第76話 ニューミュージシャンのTV出演(2000.11. 1)

 ここんとこ硬めの話で長文続きだったので、ちょっと話題を変えてお手軽・手短に音楽ネタで一本。

 筆者が小学校中学年の頃(70年代後半)と言えば、いわゆるアイドル全盛の時代で、テレビの歌番組も目白押しだった。小さい頃から国内外問わず、都市の人口・河川の長さ・湖沼の大きさ等々の統計やその順位を眺めるのが大好きだった筆者は、いつの頃からか歌謡曲の売れ具合のランキングに着目するようになり、当時数ある歌番組の中でも、TBSの「ザ・ベストテン」を毎週欠かさず視聴するようになっていた。特にどの歌手が贔屓、ということはなかったが、誰それの何て曲が何位だった、というのを覚えているのがとにかく好きで、そのおかげで教室でも常に歌謡曲の話題にはまず遅れをとることはなく、むしろリード(?!)していたような気さえする。アイドル歌手はテレビに出てこないと商売にならないから、ランク入りしている限りは間違いなく登場して、出てくればほぼフルコーラス歌って帰るから、当時のアイドル歌謡曲は大体覚えることができた。そうした曲は、単に諳んじているだけの他愛ないものばかりでなく、いわゆる「アイドル歌謡曲」でもイイ曲は良かった訳で、小さいながらに鑑識眼ならぬ鑑識耳を養っていたような気がする。印象的だったものをいくつか挙げると、

 「夏に抱かれて」:岩崎宏美、「林檎殺人事件」:郷ひろみ&樹木希林、「ブルースカイブルー」:西城秀樹、「サンタモニカの風」:桜田淳子、「LOVE(抱きしめたい)」:沢田研二、「女になって出直せよ」:野口五郎、「波乗りパイレーツ」:ピンクレディー...

 曲の中味などちっともわかってなくて、単に曲調が良かったから覚えているようなところがあるような。曲名だけ見ると確かに歌謡曲ならではの艶めかしいのもあって、歌詞に到っては尚のこと。小学生が聴く曲か、と今更ながら慨嘆してしまうのであった。

 さて、歌謡曲全盛にあって、当時もう一つ全盛にあった(ランキングに派手さこそなかったが)のが、いわゆるニューミュージックの数々である。それらはCMでは聴くけれど、とうとう「ザ・ベストテン」では聴けなかった、というパターンが多く、聴けないものだから出し惜しみ効果というか、余計駆り立てられるものがあったのをよく覚えている。歌謡曲は歌謡曲でよかったが、そんなテレビで聴けないニューミュージックには神秘性があり、違う良さを覚えた。ラジオとかでフルコーラスかかると、結構感激したものである。

 80年代初頭も入るが、一例を挙げると、

 「ひとり上手」「悪女」:中島みゆき、「順子」:長渕剛、「風を感じて」:浜田省吾、「守ってあげたい」:松任谷由実、「季節の中で」:松山千春、「初恋」:村下孝蔵、「時間よ止まれ」:矢沢永吉、「RIDE ON TIME」:山下達郎...

 などである(どの曲もベストテン入りしたものばかり)。ちなみに「時間よ止まれ」「季節の中で」はEPレコードを買ってもらって、自宅でちょくちょく聴いていたので、テレビでは聴けずとも、曲をマスターすることができた。最初に針を落とした時の感動は何とも名状し難いものがある。

 こうしたニューミュージシャン(=シンガーソングライター)は、歌謡曲とは一線を画されるべきもの、という自負があったり、テレビで流れることによって自身の音楽が商業的に消耗品化するのを嫌悪したり、といった理由で出なかったと記憶している。「季節の中で」が1位になった時、訛りながら「これが最初で最後だ」と言っていた松山千春がその通り1回限り(レコードと全然違う歌い方・声でビックリしたのでよく覚えている)、長渕剛、村下孝蔵も弾き語りで1回、松任谷由実も「守ってあげたい」と別のもう1曲で確か2回出演したくらいで、中島、浜田、矢沢、山下はとうとう「ザ・ベストテン」には出演しなかった。結構延々とチャートインしているのにちっとも出演が叶わない訳だから、番組としても手を焼いただろう。ニューミュージシャンが出演しない時は決まって、顔写真か何かを手に、久米宏氏が頭を下げていたのを思い出す。「粘り強く出演交渉中」とか言っていたが、生出演にこだわらなければ、何とかなったように今は思える。

 一方、同様にシンガーソングライターでありながら、よく出てきたのは、さだまさし、原田真二、八神順子などである。さだは別として、自称ミュージシャン、自称アーティストといった感じの人は自分で作詞作曲をしながら、自作の映像化やパフォーマンス性も視野に入れていた、ということなんだろうか。そうであれば大したものである。

 当時出演しなかったミュージシャンが90年代になってから、続々とテレビ出演し出しているのは皆さんご承知の通りである。いまだに「同世代の人たちとの距離を遠ざける訳にいかない」という揺るぎ無い理由でテレビに出てこないのは、山下くらいなものである。頑固としてテレビ出演を拒み続けていれば、当時の神秘性や曲の良さもそのまま封印できたのに、堰を切ったように出てきてしまったもんだから、何となく興ざめでもあり、当時のいい意味での反骨性も褪せてしまった感じがする。昔からのファンの人たちはそのあたりどう感じているのだろう?

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