが、タイトル通り、環境保護をテーマにした半ばチャリティコンサートみたいなものである)と坂本龍一のコンサートで足を運んだくらいで、今回でやっと3回目。何とか仕事の区切りがついていたので、開演時間18時30分の10分前の到着で間に合った。チケットが入手できたのは、天の思し召しといったところだろうか。

 この手のジョイント形式だと、途中で一緒にセッションしてみたり、最後に全員総出で有名曲の合唱、というのがお決まりなのだが、この日のライブはそれぞれが分離(つまり3本立て)していたので、ある意味、良かった。cannaは達郎番組で時々かかっていたので、全く未知ではなかったが、2人組でアコースティック調なので、いま流行の「ゆず」「19」みたいなもの。あまり面白味はなかったが、7曲やって40分。前座にしては長丁場だったので、それなりに力はあるんだと思った。

 お次のSING LIKE TALKINGはボーカルの佐藤竹善がかつての達郎コンサートでバックコーラスをやっている時に見ていた他、SING LIKE TALKING自身、一度ライブに行ってもいいかな、と思っていたくらいなので、期待に違わず楽しめた。ドラムを叩いているのが熟年風のオジサンだったので、「まさか」と思っていたら案の定、村上"ポンタ"秀一氏。心憎い限りである。cannaと比較するのは酷だが、やはりスケール(ボーカルと全員コーラスで聴かせる技量は圧倒的だった)や音の色艶では明らかに差があった。こちらは6曲、50分。

 18時40分過ぎに始まって、3本のうちの2本が終わって20時20分。約20分の休憩中、ひたすらステージ替えが続き、いよいよメインの第Ⅲ部を迎えた。場内の盛り上がりはこれまでとは俄然違っていて、何となく達郎コンサート風のノリ(皆、着席しているが、随所で異様な歓声が上がるというお決まり)になってきたのには正直驚いた。

 さて、一曲一曲文章で書き綴っていくとややこしいので、例の如くまずはリストアップする。(時間はおおよそである。)

20:39
  |  アンフィシアターの夜(V)
20:42
  |  家に帰ろう(Q)
20:47
  |  Forever Friends(Q)
20:53
  |  マンハッタン・キス(Q)
20:57
 (MC)
21:01
  |  五線紙
21:05
 (MC)
21:09
  |  元気を出して(R)
21:14
  |  カムフラージュ
21:19
 (バンドメンバー紹介)
21:26
  |  プラスティック・ラブ(V)
21:32
 (MC)
21:35
  |  駅(R)
21:41
 (Encore)
21:44
  |  リンダ(アカペラ)
21:47
  |  不思議なピーチパイ
(21:49)メドレー
  |  セプテンバー
21:52
  |  J-BOY
21:57
21:58
  |  Let It Be Me(デュエット)
22:00

※V:「VARIETY」(84年)、R:「REQUEST」(87年)、Q:「Quiet Life」(92年)からの選曲。

 1曲目「今夜もお客は満杯~♪」とまさにライブ向けの曲。1984年の「VARIETY」に入っている曲、とまではわかったが、しばらく聴いていなかったので、曲のタイトルがわからず、それを思い起こすのに頭を使っていたら、あっと言う間に2曲目になってしまった。時間を見てわかる通り、1曲あたりの時間が短い(というよりアルバムに入っているのと同じサイズ)なのがわかると思う。これは曲数を優先し、1曲でも多くお聴かせしたい、という本人の意思の表れだったのだろう。堂々の80分、実に14曲である。何しろ、ゲスト出演を除いて、本人のネームでステージに立つのは18年7カ月ぶり、ということだから、相当なブランクである。そんな隔たりを全く感じさせないところが流石。十二分な出来だったことは間違いない。18年の間に出た「VARIETY」「REQUEST」「Quiet Life」の3枚、33曲はこれまでステージでは演奏されたことがない訳だから、どれを演っても初めて。そして旦那の山下がバックを務めるのも初めて。当然夫婦でステージに並んだり、一緒に歌ったりというのも初めて。初モノ尽し、という訳である。よく考えると実に貴重なライブだったと今更ながら感慨頻りである。

