第62話 さいたま新都心(2000. 4. 1)
2000年になってからと言うもの、週末の自由時間が減ったためか、行動半径が狭まったためか、ともかくなかなか隣県の埼玉に足を伸ばすことがなくまる3カ月。1月に法事で横浜へ行ったはいいが、3月半ばからの「グリーン購入フェア」で北九州・札幌・大阪と全国行脚するまでは、東京都・神奈川県のみで過ごしていた訳で、外出大好きの筆者にしてはこれは珍事だったのである。
4月1日に「さいたま新都心」(まさかこの駅名で確定するとは思わなかったが)駅が新たに開業する件は前から聞き知っていたので、それに照準を合わせるべく埼玉入りを避けていたのでは別にないのだが、満を持して、「2000年 初埼玉」は、この開業初日に実現することになった。ここ2週間ほど、出張が相次いでいたので、久々の土日の連休となり、羽を伸ばすのには格好のお出かけ日和である。先だっての春二番に匹敵する程の強風下ではあったが、春らしい晴天になり、さいたま新都心のデビューには打ってつけ、と言ったところ。
赤羽から高崎線の普通列車に乗り、目的地へ向う。浦和を出ると「次は大宮~」に慣れている人にとっては「さいたま新都心」の停車に面食らったようで、実際、新駅に停まると首を傾げてホームを見遣る人が何人かいた。意外と知られていなかったりするものである。駅を降りると、まず目に飛び込んでくるのが巨大な「さいたまアリーナ」。それと整然と並んだ何本ものレールである。この駅、そして新都心ができる前は、ここは大宮の貨物駅・操車場があったので、かつての線路の名残と言うか、とにかく線路が幾重にも並んでいたので驚いた。数えると複線が5本、つまり10本の線路があって、これと東北・高崎線上下2本、京浜東北線上下2本を加えるので、合計14本の線路がそろっていることになる。圧巻だ。(成田エクスプレスが通る分や、池袋・新宿からの旅客貨物線(赤羽の次は大宮)の分があるのはわかるのだが、他の線路は一体何なのだろう?) 乗って来た下り電車を見送ると、程なく上り方面の電車が入ってきた。そもそも、川口や南浦和にも停めてよさそうな普通列車を「さいたま新都心」に停めること自体が快挙なので、さすがに中距離快速列車は停められなかったのだろう。入ってきたのは快速アーバン号で、徐行気味に通過していった。まぁ納得である。
ホーム全体の感じは、新駅と言っても程々(大して立派でもない?)でさほど新味はなかった。しかし、改札階に上がると、巨大な屋根に覆われた近未来的な構造になっていて、新都心を盛り立てるのに一役買っている。特に自動精算機と自動改札は液晶画面がカラーになっていて、ビックリ。新都心に最新鋭機を導入してくるあたり、JRの面目を感じた。
開業初日だけあって、改札の周辺・東西の自由通路(デッキ)は人であふれている。皆にこやか、かついろいろ興味深げに見渡しているので、新駅の心理的効果というのはバカにできないと思う。この通路と改札口あたりの概観を見ていて、ふとリニューアルした品川駅を想起させられた。そして最近のいわゆる「新駅」は、どうもこんな具合にやたらスケールが大きいことに気が付いたのである。近郊では、八王子みなみ野、ひたち野うしく、他県では、静岡の隣駅の東静岡、北九州のスペースワールド、どれも立派な駅ばかり。埼玉の県都 浦和駅が何とも陳腐なだけに、この「さいたま新都心」のグレードが余計に際立ってしまうのは致し方ないところか。ともかく最近は新駅=周辺施設(周辺開発)と一体、がつきものなので、それなりの投資がなされるのだろう。
インフォメーション(i)では、ガイドマップと時刻表をふるまっていて、なかなか親切である。(大型スクリーンによる総合案内や、障害者向けに車イス等の介助用品の貸出を行うなどのひと工夫も新駅ならでは。) 開業時にはつきものの記念オレンジカード・イオカードの売り出しや、郵便局・NTT等の出張販売がなかったのは拍子抜けだったが、もともと国の出先機関中心の新都心なので、一般客目当てのサービスはあまり想定していないのだろう。東口には低層のイトーヨーカドーとこじんまりした飲食店街がある程度で、生活感は薄い。だが飲食店はどこも満員で、新駅の効果を否が応にも感じた。(実は西口「けやきひろば」にはレストラン街ができることになっているのだが、これがまだオープンの片鱗すら見せていないので、そのこじんまり界隈に客が集中していたようである。)
第17話でこの新都心のことを書いた。工事箇所・閉鎖箇所はまだまだ多いものの、概ね当時の計画通りにできたようで、人工地盤にけやきを植えた「空の森」構想もまぁまぁ上手くいったようだ。ただ、せっかくの新都心の概観を写真に収めようとするる、このけやきが邪魔をする。建物だけでもと思っても、構図に苦労させられるのが残念だ。今はまだ葉を付けていないので殺風景だが、いずれ青々としてくると、景観とマッチするようになるだろうか。初夏あたりに又、見に来るとしよう。
さて、「新都心」はいいけれど、やはりハコモノ中心の観は否めない。スーパーアリーナは一つの呼び物にはなっても、それに併設する「ジョン・レノン ミュージアム」については、なぜここにJ・レノンなのか趣旨がわからない。一般客で街を満たす、というには至らないのではなかろうか。流行のアウトレットモールや、「ヴィーナスフォート」のように客層を特化した商業施設があっても良いように思った。3つの合同庁舎は偉容を誇るが、何か行きにくそうだし、無機質な感じがする。アリーナと共存できるのか、そして西口をどれだけ活性化できるのか...どんな街づくりがこれから展開されるのか見ものである。
人工地盤の「けやきひろば」からは埼京線、東北・上越各新幹線が眺められる。最新型の新幹線が通ろうものなら、なかなか映えるスポットだと思う。つまり、ここさいたま新都心と埼京線の北与野駅は程よい距離になるのだが、北与野の駅前と新都心は一線が画されているようで、開発に取り残された空き地や、中途半端な道路が散在していた。北与野駅に続く一体感ある道路整備が待たれるところだが、どうだろう。
4月は、この「さいたま新都心」に始まり、7日には井の頭線 渋谷駅上に「マークシティ」ができ、20日は都営地下鉄12号線(大江戸線)が新宿から国立競技場まで延び、など新規ネタが相次ぐ。渋谷も国立競技場も通勤経路なので、初日にフラっと行きたいところだが、平日なので仕事との調整次第である。(早めに切り上げることにしよう。)
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