随筆「東京モノローグ2004」(9−10月期)
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第171話 グリーン車がやって来た / 第170話 証明写真を撮るなら / 第169話 すぐに使える? 人名用漢字 / 第168話 青山ブックセンター

第171話 グリーン車がやって来た(2004.10.16)

 *今回は意図的に16日の掲載です。

 東海道線や横須賀線に乗ろうとして待っていると、目の前にグリーン車が停まってあわてることがある。ちょっと混んだ時間帯で、この憂き目に遭うとグリーン車を回避する乗客が前後の車両にどっと流入して、ラッシュに拍車がかかってしまう。グリーン車ほど、その中と外で格差が生じる代物はないだろう。恨めしそうに視線を送る人をどれほど見てきたことか。ホームにはご丁寧に、「グリーン車はこの位置に停まります」といった表示が出ているのが普通なので、入線まで時間がある時は、ゆったり回避できる。だが、やむなくあわてて乗車しないといけないこともある。そういう時に限ってなぜか現れるグリーン車。筆者にとってグリーン車は、鬼門のような、それでもどこか羨望の対象、そんな存在だった。

 新幹線など、よりクラスが上の列車の場合は、グリーン車の利用し甲斐が出ることも重々承知。割高な分、それに見合うサービスがついてくる、というごく明快な仕組み。だが、強面な人が乗ってたり、人徳と金回りが伴っていない倣岸不遜な客が同乗することもある。一部の招かれざる客のおかげで、サービスの質が損なわれるケースについては、第105話でも触れた通り。実際に乗ったことがないので、実情はいざ知らずだが、ブドウにありつけないキツネの如く、どうせイヤな思いをするだけさ、と遠巻きに見送る筆者である。

 そんな遠い存在であるグリーン車に、何とタダで乗れる機会がしばらく続いた。これはちょっとした事件だった。北の東海道線(?)、宇都宮線・高崎線にグリーン車が不意に出現した。10月16日のダイヤ改正後に本格導入するに当たってのプレイベントだそうな。

 何時何分の列車がグリーン車併結なのか、これは運だめしのようなもので、たまたま乗り合わせたらラッキーてなもの。少なくとも変則勤務の筆者にとっては、なかなかパターン認識がしにくい。出勤時間が固定している人は照準を合わせて利用できたことだろう。宇都宮線・高崎線の通勤客にはまたとない好機。上野から帰る際に何度か出くわしたが、いずれも満員盛況だったので見送った。ラッシュ状態になるグリーン車なんてのはこんな時くらいなものだろう。朝の上り、夜の下りで利用した人にとって、グリーン車の快適感がどこまで堪能できたかは"?"である。(うまく座席を確保できた人は、ゆったり通勤できる醍醐味を味わったはずだが、通路に人がいっぱいというのはちょっと。)

 無料体験は残念ながら昨日10月15日まで。16日からは予告通り、有料に。(⇒詳細 車内精算をできるだけ減らすためか、車内で買うと割高になるような設定になっている。予め券売機でSuica式でも磁気式でも買っておけば、安く乗れる。しかもSuicaグリーン券の場合は、天井にSuicaをかざす手間はあるが、ランプが緑色になっていれば車内検札がパスになるというおまけつき。じゃまされずに、まさにsuisuiでグリーン車の快適感を得られる訳である。(もっとも隣の客が不要領だったりすると、検札のバタバタで安眠妨害されるおそれはあるが。)

料金体系はこの表示の通り

16日から券売機でsuicaグリーン券が買えるようになった

 初発のPRリーフレットは、デビュー予告、料金体系、グリーン券発売駅案内、券の購入方法、利用方法程度、3つ折り6面だったが、改訂版は観音開きで8面。改訂版が追っかけで出ることも珍しいが、それだけ売り込みに力が入っているということだろう。初版をちゃんと見ていなかったので、 Suicaグリーン券の案内が新たに加わった?と勘違いしていたが、目玉のSuicaが載らない訳がない。無料期間中に、モニタリング調査を繰り返したのだろう。その成果が充実したQ&Aとなって、改訂版リーフレットに登場したのであった。おそれいった。