 さすがに出だしの何曲かは、歌い出しをトチリかける場面があって、こっちもヒヤヒヤ。最初のMCも堅さが目立って、会場全体がカチコチになってしまった感じだった。某誌でカリスマ主婦として紹介されて苦笑した話、エリック・クラプトンが来日した際、神戸牛をご馳走になった話などしつつ、「口調が達郎調になってしまった」なんていうくだりで会場が沸くとようやく解凍したようで、「五線紙」ではリラックスムード(ゴンチチみたいな感じで実に良かった)、「カムフラージュ」に至っては、すっかり声量が増して、聴き応えがあった。「プラスティック・ラブ」は山下自身がコンサートでカバーしているので、どんな演奏になるかと思ったら、竹内の原曲に忠実な感じになっていたので、達郎本人が演る場合と人のバックで演奏する場合では違うものなんだなぁ、と妙に感心。もちろんギターのカッティングや終わりの方のコーラスのかけあいなどは、達郎バージョンだったが、この曲の後で一休みが入って「駅」になるあたり、抑えが利いた「プラスティック・ラブ」だったことがわかる。(あのまま山下のおなじみ絶叫コーラスでの盛り上がりを活かすなら、ダンサブルな曲(「夢の続き」「COOL DOWN」「今夜はHearty Party」など)を続けて、ノリノリでアンコール、というのも良かったと思う。)

 余談だが、「プラスティック・ラブ」はかつて12inchシングル用?のレコーディングがされて、10分ものロングバージョン(→参考*1985年参照)があるので、ライブではてっきりそういう展開もありかな、と思ったが、結局6分だったのがちょっと残念だった。曲が次々に変わるあたり、歌謡ショー(「竹内まりや オンステージ」)のような印象もあったが、山下のことだから、ともすると1曲あたりを長々とアレンジしたいところをあくまで「バンマス」としてグッとこらえて、18年ぶりにステージに立つ妻への配慮、そして顧客(ファン)へのサービスを優先した結果と考えれば、これは全く以って文句はないのである。

 「不思議なピーチパイ」「セプテンバー」ともにアイドル歌手?!時代のヒット曲だが、達郎アレンジで聴くのは本邦初。昔を知るファンにとってはこれほどのサービスはないだろう。1階アリーナ席は総立ちに近い状態。「J-BOY」はかつてのコンサートでも定番だった曲だから、その盛り上がりようは言うに及ばず。ラストの「Let It Be Me」はEverly Brothersの1960年の曲で、山下・矢野顕子のライブバージョンでは知る人ぞ知るだが、夫婦デュエットはこれまた本邦初。最後の最後にイイのを持ってきたもんだと思い、聴き惚れてしまった。しかし、夫婦並んでみると、ちょっとヒールが高めとは言え、竹内の方がちょっと背高だったので驚いた、山下は172cmの筈だから、竹内も170cmはありそうだ。ともあれ本人を直に見るのは初めてだったが、ジャケットで見るのと同様、モデル体型で見目麗しかったのでかつての「ミス慶應」といのを納得した次第。ただ地声が低音で話し方がちょっと不良っぽいもんだから、女帝よろしく迫力があって、そのギャップがまた面白くもあり...

 全て終わってふと見回すと、女性客の中に涙目の人をちらほら見かけて、このコンサートの重みを改めて実感した筆者であった。「TOKYO FM 開局30周年」に祝意を表しつつ、このコンサート企画に感謝申し上げます。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 第69話 TOKYO FM開局30周年記念コンサート(2000. 7.15)

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://mt.chochoira.jp/mt-tb.cgi/73

コメントする

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.24-ja

2009年3月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

カテゴリ

このアーカイブについて

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。