第90話 ファミリーレストランでの「べからず集」(2001.6.1→10)
第60話、第75話では鉄道でのマナー違反例について言及した。今回は「べからず集」第3弾としてファミリーレストラン編である。筆者独断でランク付けして紹介する。法に触れる行為や、いわゆる迷惑行為は書くまでもないので除外する。
まずは10位から。*首都圏のいわゆるフランチャイズ系ファミリーレストランでの場合を想定。
10.支払いでのタイムロス
ファミリーレストラン(以下、ファミレス)でも混雑時は会計待ちの列ができることがある。第75話同様、駅の券売機、スーパーやコンビニ、ファーストフード店、各種施設のチケット売場等々、列を作って勘定する場面に共通して言えることだが、自分の順番が来る前に予め財布やら、小銭などを用意しておかない人が案外多いことに気が付く。ましてファミレスではPOS伝票が当たり前な訳で、伝票を見れば金額が一目瞭然なのだから、支払いに行く前にある程度の用意は可能な筈である。気を付けたいものだ。
グループ客の場合、会計幹事が名乗り出て、その人がしっかりしていれば全く問題ないが、幹事不在の場合、その場で「じゃあ個別会計で」なんてことになると目も当てられない。筆者は会計待ちがいないことを確認しつつ、額面通りか額面近似のお金を用意して、支払いに行くことにしている。
9.順番待ちの席を譲らない
混雑時は会計だけでなく、席に着くにも順番待ちの列ができる。順番通りに案内されないことがないよう、「お名前、人数、禁煙・喫煙の別」などを自分で記入するか、店員に申告して書いてもらうのが一般的なので、順番飛ばしや割り込みに関するトラブルはないが、問題は順番待ち用の席の譲り方・詰め方である。直線的に待ち席が並んでいる場合は、先客が席に案内されると大方順序よく詰まっていくのでいいのだが、待機場所が不明確、かつ順番待ちの席がコの字形やハの字形になっている場合などは、一度腰掛けた人は動くことが少なく、名前を呼ばれるまでそのまま、というケースが多々ある。たまたま近くのイスが空いたので後から来た人が座ってしまう、となると優先順位が崩れ、公平性を欠く話になる。これは店側で「順番待ちの方向を示す」「空いたら順に詰める旨、案内表示する」といった配慮が必要なところではあるが、後から来た人は近くが空いたとしても、立って待つのがマナー、というものだろう。(もちろん、電車内の優先席と同じような発想で席を譲ることも留意したいところではある。)
8.オーダー変更
ろくにメニューを見ないで、適当に注文して、店員が聞き返す(内容を確認する)のに対して返事して決める(例:「サラダある?」→「○○サラダ、△△サラダ...とありますが」→「じゃあ最後の××サラダ」→「ドレッシングは◎◎・□□・◇◇とありますが」→「◇◇でいいや」→「...(--)」 *こういう場合、えてして最後に挙がったものが選択される)、という不躾なのも考えものだが、店全体の効率を悪化させる行為に「オーダーの中途変更」がある。適当に注文しておいて、出てきたものを見てから変更、というのはもってのほかだが、他のテーブルを見て「あっちが良さそうだから変更」というのもどうかと思う。早めに申告するなら何とかなるだろうが、遅かれ早かれPOS打ちする手間(キャンセル→追加・変更)が増えることには変わらない。些細な変更であっても店員や厨房に与える影響は小さくないだろう。ひいては他のお客にも時間的影響が出ることを心したい。
7.卓上小物(調味料除く)のムダ遣い
水やスープをこぼしてしまう人はそもそも行儀がよろしくない故、それを拭く時の節操もよろしくないようだ。紙ナプキンはこぼしたものを拭く用という訳ではないのに、それを鷲づかみにして使う人を見かける。こどもがこぼしてしまった場合は致し方ない面もあるが、親としては必要最低限のナプキンでそれを拭き取る術をその場で我が子に示してもらいたいものである。(ここで親が大量のナプキンを使うようなことだと、子がそれを真似る・良しとしてしまう、のは言うまでもない!)
卓上にあるとついつい手が出てしまうものがもう一つある。楊枝は男女を問わず特にご年配の方がよく利用するようだが、ふと見遣ると一人で2本3本消費しているという例がままある。歯肉を刺激したり、歯周病を誘発することもあろうから、本数もさることながら程々にしたいものだ。
6.なぜかなかなか帰らない
例えば筆者が席に着いた時点ですでに食べ終わっていて、筆者が食べ終え、出ようとした時にまだ居残っている人を時折見かける。グループの場合は後述の2.の例に従い、目的を履き違えているからなかなか帰らないのももっともなのであるが、単独のお客で特に何かをするでもなく延々と粘っている、というのはどういう理由によるのだろう?
空いている時なら許されるだろうが、混雑時、しかも四人掛けの席で一人の客が占有する、というのは困りものである。(後述4.の場合はもっと困るが...) 「コーヒーお替り自由」タイプの店では言い訳できるが、ファミレスであっても、相応の公共性は保ちたい。他のお客にも時間と機会を譲るべきと思う。
5.煙害(喫煙席→禁煙席)
ファミレスでは分煙がだいぶ進んではいるものの、禁煙席と喫煙席の境界があいまいな(というよりパーテーションが甘い)部分が結構ある。禁煙席指定の筆者の場合、同じ禁煙席でも喫煙席から遠い位置を選ぶようにしているが、やむなく喫煙席近くで辛抱することもある。その喫煙席に誰も来ない場合、又は良心的な喫煙者が座った場合はいいのだが、隣りが禁煙席と知ってか知らずか、煙が禁煙席に流れ込むようにモクモクと排出する輩がいる。せっかくの分煙である。非喫煙者への配慮を考えてほしいものだ。
*尚、禁煙席のあり方についてはいずれ一話使って論考するつもりである。
4.パソコン、書き物 etc...
