第115話 1200駅!(2002.6.15)
*これまで何度か鉄道ネタをご紹介してきました。今回はその積み重ねの一大通過点についての話題です。
学生時代は時間の許す限り、動き回った。幼い頃から路線図を見ながら、あれに乗りたい、ここに行きたい、と思いを募らせながら、当時は自由に動けなかったので、その分思う存分、といったところである。
JRは青春18きっぷもあればホリデー・パスもあるし、地下鉄も必ず一日乗車券があるので、何とでもなるが、首都圏の私鉄は一日乗車券がまず出ない(出たとしても限定的)ので、バイトの稼ぎをちょこちょこ注ぎ込みつつ、こまごまと乗り継いだものだ。降りた駅からまた乗って、というのはあまり能がないので、わざわざバスで移動したり、時には延々と歩いたり、一筆書きのような経路になるよう設定しながら、その妙を楽しみつつ周遊する。
どの駅がどんな地勢でどんなスポットがあるかなど、きちんと記録をとってきた訳ではないが、面白そうな光景や名物は写真に収めてきたし、駅前商店街の名前なんかもある程度記録するようにしたおかげで、駅や街の個性や違いは何となく頭に入っているようだ。第100〜103話の東京百景の構想もそれがベースになっていて、本当なら小旅行の足跡をひもといて、都内をもっと広範囲に探訪した結果として紹介するつもりだった程である。
さて、首都圏と言ってもどの範囲までを含めるかは人それぞれと思うが、筆者的にはピッタリ2000駅を対象に、その乗り降り実績を積み重ねつつ小旅行を楽しんでいる。
*東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の全駅に加え、茨城県は常磐線で高萩まで、栃木県は宇都宮線で黒磯まで、群馬県は高崎線で横川までのエリア、山梨県は中央本線で甲府までのエリア(富士急行含む)、静岡県は東海道本線で沼津までのエリア(御殿場線・伊東線・伊豆急行含む)で括ると、ちょうど2000駅になる? |
横川〜高崎〜新前橋〜(両毛線)〜小山〜(水戸線)〜友部〜高萩の線でつないだ南側をローカル私鉄も含めて対象に(ただし、上毛電鉄・わたらせ渓谷鉄道・茨城交通・日立電鉄は除き、真岡鉄道は含む)、と言った方が早いかも知れない。 それと小山から北、宇都宮線の黒磯までを足す(日光線・烏山線を含む)訳である。ずいぶん沢山あるものだ。(路線図参照)
学生時代はもっと狭い範囲で、とにかく1000駅を目標に乗り降りしていたが、結局1000駅目(東京モノレールの天王洲アイル)に到達したのは会社に入って2年半経った1992年10月4日のことだった。この1000駅到達を境に、それ以降「○○駅は何番目」と履歴をとるようにしたが、実は1000駅まではその狭い範囲でのカウントだったので、過去に乗り降りした遠地の駅(日光、水戸、熱海など)は含んでおらず、範囲を広げて数え直すと、すでに1000駅はクリアしていたようだ。1000駅目以降は範囲を広げてからの駅も記録するようにして、2002年6月10日までの乗降履歴は1211駅に達しているが、上述の2000駅対象に記憶の限りきちんと数え直すと、何と1286駅(乗降率64.3%)になっていた。従って、今回の「1200駅」というのは正直なところイイ加減な数字なのだが、一つの記念ということでご勘弁願いたい。
都内や主要路線を動く分には、移動範囲も限られているし、駅間が短い上に、本数も多いので、駅数を稼ぐのは難しいことではない。しかし、中央部から放射部に向け、郊外・中距離圏の駅に足を伸ばすようになると、当然のことながらその逆で、駅間、運転間隔、乗り継ぎ等々不利になっていくので、駅数の積み上げも鈍くなってくる。学生時代の4年間は年に200駅なんてのは当たり前だったが、その200駅のペースがずいぶんと落ち、1992年10月の1000から10年近くかかってようやく1200駅に達した、という状態である。社会人になれば時間的制約も多くなるから、そう易々と駅数は増やせなくなる訳だが、郊外に向かうにつれての条件悪化も加味すれば、まあまあと言ったところだろうか。
(ちなみに、第89話で紹介した日数計算をしてみたら、1992年10月4日から2002年6月9日まで何と3535日だった。17.7日に1駅の割合で新しい駅を乗り降りしてきた計算になる。へぇ〜。)
学生時代は、幼少時の思いを満たしつつも、ひたすら駅数を増やすのに没頭していた感があるが、社会人になり、未知の駅をたま〜に訪ねるようなパターンになってからは、駅数がどうの、と言うよりも、とにかく電車に揺られてフラフラというのが良くなって、「鉄道セラピー」とでも言うべく楽しみ(癒し?)を見出したようだ。ペースが落ちたのはそのせいでもある。
もちろん当てずっぽうに動き回る訳にもいかないから、できるだけ主だった駅から足を運ぶようにしているのだが、諸事情あって地域バランスが崩れてしまうものである。
