第133話 宿泊先ひと工夫(2003.3.15)
第129話に続き、旅のお話。と言っても、これまで国内あちこちで泊まってきたホテルや旅館での体験から、「こうしたちょっとした工夫があれば、より快適に過ごせそうだ」というのをご紹介しようと思ったまで。旅先ひと工夫というよりは、宿泊先ひと工夫、である。少しでもお役立ていただきたく。
1.まずは下調べ
今はインターネットで宿泊先の情報は概ね入手できる。インターネットで予約する場合は、そのサイトにある情報を吟味しておかないと予約できないから、当然じっくり調べることになる。価格、食事、設備は基本仕様だが、快適さ、アクセスの良さ、そして何よりも室内の備品がどこまでそろっているか、を重視したいところである。何がそろっているかによって、こっちで何を持っていくか、持って行かなくていいか、が決まる。これは結構大事である。
石けん、歯ブラシ、シャンプー、リンス、シェーバー、シャワーキャップ等のアメニティグッズは普通は大体そろっているので、あまり心配する必要はないが、よく考えると、これらは持って行けば済みそうなものばかり。持って行けば済むものをわざわざ提供されて、価格アップにつながるよりは、最初から余計なものが置いていなくて、こっちが頼めば追加料金で対応してくれる。その方がリーズナブルだし、環境負荷も減るだろう。宿泊先がどれだけ環境負荷を考慮したサービスを心がけているか、も考えたいところである。(そうした観点から宿泊先を選ぶなら、GPNが3月に開設した「エコチャレンジ ホテル旅館データベース」を活用するといいだろう。) 筆者の場合、こうした類は常に持って行くようにしているので、使わないでそのまま置いて行くか、自宅用で使いたいものがある場合に持って帰るようにしている。(ずっとこんな感じなので、さすがに自宅でもたまってきている。そのうちフリーマーケットなどで放出しようと計画中である。)
逆に、通常持って行くのは難しいが、客室に備え付いていると便利なものもある。ゆっくり滞在したい時、時間を持て余しそうな時は、撮りだめしておいたビデオテープを観る、という手があるが、これは宿泊先にビデオデッキがあれば、の話。(最近は貸し出してくれるところも増えているなので、しっかりチェックしたいところ。) かつて伊豆の赤沢温泉のリゾート型ホテルに行ったら、最初からビデオデッキが置いてあって、「やられた!」という経験がある。予め客室備品情報はしっかり入手しておきたいものだ。
情報公開をきちんとしているか、実際に宿泊した人の声を忠実に載せているか、でその宿泊先の品質は見て取れる。情報をきちんと出しているところはひとまず安心だろう。
ちなみに、備品情報の粗い・細かいに関わらず、(アメニティ系以外で)筆者が常備的に宿泊先に持って行くものは、以下のような感じである。
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携帯用うがい薬:ふだん習慣的に使っているからでもあるが、室内の空調がイマイチで、ノドを痛める可能性はどこも高いので。
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携帯用スリッパ:ホテルに泊まる時は大抵用意してあるので、あまり必要ないのだが、列車やバスの乗車時間が長い旅では必需品なので、ついでに持って行く感じ。
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FMラジオ:ホテルでは、枕元の照明スイッチやデジタル時計の並びに、BGMのスイッチが付いていることが多い。そのBGMでOKの場合もあるが、その土地でどんな放送が流れているかを聴く楽しみは捨てがたい。FMが聴けるように設定されている列車を使うことがわかっている時も欠かせない一品。
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空の500mlペットボトル:ふだんペットボトル飲料は飲まないが、自宅にはストックがあって、これを持って行くと、実に便利。備え付けのお茶の類を冷まして入れて、翌日の移動時に備えれば、いちいち買わなくて済むし、経済的である。(散策途中で「名水○○」とかの湧水に出くわした時にも使える。)
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マイ箸:改めて書くまでもないが、これは筆者の常備品。食事がウリの宿なら余計に、割り箸よりも塗り箸でいただきたいものだ。
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2.到着したら...
