第218話 浸水想定深を探る(2006.10.1→3)
*第217話の続きです。
9月9日の講座&ワークショップでは、非常食をうまく使っての昼食をいただいた。河川事務所の備蓄保存食ということだったが、五目ごはん・山菜おこわ・梅がゆの3種類のレトルトタイプの米飯(どれか一つ)をメインに、非常食缶詰の惣菜の数々、加えて、お餅(あんこ・きなこ・いそべ)まで出てきたのには驚いた。非常用とは言っても、相応のクオリティがなければ逆効果ということもあり得る。被災時はいろいろな意味で意気消沈してしまうところ、非常食で少しでも元気を取り戻せるなら、決して侮ってはいけない。今回の非常食は十分賞味に堪えるもので、妙な安堵感を覚えた。(もちろん、非常食にお世話にならずに済むに越したことはないが。) なかなか味のあるプログラム設定である。
午後の部は予定通り、ハザードマップ(標識、避難場所)を自身で実体験するプログラムが行われた。班ごとにルートが設定され、妻君と筆者を含む班は、知水資料館を出て新河岸川を渡ったら、すぐに岩淵町を縦断して北本通りに抜けるルート。北本通りから東本通りに入り、赤羽駅南口〜北口と廻って、避難場所(今回は旧・赤羽台東小学校)をめざす。
渡された地図にはチェックポイントとして、「浸水想定深」(⇒詳細)の標示を含む、避難場所案内標識のおおよその位置が付されている。この標識、北区で先行的に試行(⇒詳細)されているんだそうで、荒川氾濫時に水没する危険性の高いエリアを中心に、区内の74箇所に配置してあるとのこと。
その74のうち、地図を頼りに6箇所分を見つけて、それぞれ最大何mの高さまで水が来てしまうのかを実感しよう、というのが趣旨。(そう言えば、筆者宅の近所でも見かけていたけど、まさか北区が先行例だったとは! 先行して取り組まないといけない、ということはそれだけリスクも高い?と訝ってしまう。)
実際に大洪水になったら、この標示も水没してしまうため、実用性としては"?"だが、予習というか防災意識を喚起する上では有効か。(日常的にチェックしておいてもらえば御の字?)
電柱に意識を集めないと見えてこないのが難点だが、メインストリートの電柱となれば、やはり目は行く。北本通りの2箇所の標示はすぐにわかった。水位を示す青のテープは実に4mの高さにある。ここまで増水したら、と思うとゾッとする。
主要道路沿い、というものの、ちょっと脇に入った辺りに設置される方がどうも多いようだ。残り4箇所の標示はいずれも地図がなければ見落としてしまいそうな存在感。川から離れると当然、想定深も低くなってくるので、3mになると、いわゆる電柱広告の上辺にテープが施されていたりするので、看板の一部と見紛う可能性が出てきて、益々存在意義が下がりそう。警戒水位然と緊張感を持たせてほしいところだが、こうした点も含め、まだ試行中、ということなんだろう。(ちなみに2m以下の場合は、青テープなし)
川から遠ざかるほど、想定深(水位)は低くなることはわかる。だが、避難場所への安全なルートの確保、となると、川から遠ざかれば済む、というものでもなさそうだ。つまり、周辺地図を広めに把握して、どこがどの程度の水位になるか、頭の中に等高線を描きつつ避難しないといけない事態が考え得るのである。電柱の標示(想定深)をポイントで知っておくのではなく(避難場所に無事辿り着けるルートを含め)、線で結んだ想定深を知るべし、ということだろう。
そこで、この範囲で実際に調べてみることにした次第。9月9日は、ワークショップ終了後、まずは環八通りの電柱を見分すべく徒歩で帰宅する。東本通りは、まち歩き地図で示された箇所のみ。赤羽岩淵駅近く(赤羽1-58)まで来て、ようやく3mの標示を発見。しかし、そこから先の環八通りでは、電柱が少ないことも手伝って、とうとう見かけず、赤羽ハウジングステージ近傍で再び3m標示に遭遇、といった具合。まぁ環八通りは、3mのラインということか。
