随筆「東京モノローグ2003」(7−8月期)
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第143話 夏は花火! / 第142話 都心周遊(都バス編) / 第141話 初めての築地市場 / 第140話 路面電車

第143話 夏は花火!(2003.8.15)

 花見もスゴイが花火も負けていない。娯楽が細分化する一方で、大衆娯楽が減ってきたせいか、どうも「花」を冠する年中行事に集まる人の集中度が増しているような気がする。(花見も花火も動員規模が年々大きくなっているのは単に気のせい?) それに伴って、マナーは悪化し、会場の環境汚損も深刻になってきているように思う。

 ...と、またここで息巻いてみても仕方ないので、今回は季節ネタ「花火」で一話。

 早いもので、8月も半ばである。6月・7月はいいのだが、8月はどうも好きでない筆者としては、もう半ばと言うべきか、まだ半ばと言うべきか、複雑なところである。夏は嫌いではないし、できれば過ぎてほしくないと思うため、8月の次に9月が控えている、というのがいたたまれず、逆恨みのように8月を好かなくなっているようだ。その夏が去るのを助長するような盆踊りの音や賑わいがまたいただけない。近所から"ドドン"とか"カカッ"とか聞こえてくると、ちっともワクワクせず、哀愁が漂ってしまうのである。まだ夏に余裕のある7月に鳴っていても物憂げに感じてしまう。何とかならないものだろうか。

 そんな哀感を払拭してくれるのが花火である。7月の花火はなお良いが、8月の花火もシーズン本番だけに華やかに映る。8月後半や遅い晩夏の花火でも哀愁は感じない。まだまだ夏、という余韻や勢いを感じさせてくれるだからだろう。(でも同じく夏の風物詩である盆踊りや縁日は、晩夏になればなる程、哀しくて...)

 花火評論家でも何でもないので、ここの花火はここが特徴とか、この型はこんな仕掛けでできているとかを垂れるつもりは毛頭ない。単にイベント好きなので、何かのついでに花火を見ていることが多かったりする、ただそれだけ。だが、急ぐ夏をしばしとどめてくれる、夏ならではの清涼感や開放感を色・音・華で表現してくれる、そんな花火がお気に入りなのは言うまでもない。

 肉眼で比較的至近距離、かつそれなりの時間見物していた花火を覚えている限り挙げてみると、次のような感じ。(電車などで移動中に眺めたものは除く。) 花火に詳しい方から見れば何と言うことはないと思うが、ひとつご参考まで。

■過去に見物した花火(北から順に)

  • 札幌(豊平川)

     川からの涼をとりながらの花火。間近(というか、頭上)で実に見応えがあった。今年の熱海花火も近かったが、おそらく最短の距離からの見物。

     でも旅先で見た花火は実はこれくらいのような... 花火目当てで旅をしていないことがよくわかってしまうのであった。
     

  • 手賀沼

     柏の実家から車を借りて一人で見に行った憶えがある。印象は薄い。
     

  • 松戸(江戸川)

     江戸川中流の河川敷では、柴又(葛飾花火)でもやっているが、松戸駅近傍の河川敷で見物。確かこれも車で出かけて、通行規制がかかっていない堤防の道路から遠く眺めていた。
     

  • ディズニーランド

     別に花火大会という訳ではないが、行く度に見ているので一応。
     

  • 東京湾大華火

     栄えある第1回の同大会には、招待券ハガキを持って勇んで出かけた。学生の身ながら、場所が確保された上での花火見物、というのはなかなか優雅で快かった。その後は招待券入場1回、遠くからの見物1回、といった程度。ロケーションが良く、あちこちから見られることもあり、最近では観客の総数もスゴイようで。
     

  • 隅田川

     今年は有料観覧席が設けられたことでも話題になった。神宮外苑花火ではすでに、神宮球場の席を有料販売していたので、有料席自体は目新しくはないのだが、本来オープンな会場の一部を囲い込むというシステムは確かに画期的。今や100万人を集める大イベントである故、混雑は半端じゃない。じっくり見たい人にとっては至便だろう。筆者が浅草に見に行った時(1990年の前後)は、確かまだ30万人程度だったと思うが、何でこんなに増えてしまったんだろう? ちなみに、今ではおなじみのスターマイン(連発)という打上げ方式が出てきたのは、筆者が見に行った当時の、この隅田川大会頃からのようである。
     

  • としまえん

     おそらく最も古い記憶の花火。当時にしては大規模な「1万発」という触れ込みで、他の花火大会を圧倒していたように覚えている。
     

  • 神宮外苑

     かつての職場(青山)帰りに、自転車で立ち寄って、球場の外(無料席)から何回か見物。(昨年は国連大学に入れてもらって、上階から眺めさせてもらったり。) 初めて見に行った時は、花火のカラ(玉皮と言うそうな)が空から降ってきて、ビックリしたものだ。何かの入れ物に使えそうだと思って、その玉皮を持って帰ったが、半球状で据わりが悪いので、何に使うともなく、とうとうどこかに紛れてしまった。
     

  • 二子玉川(多摩川)

     友人がかつて二子新地の多摩川沿いに住んでいたことから、花火があればおじゃまさせてもらって、窓から間近に眺めたもんである。(ベランダがあればもっと良かったのだが...) 二子玉川(当時は二子玉川園)駅のホームから、ラッシュ同然の人混みの中、垣間見たこともあった。
     

  • 横浜港

     「横浜開港記念みなと祭り国際花火」の方だったかも知れないが、シーズン中盤の開催だったと記憶しているので、神奈川新聞主催の方だと思う。打上げのミスで、海上で爆発してしまって犠牲者が出たのは、筆者が見た年の次の年の出来事だったように思う。
     

  • 片山津温泉

     1980年の夏。家族で金沢方面に旅行した時、片山津温泉の宿の屋上から見物したのを思い出す。当時、天文少年だった筆者は、北極星のあたりを見上げてから、頭上に「りゅう座」がよく見える(線でつなげる)ことに感激して、実は花火そっちのけだったりして...
     

