随筆「東京モノローグ2001」(東京百景付録)
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第103話 頭上注意(2001.12.15)

 調査したのは、12月9日(日)の15:30〜16:30の1時間。辺りが暗くなるギリギリ手前の時間帯だった。快晴だったのはよかったが、その分寒く、時折吹き付ける強風には閉口した。通勤用の自転車を予め代々木駅の無料駐輪場に引き上げておいたので、新宿に来たついでにフラッと自転車を駆り出して調査開始である。この手軽さがなければ、寒風の中わざわざ調べに出ることもなかっただろう。

 明治通りの歩道は、わりとゆったりめなので全般的に障害感は少ない。だが、そのゆったり感ゆえに、つい加速して災いを招くおそれもある。頭上や自転車横幅に危険物があふれている狭い路地を例にとると、枚挙にいとまがないため、代表的な例が散見されるこの通りを選んだ訳である(偶然、好例が集まったと言えなくもないが...)。 前置きはこのくらいにして、とにかく実例を紹介することにしよう。番号は自転車で進んだ方向・時間順である。
(おことわり...風景ではなく、バリアの実物紹介のため、撮った写真をそのままの大きさでスキャン+トリミングしてあります。)


千駄ヶ谷4
神宮前1


 01 張り出した看板

 歩道が広めでも、こんな感じで張り出ていてはちと困りもの。庇が鋭角で、地面と庇の高さがあまりない分、この位置に看板が突き出ていると結構インパクトがある。ぶつかったら痛そうだ。

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 02 店頭の樹木

 お店の性格上、こどものためを思って、こんな立派な木を置いているのだと思うのだが、木を使うからには気も遣いたいもの。枝が顔面を直撃してしまうのである。イルミネーションを施しているのは注意を促すためかも知れない。

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 03 公共施設の案内標識

 東郷神社の一角に、某セキュリティ会社の本社がある。かなりわかりにくいが、その社屋の入口通路脇に黒光りする1本の柱が目に留まると思う。この会社の案内板かと思いきや、「『渋谷区心身障害者福祉センター』はここと反対側のこっちにあります」という趣旨の公の案内標識だったのである。あまりじゃまなように見えないが、ふとしたハズミでぶつかりそうな位置にある。金属製なだけに一大事である。この障害物の問題点は、一に公共の標識であること、二にセキュリティ会社の本社前にあること、である。

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 04 グリル台?

 原宿ご当地を象徴するようなオシャレな有名レストラン(オープンカフェスタイル)である。敷地内ギリギリといった感じだが、人通りが多い時などは、自転車ばかりでなく通行人もこれでは迷惑だろう。客寄せのためだとしたらまた考え物である。

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 05 立て看板や扉など

 コンビニのキャスター付き看板も結構キビシイが、隣りの店の常時開放扉(兼ディスプレイ)には驚いた。ここを自転車ですり抜けることはおそらくないと思うが、扉が透明なだけに危ないことには違いない。ワゴンや立て看板の他、段ボール箱も置いてあったりで、歩道幅が広いことをいいことに好き放題といった感じである。

(神宮前3-23)全体マップに戻る

 06 張り出した掲示物など

 街路樹の脇は歩道の緩衝地帯(バッファ)みたいなもので、街路樹の脇を縫ってわざわざ走ることもないから、ここに置いてある自転車やバイク、そして看板類についてはバリアという観点では気にならない。この写真で要注意なのは中央に突き出ている黒い一文字(おそらくスクロール式の電光サイン)である。人の背丈でわかると思うが、自転車に乗って立ち上がるとぶつかる高さである。その後方の庇も含め、こうした障害には重々気を付けたい。

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 07 引き込み電線

 ちょっと見えにくいが、このレストランの門灯に給電するため、右消火栓標識のあたりからランプ下方に向って、細い電線が斜めに走っている。ここは坂道なので、自転車で上る場合は立ちこぎ状態になるが、何とこの線が首位置に来る。注意しないとひっかかって転倒してしまうだろう。