左:改訂版/右:初版

初めて乗ったグリーン車

 モニタリンググリーン車が登場して2カ月ほど経って、ようやく9月11日(土)、高崎線の2階建グリーン車に乗る機会を得た。時間があったので、赤羽〜上野とまず乗って、その折り返しで今度は上野〜浦和。グリーン車初体験だった訳だが、距離が短かったので、まさに試乗状態。それでも30分ほど揺られていたので、そのゆったり感は十分堪能できた。

 初乗車は、夜だったこともあって、Suicaグリーン券センサーの存在は気付かなかった。10月14日、通勤で赤羽から上野に向かう際、たまたま入線してきたのであっさり乗車。明るい車内を何となく見渡していたら、天井に張り付くSuicaのマークを発見した。9時台になると上りでもゆったりしたもの。いろいろ観察しながら撮影することができた。

室内灯の隣にsuicaのマーク

 

 そのセンサー、天井部に埋め込んであるんだからビックリである。身長の高低によって利便性に差がつくおそれもある。電車の中で天井に手を伸ばす行為は、せいぜい網棚に用がある時くらいだから、新鮮と言えば新鮮か。まぁ、席の脇とかだと間違って触れてしまった際に面倒だったり、読み取り装置が壊れてしまう可能性も高いから、リスクを避けて天井にしたんだろう。開発者各位のご苦労が偲ばれる。

 2階建グリーン車が停まっていると、携帯電話カメラで撮る人が7・8月は確かによく見かけた。が、だんだん珍しくなくなったようで、10月になると筆者が撮るのを模倣して携帯を取り出す人が時々いた程度。10月16日の正式デビュー時はどうだったんだろう。

 ともあれ、これで高崎線・宇都宮線も、東海道線・横須賀線に肩を並べた感じ。有料化に伴い、東京駅・品川駅同様、赤羽・池袋・新宿でも、湘南新宿ラインに乗る時は、グリーン車が停まる位置を確認してから待機しないといけなくなった。まぁ土日に50kmの範囲で遠出することがあったら、天井タッチを試してみる意味でも550円上乗せして乗り込んでみるのも良さそうだ。

  • おまけ

 去る10月11日の夜、福岡から羽田に向かうJAL機では、飛行機のグリーン車とも言える(?)「クラスJ」に乗り込むことができた。何せどんな割引運賃でも、1000円足せばいいだけなので、費用対効果はバッチリ。グリーン車の比ではない感じ。

 10月8日の夕方に対馬入りし、9日・10日と「島ゴミサミット・つしま会議」(⇒参照に参加、10日の午後は対馬西海岸の志多浦(したのうら)で、フィールドワーク(漂着ゴミの調査と収集)。11日は早めに福岡に戻り、和白干潟を見学したり、「しまづくりキャラバン」なるシンポジウム併催イベントに出たり。めいっぱいの3日間になることは承知していたので、21時過ぎに発つ飛行機では、ゆったりリラックスしながら、と決めていた。

志多浦海岸海流に乗って押し寄せる漂着ゴミの数々。漁網、漁具(フロート)、流木が目に付くが、数では発泡スチロール系、プラスチック系が圧倒的。(韓国、中国から流れてくる。)

和白干潟遠浅の干潟が広がる和白干潟。遠く、博多湾埋立工事の様子が見える。

 機内だとデジカメが使えないので、記録写真がないのが残念だが、快適なこと、この上なし。広めのシート、ロッキングチェアのような連動型リクライニング、手近な収納式テーブル...設計だけでなくデザインセンスもgood。ヘッドホンもちゃんとしたタイプで、流れてくる音楽もイイ感じ。席にいながら新聞を各種選べる上、何と10月末までは缶ビールがおつまみ付きでついてしまう。(銘柄も選べて、しかも特製ラベル!) 機内のビールは500円程度だから、実質500円でこのゆったりシートを満喫できたことになる。ただ、新幹線のグリーン車事例とはこのことか、通路をはさんで近くの席では、えらく態度の横柄な格闘家タイプの若者とやたら大はしゃぎしている連れの巨漢が座していて、迷惑千万。厚遇シートは、人を高慢にさせるもの。だが、きちんとバッドマナー例を画面で放映し、注意喚起するとともに、特に哄笑が絶えなかった巨漢に対しては、女性アテンダントが臆することなく声かけし、見事に制していた。良質な客にデメリットを与えない、さすがはクラスJと唸ったものである。グリーン車は果たしてこうした総合的なサービスが提供できるだろうか。