  • 長良川

     小学校中学年の夏休みに見物。絵日記ネタとしては申し分なく、いろいろ詳述していたのを思い出す。
     

  • 宇治川

     京阪電車宇治線の終点、京阪宇治駅を降りてすぐ。駅前からよく見えたので、大して歩かずに済んだのはよく覚えている。
     

  • 淀川

     枚方市に住んでいた頃、淀川の河川敷に出て、何度か見物した。至近距離にも関わらず、あまり迫力は感じなかった。高校時代、買ってもらったイージーカメラでこの花火を撮ったら、案外よく撮れていたことは覚えている。

 *大阪以西・以南での花火大会は、残念ながらこれまで見物したことがないので、記録はここまで。


■今年見物した花火

  • 7月24日:今年の幕開けは、足立の花火。南のベランダから赤羽駅の方角に見えるが遠いので、長時間見ていようとは思わない。だが、音はよく聞こえるのでそわそわしてしまうのが難点。

(余談)

  • 7月25日:熱海の花火を今年こそ、と思っていたが、初日の25日は見送って正解だった。この日は、花火大会の開催時間中、東京も神奈川も伊豆方面も大雨だったのである。(東海道線は立ち往生状態だったとか。) 逗子、江ノ島、平塚の湘南3点セットの花火大会も同じ時間帯だったが、果たしてどんな花火になったのやら。

  • 7月28日:アタミ海上花火大会

     熱海2003年2回目の熱海海上花火を見物。会社保養所があるので、これまで熱海には何度も足を運んでいるものの、熱海の花火は今回がようやく初めて。

     浜辺で間近に見る花火は実に圧巻。熱海湾一帯に爆音がこだまし、光害のない暗い海と空には華がよく映える。まさに音と光を楽しむ夏の絵図である。適当に風も吹いていたので、煙も晴れて、よく見える。あっと言う間の40分間だった。

     今年はもう他の花火は見物不要、っていうくらいの満足度。東京近郊だとどこも満員なので、適度な混み具合の熱海花火は結構オススメ。週末にやらないのがまたポイントだろう。

 時代とともに花火も進化し、「デジタル スターマイン」と称するIT制御の打上げ花火が中盤を盛り上げた。打上げ音が機械的なのが一興。規則正しく上がるのがまた小気味良かった。

 デジカメで適当に撮っていたが、偶然にガス状星雲や球状星団の天体写真のようなものが撮れていたりして楽しいものだ。(ここの3枚は、ちゃんと花火らしいのを選んだつもり。)


  • 8月2日:戸田橋・いたばし花火大会

     筆者自宅の裏手から、いながらにして見える毎年恒例の花火。新河岸川沿いの高層マンションの位置関係で、「いたばし花火」の方は一部欠けてしまうのだが、対岸の「戸田橋花火」の方はよく見える。(有料観覧席も登場したが、自宅から見られるに超したことはない訳で。)

     なぜか、この毎年8月第一土曜日は、荒川沿いの花火ラッシュで、川口のオートレース場の「たたら祭り花火」は目の前(と言っても3〜4km先)で上がるは、遠く上尾でも上がっているのが見えるは、はたまた下流では、篠崎の江戸川花火大会も望むことができ、4元中継状態なのである。(あっち向いたり、こっち向いたり...)(((^^ )( ^^)))


 ↑ 戸田橋からの花火 | 荒川の流れの上に小さく見える赤い円が上尾の花火 ↑

 上記のような情報を整理する上でも重宝する。夏の花火情報はgooの季節特集が良さそう。でも、首都圏で開催される花火は気が付けばもうわずか。熱海を堪能できたので、今シーズンの見物予定は今のところないが、盆踊り系の音や光景で切なくなってしまったら、またどこかの花火でパァーっと気分転換を図ろうかとも思う。とりあえず、年に一度、至近距離で見ておけば8月を憂えずに済みそうだ。

第142話 都心周遊(都バス編)(2003.8.1)

 今からちょうど半分、第71話では、営団地下鉄を活用した都心周遊術をご紹介した。(1枚の切符でどこまで自在に乗降できるかについての考察。我ながら画期的な一話だったが、この後パスネットの導入に合わせて、自動改札機を刷新したことで、この切符活用術は成立しなくなってしまった。あいにく、切符での乗り換えも30分以内になってしまったのである。)(^^;

 営団地下鉄での周遊の場合は、当日一日乗車券(720円)を使うことになるが、時間にゆとりのある方にぜひお試しいただきたいのが、都営バス限定の一日乗車券(500円)である。第71話の紹介例ほど安上がりではないが、乗り換え駅の制約を受けることもないし、大手を振って使うことができる。陸上の景色を見ながらの移動というのも心強い。23区内の複数箇所を一日で移動する時、どこに何があるか、ある程度通じていて、手元に「都バス路線案内 みんくるガイド」があれば、こんなに確実なものはないと思う。

 7月26日(土)、この日は朝から、有明コロシアムで開催している某サーカス(もちろん招待券で入場)を観に行くことにしていた。有明に行くには、埼京線+りんかい線ルート(国際展示場駅で下車)が最も素直で速いのだが、片道だけで都バスの一日乗車券代を上回ってしまうのが面白くないので、早めに家を出て、東京駅からバスで行くことにした。(それにしても、こんなキャンペーンがあったとは!)

