第360話 鉄道事業者におけるべからず集(2012.9.2)
おかげ様で第360話。月2回のペースながら、延々と続けているとまる15年で達する数である。我ながら「よくもまぁ・・・」だが、まだまだ、でもある。引き続き、どうぞよしなに。
で、節目に当たる回だし、360なので、360°=円? といったことも考えたが、15話ごとの「べからず集」に当たる方を優先。今回で16回目の「べからず集」になるが、最初のべからずが「電車内のマナー」(第60話)だったことを受け、今度は客の方ではなく、事業者の方に向けてみることにした。ズバリ「鉄道事業者におけるべからず集」である。
日常的にJR利用が多いため、「主にJR」といった趣になるが、他社に共通する部分も多々あるだろう。時にはwebサイト経由で投書することもあるが、その辺りも含めた一つのまとめとしてご紹介する。
次.webサイトでの情報提供が...
仕事上、各社のwebサイトを定期的にチェックしている。すると、次のようなものに出くわすことがある。
・表記上の明らかなミス
・一度リリースした情報(PDF等)が撤回され、修正版がアップされる(差し替えまでに時間がかかる場合がある)
・(webサイトの構成や運用の不十分さに伴う)情報の不明確・不分明
→例:イベント情報における「5W1H」などの不足、どれが新着情報なのかがわからない不備
東京メトロと東京都交通局タイアップによる「地下鉄スタンプラリー」のリリース文(当初)。ちょっとした間違いが下の方にあります。(その後、差し替え) |
真岡鐵道、レールファン富士急のwebサイトでの例 |
JRで多く見受けるのは、臨時列車情報の表記の不統一(特に車両や編成の情報)であり、時に日付と曜日の不一致である。今の時期、秋の臨時列車情報が各社・各支社から出揃ったところなので、そうした観点でチェックしてみるのもいいだろう。(→JR東日本各支社の例:盛岡・秋田・仙台・水戸・高崎・八王子・長野・新潟)
10.難ありラッピング車両
この記事「ローカル線、アニメ車両が快走 伊豆・長野・鳥取」に出ているものは真っ当な部類と言っていいだろう。他にもデザイン性の優れたラッピング車両は多く、決して悪く云う心算はない。
ただ時として、「?」となるものが走り、それを多く目にするようになると目障りになってきて、果てはそれが入線してくると乗る気が失せるレベルになってしまうことがある。ここ何ヶ月の間では山手線の「宇宙兄弟」車両がウンザリだった。最近では、こういうのが中央線快速で走っていて、少々刺激的。
[ラッピング車両の例]
なかなかセンスのよい縞模様(またはシマウマ)ラッピング都電 |
りんかい線ラッピング車両「ガチャピン」 |
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「宇宙兄弟」のドアップ顔に比べると、かなり洗練された印象を受ける「ヴァンガード」車両 |
9.車内ディスプレイがわずらわしい
第345話の「無表情」の項で取り上げたが、今なお健在で何とかしてほしいのが「じぇいわ」坊。画面展開的にイラっと来るのは、「大人の60秒講座」(Nintendo
Presents)だろう。次の画面に行くのに展開図を転がるようなのをわざわざ入れて来るので、煩わしいことこの上なし。山手線や京浜東北線などでついこれを目にすると、「嗚呼・・・」である。当然、どんなにタメになりそうなことが映っていたとしても見ようと思わないので、講座も何もないのである。
他のレギュラーコーナー(番組?)はまぁまぁなだけに、こうしたちょっとしたNGは本当に惜しまれる。
8.車内アナウンスの音量が...
一部の旧式の車両では、天井(または吹き出しの中)にあるスピーカーから車掌さんのアナウンスが降って来る。調整が利かないのか、単なる劣化か、以前はこの音量がやたら喧しくてどうしようもなかった。205系での場合、いずれ新型(E233系)に置き換わるのでそれまでの辛抱ではある。
奥まっている割には強力なのがこのスピーカー(205系にて)
7.座席幅は適切か?
ここ何年かで思うのは「大柄な人が増えてきた?」ということ。タテに大きいのはまだしも、ヨコに大きいケースが兎角多く、願わくばあまり近くには居たくないと思うものの、なかなか思うようにいかない。混雑時の圧迫感然り、着席時もそれはもう、である。だが、当人に対してどうこう、というのはこの際ナンセンスだろう。実状に応じた対応を事業者側に求めるばかり・・・。その一つは言うまでもない。座席幅のいま一度の見直しである。
「長い方は7人掛け。詰めておかけください。」といったアナウンスが入る度に思う。「その7人の前提とは? 座席幅の基準は果たして本当に標準なのか?適切なのか?」と。
一見ゆったりと見えるE231系のロングシート |
9/1から高崎線にデビューした新型のE233系(初日の下り1番列車[841M]) |
その新型の4人掛けシート(幅は従来規格?) |
6.次の発車がわからない
新幹線の充実ぶりは目を見張るものがある。東京駅の東海道本線なども親切と言える。悩ましいのは、その多くが先発と次発程度で、その先の表示がされないということが一つ。そして、旧式の電光表示等だと、その次発の部分を各種注意や他線運行情報など何らかのテロップで使ってしまい、正に「先が読めなくなる」ことがあるのが一つ。基本は「先発」「次発」「次々発」の三段とし、テロップは三段目に時々流す程度、というのが望ましいと思うのだが...