 

  • こちらもどうぞ...⇒ 座席に関する話題

第114話 禁煙席 / 第135話 隣席の憂鬱

 

第170話 証明写真を撮るなら(2004.10.1⇒5)

 デジカメのセルフポートレートモードで撮れば証明写真として使えなくもない。だが、プリントアウトして定型にカッティングしてなんて手間を考えると、街頭にある証明写真スタンドを使うのが早道だろう。街角にまだまだ点在しているのも堅調なニーズがあるからで、なぜこんなところに、という場所にあっても、時々利用している人を見かけて驚くことがある。

 筆者地元界隈でも、そこそこ見かけるのだが、案外うろ覚えなもので、いざ使おうとすると右往左往してしまったりする。歩きながら・探しながらは大変なので、6月頃、自転車で巡回して、当たりをつけておくことにした。結果、比較的大きなスーパー店頭にはだいたいあること、そしてそれぞれ個性があるから、使い分けもできることがわかった。だが料金は700円のものばかり。競争原理があまり働かないためだろうか。

 青山通勤時代、自転車で代々木駅近くを走っていたら400円というスタンドが現れて衝撃を受けた。第103話−11番の北辺り) その頭があるから、700円は安いとは思えず、そもそも1000円で散髪ができる時代なんだから、もっとコストダウンできるのでは、と難癖を付けたくなってしまうのである。

王子駅近くの証明写真スタンド 今は最寄の駅前にも1台あるのでいざとなればそこを使えばいいのだが、やはり700円。王子駅の近くでは500円(コインランドリー、トランクルームと多角経営なので、低価格が実現?)というのを見つけたが、何かのついででもないと、足が向かないところ。

 いわゆる写真屋(フォトショップ?)を利用した方が確実かつお得、ということもある。撮り直しが利く上、身だしなみもチェックしてもらえるので、700円では無理としても、例えば1000円で8枚とかなら(付加価値を加味すれば)納得である。

 急ぎで証明写真を利用することもなかったのだが、気になってきたので、分布とトレンドを調べてみることにした。(予告では早く打っていたが、下調べに時間がかかり、ようやくの掲載である。) 証明写真スタンドの所在地マップとか、先例があるだろうと思ってwebで探したのだが、どうにも見つからない。こうした比較情報がないため、たまたま通りがかったところで済ませるのが当たり前となり、つまり行き当たりバッタリの利用者が多いことを当て込んで、料金も高めになっているのでは? とそんな気がしてきた。要するに分布と価格がわかれば、健全な競争が生じ、価格も低めになっていくのではというのが仮説である。

 筆者の現・職場の周辺は、学生街・専門学校街という性格上、ちょっと自転車で走っていると、そこにもここにも、という印象を受ける。人通りがありそうな道路や角地などをひととおり調べてみたら、以下地図のようになった。(お近くにいらっしゃることがあれば、これを頼りにどうぞ。)

*楕円部分をクリックすると、スタンドの写真(外観)が出てきます。

御茶ノ水・水道橋・神保町エリア 証明写真スタンドマップ

A700:水道橋駅東口。神田川のリバーフロントスタンドといったところ。

B500:三崎町郵便局の前。入口に200円と書いてあるので、激安!と思いきや、それはロッカーのお値段。

C400:目立たない路地裏にあるが、価格で勝負。缶飲料の格安自販機が並んでいる場所でもある。

D500:神保町駅A7出口前。PRが少なく、ちょっと風変わりな感じ。

E400:神田すずらん通り、東京堂書店入口。C・E・Fは同じタイプであることがわかる。

F400:とちの木通りを歩き、男坂を下りる一角。このスタンドの主は写真スタジオ。いま一つメンテが行き届いていないのが残念。

G700:明大通り沿い、マクドナルドの入口。A〜Hの中で唯一、大通りに面している。

H700:御茶ノ水駅のお茶の水橋口。駅利用客の往来が激しいので、気が引ける。

 3駅で8カ所だから、それほど多くもないが、競争原理が多少は働くのか、どこも値ごろで、最低ラインは400円。あまり使わないかも知れないが、地元で相場価格で撮ることを考えれば、通勤の行き帰りにフラと利用するようにしたいところ。必要になりそうになったら、早めに準備しておこうと思う。