 まずは、【東16】系統で、東京駅八重洲口から有明二まで。定刻の9:14発、東京テレポート駅行きに乗って、早速、都バス一日乗車券をゲット。これで今日一日、都バスは乗り放題である。

 開演まで時間はあるとは言っても、招待券は自由席なので、早めに行っておくに越したことはない。だが、この【東16】は迂回気味に走る区間があるので、どうしても時間がかかる。30分見ないといけないところが玉にキズ。それでも平日と違って、豊洲あたりに来ても乗り降りが少ないので、それなりにスピーディーな感じ。亀島橋、石川播磨重工、東雲都など、橋や島のつく停留所が多いことを再認識しながらの30分間。有明に着いたのは、9:45。だいたい読み通りだった。(ちなみに、島が付く停留所は、八重洲や豊洲の洲も「しま」と読めることを含めると7つあった。この辺りは水上都市であることが何となくわかる。)

 この系統の下りは、有明と有明コロシアムの2つの停留所には停まらないことになっている。行き過ぎても困るので、手前の有明二で降りたのだが、めざすコロシアムの前の停留所は、有明コロシアムではなく、「有明テニスの森」。何とも紛らわしい。

 サーカスを観終わって、次はお台場へ、と行きたいところだが、引き続き都バスを使ってどこかへ移動するとなると、【海01】か、乗ってきた【東16】に限られてしまう。ベイシャトルと称する無料の循環バスも走っているが、ワシントンホテルかビッグサイトまで行かないと乗れないし。実はこの有明という土地は交通アクセスがそれほど良くないことがわかってしまった。

 バス停を少し外れたところに、大型倉庫を活用した家具の展示場がふと目に留まったので、そこを冷やかしに行くことにした。すると、倉庫前からお台場海浜公園行きの無料送迎バスが30分間隔で動いていることを発見。都バスの乗車券はあるけれど、これに乗らない手はない。単なる冷やかし客で申し訳なかったけれど、13:30に首尾よくバスに乗車。ランチタイムぎりぎりで、デックス東京ビーチの焼肉店などで昼食をとる。

 ふだんお世話になっている700円の都営交通一日乗車券とは違い、都バス一日乗車券は、バスに3回乗れば元はとれる計算。こういうのを持っていると、ついウロウロしたくなるのが筆者(妻ともども)の常。そうだ港区の図書館に行こう、とか、環七通り沿いにできたホームセンターに行ってみよう、とか、バスでないと行けなさそうなところを思いついては、路線図首っ引きで、ルートを思案する。そんな低出費な週末の過ごし方があってもいい。気ままなもんである。

 以下は、その後の乗車ルートと概況である。

  • 15:??発 【虹01】系統(お台場海浜公園駅〜浜松町駅)

     バス停を探していたら、ちょうどバスが入ってきた。ダッシュで駆け込んで、何とか乗車。そのため、発車時刻は不明。レインボーブリッジを通って、次の停留所、芝浦埠頭駅入口まではノンストップ。さながら観光バスのような区間である。遠く、東京タワー方向に夏雲と少しばかりの青空が見える。やっと梅雨明けか?と思わせる瞬間だった。(ご存じの通り、関東地方の梅雨明けは、その後1週間待つことになる。) 急行バスを除き、おそらく23区内最長と思われる、このバス停間隔だが、確か以前はレインボーブリッジの途中にバス停があって(そこから歩行者通路に出られたはずなんだけど)、路線バスらしかったのだが。いつの間にか廃止になってしまったようだ。

     それにしても、レインボーブリッジを通るからって系統名を「虹01」とするのはどういう了見だろう、と思う。オシャレなような、安直なような...
     

  • 15:25着

     浜松町駅前に着いたのは、この時刻。おそるおそる、乗り継ぎのバスの時刻を見たら、何と3分後。これはタイムリー! すべり込みで【虹01】に乗れたからできた乗り継ぎで、仮に10分後の【虹01】だったら、これは叶わなかった。次の浜95は15:53発だったのである。こんな乗り継ぎの妙味がまたイイ。
     

  • 15:28発 【浜95】系統(浜松町駅〜御成門)

     乗り継ぎに間に合ったとしても、恐怖のビハインドがあるので、安堵してはいけない。だが、このバスは定刻通りにやって来たので、お手本のような乗り継ぎ例が実現した。この系統は筆者初乗車だったこともあり、より好印象を持った。

     御成門で降りた二人は、港区立みなと図書館に乗り込み、CDやらビデオをせっせと借りるのであった。
     

  • 16:36発 【東98】系統(御成門小学校〜東京駅南口)