店先の幟が標示を隠しがち。赤羽駅前は0.5m。 |
赤羽岩淵駅近くは3m。青テープが広告と一体化? |
こちらは赤羽駅の南口近く。1m。 |
東本通りの脇。赤羽の一大商店街「LaLaガーデン」付近は2m。 |
その後は、北赤羽駅付近で2〜3箇所を探し当て、あとは新河岸川沿い、という段になったのが、9月24日(日)。天気もいいので、散歩でもしながら探すか、と考えていたら、11時半に近い時分、消防車のサイレンが騒々しく集まりだしたので、まずビックリ。程なく、ヘリの轟音も近づいて来て、河川敷の方でその音がとどまっていることに気付き、「こりゃ一大事?!」状態。ともあれ自転車を駆って、音のする方角に向かった。
ヘリの出動に只ならぬ何か(テロ? 爆発?)を感じていたのだが、どうやら水難事故があった模様。ヘリは上空からの捜索のために出てきたようだ。現場は、新河岸川と荒川河川敷を結ぶ「中の橋」。詳しいことは結局わからなかったが、どうもこの橋から新河岸川に人が落ちて、浮上してこない云々で大騒ぎになったらしい。
中の橋からJR京浜東北線方面。救助艇とヘリ2機。 |
右の橋が「中の橋」。救助艇は2隻出動。 |
しばらく救助艇や潜水チームの動きを追っていたが、どうも進展がなさそうなので、ひとまずその場を去ることに。ヘリの旋回はずっと続いていたが、こちらは飄々と標識探しに入る。救命ボートを積んだ警察関係の車輌やら、水難救助専用と思しき見慣れない車が通り過ぎる中、赤羽3−29、3−40でそれぞれ3m、4mの標示を発見。(この2箇所、それほど離れていないのに、1mの差が生じている!) 大洪水発生時には、さっきの特殊車輌や救助艇がどれだけ役に立つんだろう?などと思いながら、川沿いに新荒川大橋(岩槻街道)へ。橋の基点から北本通り経由で、赤羽岩淵駅の交差点まで南下。メインストリートなのだが、標示は見かけなかった。第四岩淵小学校を周回し、先の4m標示電柱を経て、再び中の橋へ。まだ捜索は続いているようだ。(朝日新聞社の記者は見かけたが、目立った報道は特になかったから、何事もなかったのだろうか?)
3丁目29番地は3.0m。 |
3丁目40番地に来ると、一気に4.0m! |
下図の通り、地元の想定深は概ね把握できた。新荒川大橋の基点(交番「○に×」記号)から知水資料館・河川事務所の間(新河岸川沿い)の電柱が気になるところだが、74箇所全て探り当てようとも思わないし... 半径2km程度はいずれしっかり調べておくとしよう。
⇒住宅地図
・この地図上では、13箇所を表示。 の枠内の赤数字が想定深。 *アイコンをクリックすると、現場の画像が出てきます。
・同じ水位を線で結ぶと、等高線が描けなくもないが、ハザードマップ[PDF]で確認するのが早道か。
・筆者地元の避難場所は八幡小学校なのだが、この地図だと載っていない。(v_v) コンビニがアイコン表示で出ているのが救い。
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ここの青テープも広告の一部のような... |
詳細はwww.ara.or.jpへとなっているが、今はwww.ara.go.jpに変更。ヤレヤレ。 |
左と同じ電柱を反対側から撮影。電柱が際立っている場合は標示も目立つ。 |
今回の「荒川洪水防災講座」。単純な筆者は、まんまと意識触発に乗っかってしまった恰好である。ま、それは良しとして、「浸水想定深」を含むこの標示、何と呼んだらいいものか、それがわからないのが何とも。(普及啓発を進めるには、統一的かつ覚えやすいネーミングも大事な要素!)
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