東海道線は東京〜沼津までの全駅をクリアした。(つい先月、早川と根府川に行って達成) 一方、宇都宮線となると、大宮の次の土呂はまだ。高崎線も大宮の先、上尾までは全駅行ったが、その次の北上尾はまだ、という状況で、運行本数の違いこそあれ、東京駅を基点にした同心円でのバランスから考えると、不本意な感じがする。常磐線は上野〜土浦まで全駅乗降。それに中央線を対比させるなら、新宿〜大月までOK、と行きたいところだが、実際は藤野までの全駅どまり(つまり、上野原〜猿橋の5駅はまだ)。まだまだなのである。
全体的には、山手線を軸として西高東低の傾向が強く、京王線・小田急線・東急線は全駅、西武線も新宿〜所沢、池袋〜所沢の範囲内は達成したものの、京成線や東武伊勢崎線は県境を越えると途端に未知の駅になってしまうお粗末ぶり。(ちなみに小田急線全駅達成はつい先月のことである。昔から筆者にとって所縁ある線だが、フリーキップが発売されないことがネックになって随分かかった。ラストは開成駅。実に1192番目である。)
関西には「スルッとKANSAI」と称する各線共通、しかも広範囲で乗り降り自由の切符があるので、羨ましい限りだが、仮に首都圏で同様のパス(つまりパスネットがそのままフリーキップになるようなもの)が現われたら、筆者は喜々として朝から晩までウロウロしてしまい、癒しのつもりが疲労になってしまうだろうから、ないことを良しとしよう。
そろそろホリデーパスのシーズンかな、と思い、きっぷ情報などを見ていたら、ワールドカップにちなんで「サポーターズ・パス」という強力な助っ人乗車券が出ることを知った。サポーター向けと言っても試合とは無縁(申し込んだけど全く当たらなかった)なので、あくまで小旅行用として使わせてもらった。(こっちはパスに助けてもらったようなものなので、サポートパスと呼んでいる。)
ホリデー・パスのエリアに、鹿島神宮までの区間がおまけでくっついて、2日間で3000円。ホリデーパスを2日分買うと2040×2で4080円だし、成田〜鹿島神宮はエリア外だから、おトクである。カシマ・さいたま・横浜でのサッカーの試合日に前後しての限定発売なので、ホリデーパスのように毎週末とはいかないが、逆に都合よく6月9日・10日の日曜月曜という、通常では有り得ない2日乗車券の設定ができたので、迷わずその2日にした。(しかも窓口販売のみだから、カードで支払いできるし。)(^^)v
6月9日、朝早くから成田線経由で鹿島線方面をめざす。カシマで試合がある日なら臨時列車が出るのでいいのだが、この日は通常ダイヤなので本数がとにかく少なく、要注意である。成田を10:19に出て、香取に10:56着(1198番目)。いったん駅を出て鹿島線に乗り換えて、潮来には11:23着(1199番目)。潮来ではちょうどあやめ祭りの開催中(やっとこさ見に来れた)だったので、あやめ行楽用としてもこのパス、実に有効である。(ホリデーパスを使って潮来駅で精算している人を見かけたが、成田からの運賃650円を追加で払っていた。サポーターズ・パスを知っていれば余裕で元が取れたのに...)
潮来を11:56に出て、12時ちょうどに着いた駅は1200駅目(!)、JR鹿島線の十二橋である。予め記念になるように設定したのだが、12時着は余興みたいなものである。お誂え向きの駅があったものだ。鹿島線の乗り降りがフリーだったのがポイントである。ありがたい限り。
実際の十二橋(加藤州十二橋)は駅のもっと北側、利根川の近くにあるので、この駅の周辺は目立った物は何もなく、ただ見渡す限り田圃と水路と沼しかない。誰も乗り降りしそうもない駅だが、筆者が下りた時も何組か乗り込んでいった。電車が来る頃にはどこからともなくちらほら乗客が現われる。摩訶不思議である。
さて、記念下車とは言え、何もないのでは仕方ない。当然無人駅なので、改札はなく、乗車駅証明書の発券装置がポツンと置いてあるだけ。1時間に1本以下のダイヤなので、次の上り列車が来るまでは70分以上ある。そこで再度、鹿島神宮方面に戻り、潮来の次の延方をめざすことにした。次の下り、鹿島神宮行きは12:18発。まあ程よいタイミングである。という訳でせめてもの記念に乗車駅証明書を出そうとしたら、1組の家族がやってきた。(いったいどこから?) 早速、発券ボタンを押している。「何だ時間がずれてるな」と言うので、筆者もその後ボタンを押し、よくよく見れば15分遅れ。12:12で打刻すればいいや、と思っていたので、この家族が教えてくれなかったら、つまらない証明書になるところだった。列車が来る3分前。十二橋で12時という記念打刻をすべく、12:15にボタンを押して出てきたのが、この乗車証明書である。
思いつきで足を伸ばした延方だが、こっちの発券機の打刻はもっと狂っていて、最初に出てきたのを見たら25分遅れ。しかし、その1分後に再度打刻してみたら自動的に修整されて出てきた。どうなってるんだろう?