     お次のバスの時刻は出たとこ勝負。ひとまずバス停をめざしていたら、またしても当該バスが目の前を... でもよく見たら東急バス。都バス乗車券では乗れないので、ダッシュは止めて、次を待つことに。かつて等々力に住んでいた筆者が「上京」するのに使ったバス路線である。そういや東急バスと都バスが交互に走っていたなぁ、と述懐していたら、またしても定刻の16:36に都バスが登場。この間、待つこと15分余り。要所を走る路線なのだが、運転間隔は結構ゆったりしている。(しかし、乗るのを見合わせたバスが、この時は東急だったから良かったが、これで都バスに乗り損なっていたら、と思うとゾッとする。複数のバス会社が同じ系統を共有している場合は、一日乗車券を使えるようにしてほしいものだと思う。)

     乗ってすぐに、見慣れない巨大なビルに出くわした。愛宕グリーンヒルズだそうな。バスからでないとわからない景色の変化がある。この系統に乗るのは9年ぶりくらいなので、こうしたビックリも当然出てくるのである。
     

  • 17:20発 【東43】系統(東京駅北口〜田端新町三)

     丸の内南口に着いたのは、16:50過ぎ。丸の内北口まで歩いて、またしてもおそるおそる時刻表を見ると、何と次は17:20。実に待機時間25分である。だが、ここは天下の東京駅。丸ビルがある今は、むしろこの待ち時間は短いくらい。早速、丸ビルの地階に行って、時間を潰す。あっと言う間に、17:10になってしまった。

     それにしても、東京の中心から発車するバスの行先が「荒川土手」ってのはスゴイ。荒川土手について、予備知識がない方がロマンがあって良さそうだ。

     17:10過ぎに、すでに停車していた【東43】に乗り込む。中古の書き物机などを買い込んだ男性が優先席近くに座っている。行商人が乗り込む朝早い列車もローカル系だが、この系統もそんなローカル性を持っていることを示しているようだ。神田錦町を直角に折れるあたりから、急に西日が射し込んできた。北に向かうバスで西側の席に座していたので、この調子で日が照りつけるとたまらない。だが、すぐに光が落ちた。神保町の再開発ビルに遮られたのである。所在がよくわかっていなかったが、このバス通りに隣接する一帯だったことを初めて知った。愛宕もそうだが、バスに乗らないとわからない建造物はまだまだ他にもありそうだ。

     バスの車高から見下ろす総武・中央線線路と神田川はまた趣深いものがある。お濠という特徴的な地形が醸し出す、その風趣を引きずるように、このお茶ノ水橋を過ぎてから、本郷、向丘、動坂を縦貫するルートは、旧き佳き東京の情緒を感じさせること請け合い。営団地下鉄南北線の「東大前」駅の入口でありながら、都バスの停留所は「本郷追分」と称して憚らない。この停留所名に代表される地域カラーが厳然と保たれているのが、この近辺の魅力なんだろう。

     さて、動坂(どうざか)という地名は、もともとは不動坂だったところ、省略して動坂になったとのことで、少々ガッカリ。動坂の云われの不思議は解決したものの、この界隈でもう一つ不思議なことがある。それは都立の大きな病院があるにもかかわらず、この本数の少ない【東43】と、もう一つ【端44】の2本しかバス(公共交通)が通っていないこと。他の都立病院は鉄道駅が比較的近くにあったりするので、この駒込病院はちと異色。都立病院なんだから、都バスを手厚く走らせても良さそうなものだが。

     田端駅に着いたら、なぜか乗り込む客が急増。【東43】の本数が少ないのがいよいよ不思議になってきた。筆者が降りたいのは、次の次の停留所。無事降りられるだろうか?
     

  • 18:06発 【草64】系統(田端新町三〜王子駅)

     早めに席を立って、何とか降車成功。書き物机の人も同じく、田端新町三で下車。人混みを抜けて、よく降りられたもんだと思う。ここからは、明治通りをひた走る草64で王子まで。いよいよ帰宅(北区)モードになってきた。

     行先表示が「回送車」「都営バス」というのが2台続いて、池袋駅東口行きがやって来た。これまたほぼ定刻通りの運行である。

     明治通りを走るバスに乗りながら、ふと思いついた。それは、明治通りを走るバスを乗り継いでいけば、山手線のように環状にバス旅行ができるんじゃないか、ということ。この草64で、終点の池袋駅東口まで行き、【池86】で渋谷駅まで。そこから今度は【田87】で魚籃坂下(明治通りはこの辺まで)か慶応義塾大まで行って、先述の【東98】に乗り継げば、確かにバスの山手線版が完成しそうである。何分かかるかは不明だが、本当に時間的余裕がある時はチャレンジしてみたいものだと思う。(今回は御成門から王子駅まで乗ったので、だいたい3分の1くらいの行程をクリアしただろうか。)
     

  • 18:30発 【王78】系統(王子駅〜神谷一)

     王子駅から、環七通り沿いのホームセンターをめざす。ここは系統が複数あるので、何とでもなりそうなものだが、ホームセンターの最寄りの停留所に着くには1系統しかない。ズバリ新宿駅西口行きの【王78】である。18:26発の【王49】だとホームセンターまでちょっと歩かないといけないので、ここは一つ確実な線をとることにした。(ところが18:26発のバスは3分遅れで発車。結局、筆者が乗ったバスはその後ろを追うような展開になった。)
     

  • 19:11発 【王78】系統(神谷一〜王子駅)

     ホームセンターは19時閉店。何とか最低限の用事は済ませて、再び王子駅に戻る。新宿駅からはるばるやって来るので、さすがにこの便は遅れを覚悟していたが、19:20には乗車でき、まぁ御の字。よく考えると、この日はこれが最初のビハインドバスだった。
     

  • 20:42発 【王57】系統(王子二〜赤羽駅東口)

     夕食を済ませて、やっとこさ帰途に。駅前から乗るよりも手近な王子二から乗車。夜間のバスなので、それほど遅れるものでもないと思うのだが、3分遅れで到着。先述の【王49】同様、どうも近場を走るバスはシャキっとしないようで...