ラックなどに並んでいる各種情報をチェックしたい。観光施設のクーポン券は当たり前だが、地元名店の割引券やサービス券が置いてあることもある。「夕食別」の宿には、飲食店情報もあるから、気になる食事処や居酒屋を見つけたら、フロントの人に尋ねてみたい。すると、フロントからその店に予約の電話を入れてもらえることもあるので訊かない手はない。お店に着いて「さっき予約した○○です」と伝えれば、ちょっとした特典があることも。
駅や商店街に近い宿なら、ぜひ地元のスーパーを見つけて足を運びたい。名産品が特価で買るし、(大手流通に乗らない)珍しい地場商品に出会える楽しさがある。夕食後にまだ小腹が空いていたら、地元流通のパンなり惣菜なり飲料を意識的に買いたいものだ。それがその土地に泊まる客としての礼儀と言うものだろう。(地産地消のお手伝いにもなるだろうし。)
3.大浴場がある場合
温泉浴場なら、まずは効能書きを見ておきたい。単なる効能書きにとどまらず、周辺情報が充実していることもある。第129話で紹介した六日町温泉は、温泉浴のイロハ(入り方〜出た後のケア)が記されていて、ためになった。温泉のお湯は出る前に洗い流さないこと、温泉に浸かること自体、体力を消耗すること、など改めて認識することができた。
大浴場を独占したい時は、他の客が来なさそうな時間を狙うのがベストだが、そうそう上手くいかないもの。スリッパは自分で履いてきたものを使いたいが、他の客が来ると履き違えられてしまうことが多く、時には不快。そのリスクを避けるため、混みそうな時間を外すのに加えて、筆者はわざと裏返しにして、下足場の隅っこに置くことにしている。(それでも履いて行かれてしまったことが1度だけあった。)(^^?
4.就寝時
室内の空調がイマイチ(またはコントロール不能)で、ノドを痛めることを避けるため、室内風呂がある場合は、お湯を張ったまま、部屋の湿度を保つようにしている。風呂がない場合は、洗面台にお湯を張っておくなりしているが、効果薄。夜中の空調は、もっと何とかならないものかとよく思う。
空調が不調で、夜中に目を覚ましてしまったら、窓を開けて夜空を仰いでみよう。ローカルな宿で、天気が良ければ、きっとふだん見られない星空が広がっていることだろう。空調がダメでも、気持ちを切り替えることで幸せな気持ちになれるものだ。
5.朝食がバイキングスタイルの場合
温泉宿なのに朝食がバイキング、というところがある。若い人はそうでもないが、ご年配客だと浴衣で朝食にいらっしゃることが多いのは、皆さんもご存じの通り。そんな「浴衣+バイキング」では時に悲劇が起きる。宿の方もわかっていると思うのだが、事前に注意や工夫ができないものかと思う。浴衣を着て、手を伸ばすとソデが下に開く。バイキングでは、菜箸やトングが出てくるが、リーチが不十分だと、スクランブルエッグや煮豆や豆腐用の刻みネギなどに垂れたソデが触れる事態になり、実によろしくない。他の客にしてみれば食欲をなくすかも知れないし、浴衣客自身もあまり気持ちのいいものではないだろう。(極端な例だが、シロップ漬けの杏仁豆腐が手前、その奥にバターロールが置いてある場合、パンをとろうとした浴衣客のソデはどうなるだろう。シロップを吸い込んで、ペタペタな甘いソデの出来上がりである。これはたまらない。)
浴衣での参上は遠慮してもらうか、ソデが付かないような位置に皿を配列するか、注意が必要だろう。
という訳で筆者は、「浴衣 DE
バイキング」が想定される宿の場合は、ひたすら早く行くか、わざと時間をずらして、現場を見なかったことにして臨むことにしている。ちなみに浴衣の有無に限らず、バイキング形式の朝食では、混雑や行列ができる時には行かず、できるだけ合間を縫って、一皿ずつ調達するようにしている。せっかちに列を作って、我も我もという感じで争奪するのは、せっかくの旅先でどうかと思う。