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 08 庇の照明

 庇に屋号を示す看板が掲げてある。が、これを照らし出すのに腕の長い電灯が取り付けてあって、自転車で起立すると頭上をかすめる位置に来る。点灯中なら気が付くかも知れないが、はてさて...。

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 09 旗幟類

 これはわりと高い位置にあるので平気だが、もっと低位置で横を留めてないようなタイプの幟だと、風ではためいた時などは結構危険である。顔にまとわりついたりでもしたらそりゃあもう。

(千駄ヶ谷3-41)全体マップに戻る

 10 掲示板の庇など

 今回調べていて再認識したが、いわゆる周辺地図の案内板は、横から見ると平面(庇なし)になっていて危なくないが、ここに写っている町内掲示板の類には庇が付いていて、危なっかしい。低い上、金属製で鋭いため、頭をぶつけたら大怪我しそうである。フラッシュがちょうど反射して怖さを引き立てているようだ。

 ちなみに他の掲示板では、その鋭利さを緩和するため、庇にクッションが巻かれていたり、縞状にビニールテープをかけて庇を目立たせているものもあった。

 さて、ここは歩道を拡幅工事しているようで、仮設物がいろいろあるが、電柱隣りの朱色の箱は工事用の配電盤だそうで、頭上に来る位置である。工事中とは言え、もうちょっと何とかならないだろうか。

(千駄ヶ谷4-7)全体マップに戻る

 11 ライトバン

 ここはかつての自転車通勤経路だったので、このライトバンもよく覚えている。この時は屋根に積んだハシゴがせり出している程度だが、後ろのハッチが開けっ放しになっていることもあって、実際にヒヤッとしたことがある。ハッチをよける余り、郵便ポストに激突、なんてことはないが、概してライトバンは要注意である。

(千駄ヶ谷4-25)全体マップに戻る

 12 庇の看板類

 明治通り沿いにもこんなタイプの商店がある。普通の商店街ではよく見る感じの吊り看板で、歩いている時は何てことないが、自転車で通る時はヒヤヒヤものだったりする。

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 自転車通勤を始めてからずっと気になっていたのだが、こうした障害は本当に多い。この他にも、電柱の釘(昇り降り用)/針金で止めてある掲示物(針金が飛び出た状態)/背丈のある植栽/道路標識(特に「横断禁止」などの四角いヤツ)などなど、都市では自転車頭上&横幅要注意である。

 そもそも、歩行時や足元の障害についてはバリアフリーが語られることが多いが、その反対、上半身(頭、腕、肩など)に対する街のバリアについてはあまり論じられることはない。車椅子の場合も同様に、何かと段差が着目されるが、実際は横幅に対しても障害となるものは多い。(だが頭上の障害はあまりないと思う。通常の道路では歩行者の平均身長以内でタテ向きに障害となるものは少ないからである。) では自転車の場合はどうか。もちろん段差や横幅の障害も大きいが、何といっても上半身以上、そして頭上のバリアが結構大きい。ペダルに立った状態で乗っていると、地面からは、[ペダルの高さ]+[身長]になり、時に2メートルくらいになる。すると、ちょっとでも脇見しているとヒヤッとするような頭上障害物に出くわすことがある。立ち乗りするのがいけないのかも知れないが、坂を上る時や遠くを見通したい時などは仕方なかろう。自転車の市民権というか、走路が確保されていないためにこうした障害が見逃されている、と言えなくはない。

 自転車の場合、スピードも災いする。仮に歩速なら回避できると想定したような障害
(もともと障害となるのを知って処置しないのも問題だが)だとしたら、ぶつかる方がどうかしている、となるが、自転車の速度を想定していない障害であれば、「危ない」と気付いてから避けるまでの反応動作時間が足りないから、当然衝突してしまうことになる。

 クルマが通るとギリギリといった狭い路地では、自転車は道路脇を走ることになるからリスクが高くなる。ましてそこが低い庇であふれた商店街なら尚更である。バレーボールの選手など高身長の人も同じ憂き目に遭うと思うが、スピードがない分、よほど不注意でない限りは回避できるだろう。

 自転車が快適に走れるまちづくりのためには、専用道路の整備や段差を減らすことに加え、頭上のバリアフリーも考慮してほしいものである。


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