 という訳で、都バス三昧でこの日は9本乗車。乗り継ぎのロスはどうしても出てしまうので、元は十二分にとれたが、時間はかかった。ロスを減らすには、携帯電話でここにアクセスして運行状況をマメにチェックすればいいようだが、二人とも携帯を持っていないので、こういう周遊はどうしても出たとこ勝負になってしまう。(まぁ、そのロスがまたいいんだと思うが。) ともあれ、自称(&公認)「晴れ女」の妻を同伴しての周遊。天気が持ち応えたのに加え、不思議なもので、どのバスもほぼ定刻通り、というのが凄かった。これで単独でバスなどに乗ろうとすると、第121話のような状態に見舞われ、つい悪態をついてしまう筆者である。

 案の定、7月30日(木)に常用の都営交通一日乗車券(700円)で、各所を移動していた筆者は、バスの余りのビハインドのため、乗るのを断念する事態が続出。青山一丁目から西麻布乗り換えで青山学院に移動しようとしたが、タイミングが合わず、この距離を徒歩。(いい散歩にはなったが。)(^^; 神谷町から御成門までワンポイント乗車しようとしたが、定刻から8分待っても来ないので、愛宕グリーンヒルズを横目に見ながらここも徒歩。松江から京葉交差点(江戸川区)もそれなりに本数はあるはずなのだが、なかなか来ないので結局徒歩。と3回分の乗車機会を放棄してしまった。

 まぁ、これに懲りず、都バスとは今後も永くお付き合いしたいものだと思う。

第141話 初めての築地市場(2003.7.15)

 小学校時代は東京都内にいなかったので、社会科見学系の各種施設の実地経験が乏しい筆者。それを埋め合わせよう、という心算はないのだが、何かのついでがあれば、見学機会は設けたいものだと常々考えている。ここんとこ、執筆頻度が高くなってきた「東アジア環境情報発伝所」の環境ニュースだが、今回は単独取材ではなく、編集メンバー有志合同での現場調査&レポート、という形式をとることにした。めざすはズバリ、東京都中央卸売市場、築地市場である。

 番組や雑誌などで目に触れることはあっても、市場の中と外で、それぞれ場内市場と場外市場があって、なんてところから実態がよくわかっていなかった築地市場。今回、見学ツアーを組むにあたって、いろいろ疑問が解け、そのあたりのカラクリもよくわかった。場内市場の隣りにあるのが場外市場だが、そのまた外、つまり実質的な築地市場の場外というのは、晴海通りと新大橋通りの外側、つまり場外市場の場外、になる訳である。"outer side of outside"といった感じだろうか。ややこしい。(この地図をご覧ください。)

 場外市場は市場とは言っても、一般客は出入り自由。そこを勘違いして、市場は近寄りがたい、と早計してしまうと話題のお店に行き損なってしまったりする。そこが今までわかっていなかった筆者は、あのラーメン店もそこの寿司屋も市場関係者専用なんだろうな、とか思いながら遠巻きに眺めるだけだった。何と言うことはない。今回、場内市場に初めて足を踏み入れたが、場内のお店にだって一般客は押し寄せている。一般客が入りにくいのは、本当の意味での市場、つまり卸売業者と仲卸業者がひしめくプロの世界に限られるのである。(この配置図で「青果部仲卸売者売場」「水産物部仲卸売者売場」となっているゾーン) 今回はあくまで調査。飲食は二の次だが、今後は大手を振って、場外でも場内でも飲食しに来ようと思った次第。

 思いがけず、梅雨の晴れ間になった7月12日(土)。朝、9:30の集合だったが、何だかんだで市場内に入れたのは、9:50。セリ(4:40の鮮魚〜5:30のマグロ...)はとっくに終わっているとは言え、9時台はまだ買い付けもあるし、買出人の搬出作業などでむしろあわただしいようだ。

 パンフレットを受け取った際、守衛さんに挨拶しておいたとは言え、正門から堂々入場する段に、特に検問みたいなものもなく、7名の日中合同取材チームはあっさり入門。という訳で、ここから場内市場に潜入!レポートである。だが、事前にホームページ等で、ある程度の調べは付けておいたものの、場内は広く、現場感覚がないから、さぁ大変。動き方・歩き方がわからないのである。見学申込をした際に、詳しいパンフレットを当日もらえることはわかっていたので、それを見ながら考えようと思っていたのが甘かった。

 場内の業者が専ら野菜や魚の受け渡しに使う小型運搬車(通称「ターレット」)がビュンビュン脇をかすめていく。クラクションこそ鳴らされなかったが、業者さんもそれどころではないのだろう。早くもプロの世界の片鱗を見る思い。歩行者用のレーンがある訳ではないので、どこをどう歩けばいいかわからない。昨年一年間の事故が290件というのも納得が行く。交通整理の係官が喧騒をかき立てる。こっちも冷や汗かきかき、買荷保管所と称する貨車(大貨含む)駐車場の前を通り、何とか「水産物部仲卸売者売場」にたどり着いた。