[案内表示の例]
先発の次が隠れてしまう例(@赤羽駅) |
二段表示の典型(発車時刻に目が釘付けになってしまった時の例・・・高崎線と湘南新宿ライン、宇都宮線と湘南新宿ライン、それぞれ1分差で連続発車!) |
実に見事な東海道新幹線の出発案内 |
発車時刻が消えてしまうこともままある |
新宿駅ではぜひとも「各線三段表示」にしてほしいところだが... |
これが一つの理想形(地下化前日の京王線調布駅にて) |
5.過剰安全確認?
非常停止ボタンの設置が進んだのはいいが、それが押されることでさらなる非常事態を招く可能性があることは否めない。発車直後に押され、ドア開放ままならず、車内でしばし缶詰状態になり、具合が悪くなり...というのは有り得なくない。ホームで押されるケースは、ドア挟みでの発車、線路内人立ち入りの2つがメインと思うが、いずれも早々に対処すれば、解除されるまでに多くの時間はかからないものと思われるが、いわゆる「安全確認」により、軽く数分(時に十数分)を要し、「あぁ、また・・・」となることしばしば。何をどう確認するとそうなるのかの説明がないので余計にイライラ感は強まる。過ぎたるは猶・・・だと思う。
8/29朝、京浜東北線の始発を待っていたら、一つ前の列車が到着するや降りてきた客が非常停止ボタンをON。何事かと思ったら車内から急病人と思しき男性が担がれて出てきた。何人かの客と駅員、実に見事な連携で事なきを得て、思ったよりも早く運転再開。始発列車の遅れも1〜2分程度で済んだ。(写真は、ボタン解除時の様子)
4.振替への判断遅れ&振替乗車票の配布渋滞
都市圏で鉄道を利用する上で覚悟しないといけないのは、どこかしらで運転見合せが起こり、直接的・間接的に影響を受ける、ということ。長いケースでは1時間動かなくなることもあり、動いたとしても混雑が激しくて乗れないといったことも往々にしてある。まずは見合せを発生させないことが最優先だが、天変地異系はどうしようもないし、とにかく起きてしまった以上は致し方ない。いかにその影響を緩和するかが次に問われる訳で、その最たる対応は振替乗車だろう。信号トラブル、ポイント故障、異音、ドア点検、架線に付着物...理由は様々ながら、どの理由だと振替ができて・できなくて、ではない気がする。乗客にいかに速く代替ルートを提供するかが要だとすると、まず振替ありき、でもいいくらいである。この判断の遅れ、そして振替乗車票の配布要領の悪さは時に二次災害的な事態になる。日頃からシミュレーションを重ねておいてほしい一件である。
[原因はさまざま]
3.駆け込み促進
駆け込む方に問題があるというのを6とすれば、4は駆け込ませる方にも...と考える。発車ベルや発車メロディが使われる駅では、それが一つの合図となり、乗車を急かしている側面があるのは確か。鳴らしておいて「駆け込まないで」というのは大いなる矛盾である。全く音がないのも何なので、車内とその周辺少々に聞こえるくらいの音量で、といった按配か。ホームや階段に響かせないようにすれば、ぐっと駆け込みは減ると思う。
何かとお騒がせな発車ベル |
「やめよう!駆け込み乗車。」それを云うなら発車ベルも、と言いたくなってしまう(@神保町駅) |
京成高砂駅での同時発車の様子。発車合図はホイッスル。(それで十分ではないかと) |
2.不穏な徐行
前述の5.に伴う場合、4.に直結する場合(事象発生直後)、そして3.がきっかけで発車が遅れたことによる玉突きなど、あれこれの理由により、列車は時に不穏な動きをする。次の停車駅まで距離がある途中で徐々に速度を落とし、徐行し...この時点で結構ヒヤヒヤさせられる。低速をそのまま維持し、ゆっくりながらも動いている分にはいいが、そうでないケースが起こる。(次項へ)
1.駅間停車
徐行から停止へ。そして車掌アナウンスとともに乗務員室で鳴っている警報音がスピーカーから間接的に入ってくる。実に嫌な瞬間である。駅と駅の間でこの停車が起こり、その停車時間が何分かわからない・・・最も避けたい事態だが、これが時として起こる。最近ではこういうことにならないように、できるだけ駅で停まり、「抑止」をかけて時間調整するのが増えてきたように思うが、それでも動き出せば何となく徐行モードで、やはりどこかで一時停車したりはするので、乗らない方が賢明だろう。どんなに動いていても、ある程度安定するまでは振替乗車を実施する方が事業者・客の双方にメリットがあると考える。
あとは構内に遊休スペースがある駅では、待避設備をできるだけ設け、影響を受ける区間を最小限にしていくのも有効だろう。路線ネットワークや相互直通運転の拡充は、リスクの拡散とも隣り合わせ。東海道線で何かあれば、宇都宮・高崎線・埼京線に影響し、半蔵門線で何かあれば、東武スカイツリーラインや東急田園都市線に影響し、というのはある意味日常。今後、副都心線<->東横線の直通化をはじめ、JRでは東北縦貫線なども控えている。首都圏の鉄道ネットワークが拡がるのは大いに歓迎だが、単に線路をつなぐだけでなく、リスクを織り込んだ設定もぜひ、というのが正直な気持ちである。
こういう表示が出ている時は乗らない方がいい場合もある |
女性専用車両が混雑に拍車をかけ、遅れを招き、そして...ということもある |
東北縦貫線は着々と出来上がりつつあるが、一抹の憂いも(@神田〜秋葉原) |
以上、主に乗車中・移動中での鉄道事業者向け「べからず集」10選。各種設備、駅員の応対、ダイヤ、車両運用、乗車券関係、環境対応等、見方を変えればまだまだ出てきそうだが、今回はこんなところで。客として求めたいものは、「Quality of Ride」。これに尽きる。
こうした取り組みは大歓迎(@四ツ谷駅)
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