1200駅の第一目的は果たしたので、この日は日本×ロシア戦を控えた横浜スタジアムの雰囲気を味わうべく、横浜方面に向かうのがもう一つの目的。延方から直通で新川崎まで一気に下る。途中、成田で連結、佐倉で特急通過待ちがあって余計に時間がかかったが、2時間40分乗り通しだった。一気に横浜まで行っても良かったのだが、新川崎15:44着だったので寄り道時間ができた。南武線の鹿島田まで歩き、めざすは未踏の川崎新町。下車して程なく逆戻りして、尻手〜川崎〜鶴見と乗り換え、さらにJR鶴見線へ。この鶴見線、なかなか利用しにくいものがあるが、このサポーターズ・パスのおかげで思いがけず足を運ぶことができた。鶴見小野、大川の2駅を追加。これで東芝社員専用の海芝浦を除き、鶴見線で未乗降なのは「新芝浦」のみとなった。感無量である。日曜ダイヤだったので、大川行きはまずない筈だったが、ちょうど大川17:26着、17:40発というのに乗れて、ラッキーだった。
東神奈川からスタジアム最寄りの小机に向かう。18時過ぎの横浜線。最後尾の車両には何と警備員が乗っていた。菊名からはさぞ大量に乗ってくるかと思いきや、程々の乗り降り。新横浜では下りる客の方が多かった。それでも小机に着くと怒涛の人の流れができ、ホームから改札まで押せ押せ状態。警備も充実している。駅を出ると、ゲート別に誘導路が分かれていて、それに従って青い人波が黙々とスタジアムをめざす。直に観戦できる幸運なサポーター達だが、表情を窺うとどことなく緊張感が漂っていたのが印象的だった。人の流れはスムース、スタジアム周辺でも特にトラブルはなさそうで平静。これから本当に歴史的一戦が始まるんだろうか?といった様相だった。西陽が低くなってきたし、そこそこ臨場感は味わったので、人波に逆行して小机に戻る。人の流れが円滑なだけに楽々駅に戻れて良かった。
この日は小机で折り返す臨時列車が走っていた。実に珍しい。快速が止まらない小机だが、快速運転は取りやめたのだろうか。鉄道マニアにとっても特別な一日になったことだろう。
横浜に着くと、計ったように19:13発の湘南新宿ラインがやって来た。一日にして3000円分クリアの大移動旅行はこれにて完結である。(翌日、6月10日のレポートは割愛します。) という訳で2日間でめいっぱい、何度も自動改札を通したものだから、パスには横線がいっぱい付いてしまった。ご愛嬌。
さて、1300駅までの道程は一層遠い感じだが、当面の目標(JR線)としては、
中央線: |
上野原〜猿橋
→新宿〜大月全駅達成 |
八高線: |
北八王子、小宮、東福生、金子、毛呂、明覚
→八王子〜小川町全駅達成 |
高崎線: |
北上尾、北鴻巣
→上野〜熊谷全駅達成 |
宇都宮線: |
土呂、東大宮、白岡、新白岡、東鷲宮
→上野〜古河全駅達成 |
内房線: |
長浦、巖根
→千葉〜君津全駅達成 |
あたりだろうか。筆者近所を走る埼玉高速鉄道も何だかんだでまだ乗り降りした駅がないので、一日乗車券発行のタイミングを見計らって、早々に探訪してみたいと思う。(さいたまスタジアムでのワールドカップ試合に当たっていれば、浦和美園には行けたんだろうけど。)
新しい路線や駅ができれば、悠々旅行どころではなく、かつての乗り降りモードで駆け足になることも多い。第81話で紹介した大江戸線レポートはいい例である。2002年12月に控えているりんかい線の延伸(天王洲アイル〜大崎)は、埼京線利用者にとってはダイヤの大幅改正につながる一大事でもあり、筆者としても当然目が離せない。特に大井町の変貌ぶりは大いに楽しみなところである。 |