 水銀蓄積のおそれから、特に妊婦が食する際の注意なんてのが発表されたおかげで、とばっちりを受けてしまっているキンメダイ&メカジキを中心に、実際の入出荷状況を調べるのが今回の主目的。とにかく鮮魚や活魚だろう、とは言っても、こっちの都合のいいように仲卸店が配列されている訳ではないので、体当たり&その場勝負である。(これを見れば、そのあたりもよくわかるのだが、押せ押せの中でこれを頼りにお店を探し当てるのはかえって手間どっただろう。) とにかく店舗数が半端じゃないのである。実に900はあるそうだ。

 11時には閉店してしまう、というのは聞いていたので、何とか1時間でキンメダイとメカジキを探さなきゃいけない。だが、ここはプロの世界。こと細かく魚の名前が書いてある訳ではない。(まして魚自ら名乗り出てくれる訳でもないし。) 予め魚の名前をたたきこんでおくんだった、と思っても後の祭り。早速、キンキとキンメダイを間違える始末。(体色が同じでも、大きさが全然違うし、何しろ目が金色じゃない訳で...) だが程なく、キンメダイを発見。ふだんは切り身でしかお目にかからないので、こうして全体像を見るのは初めてに近い。インパクト十分である。確かにおめでたそうだし、立派なイイ魚である。だが目がギョロっとしていて、睨まれるとコワイ。(写真で見ると、光を発しているし。) 風評被害とまでは言わずとも、憂き目に遭っているだけに恨念を感じる目である。キンメダイは別に売れ残っている訳ではないと思うが、幸先よくあちこちで見かけた。

 一吉(イ-A-1)、堺石(イ-C-2)、南本店(イ-C-2)など。どれも入ってすぐの「イ」のブロックである。竹七(イ-B-2)さんでは、2ヶ月前が1kg2,800円だったのに、厚生労働省の発表以後、値下がりしてしまい、1kg1,300円〜1,700円と約半値になってしまったそうな。他の店もひととおり見させてもらった結果、この日は、概ね1kg1,000円〜1,700円の幅。ちなみに、マダイなど普通の鯛は1尾1,000円が相場のようだった。

 お次はメカジキ。ひとまず大物解体所をめざしたが、すでに解体作業は終了し、解体後の大物は場内の仲卸さん各店に散らばった後。メカジキがありそうな店を途中で尋ね、何とかヤマ好(ハ-A-9)さんにたどり着き、気前のいいおじさんに対応してもらえてありがたかった。ちょうど店じまい(&来週に向けての準備)するところだったが、冷蔵保管庫にかけた鍵をわざわざ開けてくれた。「豚や牛の方が、よっぽど怖いよ。何食べさせられてるかわかんないんだから。魚の方がよっぽど安全だ。」と話しながら見せてもらったメカジキの巨大切り身(写真参照)は、1kg1,300円とか。(厚労省発表を受けてからの価格動向は不明。) キンメダイについて話を向けると、「かわいそうだよ、下田(漁港の同業者)なんかはね。かなり影響を受けたって聞いたよ。1カ月に1度も食べないだろうから平気なのに。」とのこと。

 お隣の太海(ハ-A-10)さんでは、冷凍メカジキを長包丁で器用にスライスしたり、電動イトノコギリでカットしたりしている。遠目にはカジキには見えず、材木みたい。圧巻だった。

 仲卸売者売場にいる店員さんは、一見コワそうだけど基本的には商人。話術が商売道具みたいなものだから、会話は得意だし、聞けばいろいろ教えてくれるので今回は非常に助かった。(もっとも、ひととおりの作業を終え、余裕のある時間帯だったから応じてくれた、とも考えられるが...) あわただしい時間帯でもお構いなしのテレビ取材なんかは、よくやるなぁと思う。

*今回の取材結果を含めた「キンメダイ・メカジキ水銀問題」の記事は、7月23日には、「東アジア環境情報発伝所」の環境ニュースに掲載される予定です。お楽しみに。

 以下、他に場内で気が付いた点など...

  • 魚のアラ、ブツ切り、カブト、赤血... 場内市場が動いている間は、グロテスクな一面が目に付く。でも生臭さはあまり感じなかった。

  • いわゆる大通路(おおつうろ)は動脈みたいなものなので、小型運搬車(ターレット)の移動が頻繁。衝突されないよう、注意を要する。車の排ガス対策はすでにとられているようで、今では天然ガス車が主流のようだ。

  • 早々にマンボーの生肉を見つけたが、他に珍魚らしいものは見かけなかった。

  • 市価との比較があまりできなかったが、上マグロの切り身はお買い得な感じだった。

 11時の閉店間近になると、放水&床ブラシが盛んになってきて、いよいよ歩行困難になってきた。マグロやクジラについても調べたかったが、まぁ主たる目的は果たしたので、引き揚げることに。それにしても、発泡スチロール箱の流通量の多さと言ったら... 其処此処で投げ出され、積み上げられ、活気があるのは結構なのだが、雑然とした印象は免れない。バックヤードを拡充してスッキリさせて、より効率よく捌くためには、水産物部を豊洲に移転する、という話も致し方ないのかなぁ、と一寸思った。