文末レポートの通り、この週末には下北半島ツアーを敢行。JR大湊線終点の大湊駅に隣接する「フォルクローロ大湊」に泊まったが、ここはB&Bスタイルと言って、ベッドとブレックファストを基本とする宿泊サービスに徹している。(宿泊と朝食の提供のみのシンプルなもの。このB&Bという用語は今回初めて知った。) 朝食に力点が置かれている分、バイキングにおける上記のようなデメリットを緩和する工夫がされていて好感が持てた。ロングリーチなトング、大きな取り皿は供さない(大きい皿だとついあれこれ取ってしまうし、その分時間もかかる)、客に任せておくと時間がかかりそうな配膳はスタッフが付く(汁物やご飯はセルフでなく、給仕してくれる)、といった点である。
6.チェックアウト
グループ客に遭遇すると、チェックアウトに行列ができることがある。こうした場合、筆者は時間をずらして、ゆっくり臨むことにしている。アンケートを書くもよし。その土地の新聞(地方紙&地方版)を読むのもよし。朝食同様、スローでいいと思う。まぁ、客がせっかちになるのは、チェックアウト時刻に余裕がないせいかも知れないので、宿側にも再考の余地がありそうだが。
それにしても、レイトチェックアウト(11時とか12時までOK)の宿なのに、早くチェックアウトした他の客室の手入れをすでに始めてしまうのには閉口させられる。せっかくゆったり過ごして気分よく帰ろうとする客に対して、あんまりである。(当てこすりのようにすら感じてしまう。) 最終チェックアウト時刻の後に一斉に、ではいけないのだろうか。
JR東日本が、自社株を市場に完全放出してから10周年とやらで、「お客さま感謝月間」と銘打って、格安のチケットを売り出した。
この手のチケットに目がない筆者は、3月15・16日の土日の2日間を狙ってチケットを手配。指定席解禁になる1カ月前の2月15・16日、2日にわたって、みどりの窓口に足を運んで、何とか往復の「はやて」を含む座席をキープ。15日は油断してしまい、往路「はやて」で押さえた席は、大宮10:30発というスロースタートだったが、その後の大湊線の接続を考えるとと辻褄の合う指定になっていた。パスの予想外の人気(3月12日までに36万枚売れたそうな)で、JR側も増発列車を奮発投入して凌ごうとしたものの、3月15日はいよいよ大変な事態で、10:30大宮発の「はやて273号」は10分遅れで到着する有様。先行の10:22発の「はやて9号」が10:30前後に入ってきたものだから、間違えて乗車してしまいそうなノリ(?)だった。八戸には13:21に着くところ、3分遅れで到着。到着後の八戸駅はちょっとしたラッシュ状態でなかなか改札にたどり着けない。大人1名、2日間で12000円となると、ここまで人を呼んでしまうものなのか。他人のことは言えないが、驚愕の思いでこの混雑を見送りつつ、ゆっくり歩を進めた。これだけ八戸に来ているのだから、その先を目指す旅客も多いだろう。大湊まで直通で走る「快速しもきた」は八戸始発。ローカル線ゆえ乗降口の位置が不明ながら、とにかく2両編成の列車の扉が来そうな場所で早めに並んで待つことにした。何とか2人分の席を確保。宿ではスローでもいいが、こうした状況下での列車利用時は早め早めが奏功するようだ。
さて、生まれて初めての大湊線はなかなかイイ感じで、快速列車ながら特急並みのスピードで疾駆するドライブ感も手伝って、快適だった。左手に陸奥湾。右手に雪解けの水脈を擁する雪原と天然林。有戸と吹越の駅間は約13km。この距離の間に一つも駅がないのは、こうした絶景を保つためなのかも知れない。終着の大湊は斜陽化した風情もあったが、決して寂れてはいなかった。下北ブームが本物なら、(ローカル私鉄)下北交通が2001年3月末で廃止されてしまったのが惜しまれる限りだ。
復路は、「きらきらみちのく津軽号」に乗って、浅虫温泉へ。(浅虫温泉の盛り上がりは、東奥日報のこの記事の通り) 浅虫温泉からは、函館と八戸を結ぶ新しい特急「スーパー白鳥」で八戸に戻り、17:23発「はやて224号」で帰途に着く。全車指定席の「はやて」だが、さすがに捌ききれなかったか、連結部分の通路には立客があふれる混雑ぶり。「はやて」の人気の程は、デーリー東北のこの記事(下の方)をご覧いただくとわかると思うが、このJR東日本パスでさらに拍車がかかったことだろう。 |