目撃例はあまりないが、最近とあるファミレスで「長時間のパソコンや書き物はご遠慮」といった掲示を見かけるようになった。パソコンが軽量化し、持ち運んで作業しやすくなった(バッテリの時間も延びた)分、快適な環境でコーヒーを片手にカタカタやるのが流行ってきたんだろう。緊急性を伴う実作業での使用ならまだしも、単なる見栄や恰好でこれをやられたのでは、店としてもたまらない。原稿書きや採譜など、書き物も然り。6.同様、空いている時なら大目に見られようが、混雑時はご遠慮願いたいものだ。
3.こども放置 VS こども叱責
ファミレスでの代表的光景と言えば、高校生グループ、若者グループ、そして親子連れ(母子)グループといったところか。親子連れで目に余るのは、親グループと子グループに分かれてしまった時だろう。親はおしゃべりに夢中、子ははしゃぐのに夢中。もう誰も止められない。w(--)w ファミレスは親どうしの会話の解放区ではない筈だ。こどもを放置せず、親子一緒に会話を楽しんでこそ「ファミリーレストラン」としても本望だろう。(双方の会話シーンと言ったら、ひどい場合は子がチョンボした時くらいなものである。)
一方、一般的な家族単位の親子連れの場合、会話を楽しむというよりは、やはり何か失態を演じてしまった時(コップをひっくり返す、食べ物をこぼす等)に子を叱るシーンの方が多いことがある。子としては不慣れであったり、集中力が足りないこともあるだろうが、親にかばってほしい時に本能的にやってしまう可能性も否めない。会話が充実していれば自ずと失態も減るのではいか、と思うのである。その他これまでに、母娘の2人連れで、延々と娘を叱り続けていたケース(小さい娘さんは涙をためつつもずっとこらえていた)、お受験を控えてのこと、両親が娘にテキストを演習させながら、ちょっとミスが出るとそれを執拗に責めるケース、などを目撃してきた。楽しいはずのファミレスがこれではその子にとって修羅場になってしまう。将来、ファミレス嫌いになってしまうばかりか、仮にその子が親になった時、子に同じ処遇をしかねないのではないかと案じてしまうのであった。ともあれ子を叱責するシーンは周囲のお客にも快いものではない。場を弁えてほしい。
2.喧騒(ダベリ、携帯会話)
親どうしの会話も時として喧騒のもとだが、やはり高校生、若者グループの騒々しさは比類を見ない。会話を楽しむ、という点では決して悪く思わないが、度を過ぎたおしゃべりや談笑はいわゆる「ダベリ」の領域に属し、周りに害となり得る。それだけならまだしも理解に苦しむのが、その場にいない人間との(携帯を使った)会話をその場へ持ち込むことである。目の前に話し相手がいるのに、なぜそこにいない人とわざわざ会話する必要があるんだろう? その場にいる人間どうしの関係の希薄さや表面性を感じる。(携帯を使ってメールやチャットに興じる奴もいる。彼等にとって「場」とは何ナノだろう?)
6.と4.の帰らない系の人たちとは違う意味で彼等もなかなか帰らない。とりとめなく、軽佻なやりとりが交わされるばかりである。そしてこの場では悪いことに次記のワースト1.に通じる「べからず」も兼ねている。これは客を甘やかす店側の姿勢(年少者にも敬語で接さざるを得ない矛盾)も問われるところだろう。
*この「客の甘え・甘やかし」については別の機会でじっくり考えてみようと思うので、今回はここまで。
1.分不相応な注文(食べ残し・飲み残し)
さてさて何より許し難いのは、自分の「分」を超えた食事・飲み物の注文及びそれに伴う食べ残し・飲み残しである。金を払えばそれでいい、という生易しいものではない。食品や飲料の残滓が環境に与える影響、食糧の生産・輸入に要する社会的コスト、調理・提供する店側のコスト等々を鑑みれば、決して安易に残せない筈である。もちろん口に合わないとか、体質的に受け容れないとか、予見できない事情もあるだろう。しかし、写真付きでカロリー表示もあって、使っている食材も明確なファミレスでのメニューに従えば、分に相応な注文は十分可能だろう。お替り自由・食べ放題・飲み放題は店側がリスク負担すべきサービスとも思えるが、それとて社会的な負担を考えつつ、本来自らでブレーキをかけるべきものである。多量の食べ残し・飲み残しについて追加料金を賦課する店もあるが、抑止効果は疑わしい。はじめから自分の体と相談して、適切な量・食材を注文したいものである。(農水省の食品ロス統計調査に基づく喚起や厚生労働省の食品リサイクル法はあくまで事後の話である。食べ残し・飲み残しを元から抑制する思想を並行して説く必要を強く感じる。)
※「べからず集」シリーズ、次回は第105話に起稿する予定です。 |