 予定通り11時過ぎ。再び貨車駐車場の前を通り、場内市場から「魚がし横丁」を経由して、今度は場外市場へと移動する。「つきじ喜代村 すしざんまい」(別館)で腹ごしらえした後は、波徐稲荷神社〜おさかな普及センター資料館〜隅田川テラスと闊歩し、「明石町・聖路加タワー前」からは水上バス(東京水辺ライン游遊便-B1)に乗って浜離宮まで。水上バスからは築地市場の桟橋や建屋がよく見える。魚屑などの「河川への投棄は禁止」という、当たり前のような、そうでないような看板が印象的だった。

 雨か曇りの予報だったのに、すっかり好天になってしまい、これはもうツアー日和。暑い中での浜離宮散策となったが、時折吹き抜ける川風に涼味を感じながら、ボチボチと汐留に向かう一行であった。(おつかれ様でした。) そういや、この浜離宮の外側をL字に流れる汐留川は、今春ボラが遡上してきたことで話題になった。(第132話では立会川のボラについて記したが、その前後あたりの出来事) 釣ったボラを市場ですぐに卸す、なんてことはなかったのかな、とふと思ったりした。

...その後、スーパーの鮮魚コーナーでメカジキやキンメダイを観察するようにしているが、一時期ほどの影響は感じられないように思った。一例を挙げると、メカジキは100gあたり¥248とか(IYでは特価で¥120てのもあったようで)、キンメダイは一切れ¥298(なぜか重量表示なし)とか、それほど値崩れしてはいない模様。

 でも時には、超特価品も紛れてきそうなので、それを狙って買い込んでみるのもいいのでは、と思う。(通常の人ならまず問題ない、ということだし。) 冷静な判断のもと、賢い食生活を送りたいものだとつくづく思う。

 余談だが、体内の水銀量がどうしても気になる方は、水俣市にある「国立水俣病総合研究センター 毛髪水銀グループ」(FAX:0966-63-3111、Eメール:yasutake@nimd.go.jp)に問い合わせてみるといいかも知れない。昨年11月に水俣に行った際、同センターにも立ち寄り、毛髪に残留する水銀量を調べてもらったところ、筆者は2.38ppmと出た。一般成人の許容値は何と50ppm、でも妊娠女性の場合は10ppm未満が望ましい、とのことである。(WHOの環境保健基準による) ご参考まで。

第140話 路面電車(2003.7.1)

 6月10日が路面電車の日というのを知ったのは、昨年11月に「あらかわ遊園」近くで開かれた「都電沿線文化祭」でのこと。(何でも、路面の(ろ→)、電車の(てん→10)から、6月10日なんだそうな。) 当然、今年の6月10日前後には、また同地でイベントが行われるものだと思って、本稿に記すべく、待機していた筆者であったが... 残念ながら、文化祭は開かれず、都電荒川線の荒川車庫でイベントがあった程度。という訳で、路面電車をネタにどう書くか躊躇していたが、ここは一つ、今後の活性化策やら、日頃考えていることを綴ってみようと思う。

 23区内で残っている路面電車は、東急世田谷線都電荒川線の2つのみ。世田谷線は筆者故郷の近くを走っていることもあり、馴染み深かったことは言うまでもないが、都電の方はと言うと、赤羽に越してくるまであまりご縁がなかった。

 近くを走っているというだけなので、乗車チャンスに恵まれていた訳ではない。JR駅との接続が大塚(山手線)と王子(京浜東北線)の2つのみで、かつ、通勤定期券のルート上にこの2駅がなかったからである。都営一日乗車券(第58話第81話参照)を持っていて、時間的余裕がある時にポツポツ乗る程度。それでも、これは23区の北側に住んでいるからこそできること。いつしか、30ある停留所のうち、26の停留所で乗り降り済み、というところまで来た。(ただ、路面電車は鉄道ではなく、軌道なので、第115話に書いた乗降駅リストの対象外) 時には、サンシャインシティ、またある時は巣鴨のとげぬき地蔵。飛鳥山公園に桜や紫陽花を見に行ったかと思えば、小台から熊野前あたりの線路沿いに植えられたバラを観賞してみたり。直近では、荒川区役所の「環境・清掃フェア」のブース出展の手伝いのため、文字通り「荒川区役所前」まで乗車したりと何かとお世話になっている。北区在住7年ともなると、さすがにご縁も深くなるものである。(逆に世田谷線の方はすっかりごぶさたになってしまった。)(!_!)

 温暖化防止の機運に乗って、より環境負荷の少ない交通手段として路面電車が再び脚光を集めるようになった折り、都電荒川線にも路線延伸などの議論が沸き立っていたのを思い出す。JR駅との接続もさることながら、やはり繁華街に起点・終点を設けた方が利便性向上&利用促進につながる、という見当なのだろう。早稲田からは新宿三丁目方面、三ノ輪橋からは南千住、果ては浅草へ、という計画が持ち上がっていたような... その後の経過はいかに?と思っていたら、最近になって豊島区が、雑司ヶ谷の停留所から分岐線を設けて、「グリーン大通り」を通り、池袋駅の東口に到達させるアクセス線の調査を始めるとの報が出ていた。単純に一本の路線ゆえに、系統も一つで済み、全線均一で160円という運賃設定ができている現在の都電荒川線。これで分岐線ができるとなると、系統が複雑になり、均一料金もできなくなるだろう。そのためか、豊島区の構想はあくまで荒川線とは別の路線にするようだ。これが実現すると、おそらくアクセス線と荒川線の間で、乗り継ぎ割引ができるだろう。乗継用の整理券のようなものを降車時に受け取って、乗り継いだ先の電車に乗る時に整理券と一緒に割引運賃を払う。そんな感じになるだろうか。この方法がうまくいくなら、池袋アクセス線以外にもいろいろ考えるところがある。参照地図

  • 王子の公共機関までのアクセス線 ⇒参照地図

 王子駅からの別線を設ける。この線は、営団地下鉄南北線の上を走ることになるので、客足が重複しそうだが、南北線の場合、王子の次の駅は「王子神谷」まで行ってしまって、公共機関が集中する王子六丁目に行くのに使えない。税務署、図書館、警察署などへの手軽な足がないのである。北本通りは比較的空いているので、何とかなりそう?

 末端の三ノ輪橋から先については、荒川線を延長工事するのでなく、別のアクセス線に乗り換える形式の方が現実的な気がする。日光街道の中央分離帯を北進し、千住大橋を通り、北千住の駅前通り近くまで行ければ御の字だと思うのだが。

 もう一つの末端、早稲田から先については、アクセス線ではなく、荒川線の延伸で良さそうだ。早稲田停留所は営団地下鉄早稲田駅からは結構距離があり、他線とのアクセスがなく孤立した状態になっているので、江戸川橋まで延ばして営団地下鉄有楽町線と乗り換えできるようになれば便利になる。実際にこの区間を走るバスに乗ってみると、道路は結構広々していて、十分延ばせそう。

 スローライフを象徴する乗り物として、路面電車が見直されている観もある。巷では、昭和30年代ブームだが、商業施設に組み込める街並みや商店と違って、路面電車を復元するとなると一筋縄ではいかない。仮にその年代にタイムトリップできるのなら、まずは都電など廃線になってしまった路面電車に乗りたいと思う筆者である。

 JTBのキャンブックスシリーズで出ている路面電車の本などによると、東京・神奈川・千葉・埼玉だけを見ても、魅力的な路線がたくさん出てくる。魅力をかき立てるのは、沿線風景を写した懐古写真もさることながら、その路線・系統の妙、そして何と言っても停留場の名前である。往時を偲ばせる名前の数々。朴訥としていて実にイイ。バスの停留所の場合、地域密着になるので素朴な名称になるのは当たり前だが、路面電車はあくまで電車である。駅ではないにしても、もうちょっと堂々とした名を付ければいいものを、と思ってしまうが、それをあえてしないのがまたいいのである。いくつか挙げてみよう。

川越電気鉄道(大宮〜川越久保町)

1941年廃止


 工場前、種鶏場前

⇒この2つの施設、今でもあるのだろうか?

成宗電気軌道(成田山門前〜宗吾、他)

1944年廃止


 幼稚園下

⇒○○大学とかは現役の鉄道駅にもあるが、幼稚園とは!

玉川電気鉄道(二子玉川園〜砧本村、他)

1969年廃止


 中耕地

⇒玉電沿線がローカルだったことを象徴するような停留所名。この名前はバス停にしっかり継承されている。

海岸電気軌道(川崎大師〜総持寺、他)

1937年廃止


 寛政

⇒鶴見が寺社町であることを証明するような名前だなぁ、と思って横浜市鶴見区の地図を見てみたら、何と「寛政町」は現存していた。ビックリ!

小田原電気鉄道(国府津〜湯本、他)

1956年廃止


 江陽銀行、伊藤酒屋前、郡役所前

⇒このあたりは、海に沿って国道1号が通っているが、その道路上を国府津から小田原まで、この電車は走っていたようだ。それにしても酒屋が停留所名になってしまうとは! さぞ地元では有力な店だったのだろう。ちなみに江陽銀行は今では「さがみ信金」になっているらしい。

 とまぁ、旧きを温ねるのもいいが、今あるものをきちっと正視して、その土地、その地域の顔として大事にしたいものである。最盛期には67都市、路線総延長1,479kmだったそうで、現在は19都市、238kmと最盛期の6分の1以下になってしまった。それでもまだ、路面電車は残っている。交通混雑に巻き込まれるのはバスも同じ。時間が読めないのも、一般車両にとって道路通行の邪魔物に映るのも然り。それなら路面電車だっていいじゃないか、ということにいずれはなるかも。「鉄道駅のように、長い階段やエスカレーター、改札などが要らない」「気軽にステップレスで乗車ができる」「建設コストが安い(地下鉄の20分の1、新交通の10分の1)」といった理由により、ヨーロッパ諸国では路面電車の復権著しい。スローライフへのシフトと合わせて、路面電車の復活、延伸、増便が各地で図られることを期待したいものである。

 余談だが、路面電車が現役で走っている19都市のうち、筆者がまだ乗ったことがないのは、豊橋鉄道、富山地方鉄道、加越能鉄道(万葉線)、福井鉄道の4つ。豊橋は何度か足を運ぶも、いつも乗れずじまい。富山、高岡、福井は学生時代に青春18きっぷでフラフラやってきて、乗り継ぎの合間にJR駅周辺を歩いた程度なので、乗車機会はなかった。今後これらに乗車するのも国内旅行の一大テーマである。


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