 だが、安さのウラには何かある。どんなふれこみになっているかも要チェックだろう。いろいろなパターンがあるので、細かく整理すると一覧表形式になってしまう。上記8つの中から、見出しで目に付くものを列挙すると、

・カラー/白黒 (黒白というのもあった)

・高画質 撮り直し可

・定規不要 ピッタリサイズ

・自然な描画(?)

・お好きな表情(?)が選べる

・キレイな証明写真

...


伊丹空港にあったスタンド

 てな感じ。バラエティ豊かな文言が並ぶが、最近の競争テーマは「何秒で仕上がるか」のようだ。これまでは1分間が当たり前だったはずだが、今回調べてみたら、20秒台が主流になっているようで、ちょっとビックリ。概ね700円=25秒が標準的のようだ。(ちなみに、大阪出張時に伊丹空港で見かけたスタンドも700円で25秒。) 実際に試してみないと何とも言えないが、最速はG700の20秒。筆者地元は「たったの23秒」となっていた。

 お安いスタンドは、やはり1分間を要するようで、料金はデカデカと大書する一方で、仕上がり時間はわざと目立たなくしている印象。逆に標準的なスタンドについては、料金は控えめ表示で、代わりに速さや美しさを前面に出している模様。きちんと料金も表示して、速さと美しさのためにこの料金、といった理由も堂々と併記してほしいものだ。もっとも御茶ノ水駅のH700などは天辺に¥700と出ているので、良心的だが。

 パスポート用、履歴書用、資格試験受験用...700円クラスでは、用途別にモードを選べるのが標準的だが、かつて利用した大小サイズ混在型というのは、残念ながら最近調査した中では見当たらなくなってしまった。利用が少なかったか、割に合わなかったか。

 意外なところでは、次のようなものもある。

  • 病院内の撮影スタンド

 証明写真用ではなく、カルテ・診察券用というのがまた病院らしい。そのうち無人レントゲン、無人CTスキャンなども出てきそう。


社会保険病院にあったスタンド

(余談)
 つい先月、社会保険病院で健康診断を受けたところ、胸部レントゲンの結果中、聞き慣れない名前の影(2カ所)云々、という所見が出ていて肝を冷やした。精密検査では、生まれて初めてCTスキャンを体験。1枚1枚チェックして、ひとまず無事が確認でき、正に胸をなで下ろした筆者である。過去に肺炎やら結核(に類する感染症)を起こした跡がキズ状の影になって現れるとのこと。最新の画像処理で、疑わしいものが強調されやすくなったため、アラームとして上がったんだそうな。何とも人騒がせな話だが、肺の傷つき具合がわかったので、それはよしとしたいところ。医師は「胸部レントゲンは肺の履歴書」と仰っていた。ごもっとも。

  • プリクラ

 解像度はいざ知らず、ちゃんと証明写真モードを備えているプリクラがあるそうな。100円プリクラを置く100円ショップがあるが、そこはさすがに証明写真は難しそう。だが、通常のプリクラで証明写真が撮れるなら、一般的な証明写真スタンドより格安だろう。筆者的には場違いだが、ゲームセンターでも行って検証してみるとするか。

 れっきとした証明写真用なのに遊びモードが撮れるものもある。300円と出ているので、随分お安い証明写真だなぁと思ってよく見たら、「こんな写真も撮れます」とある。ひっかかるところだった。(H700がまさにそれ。)

 皆さんのご近所の証明写真スタンドはいかがですか?

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第65話 同時プリント

 

第169話 すぐに使える? 人名用漢字(2004.9.15⇒18)

*東京モノローグ、おかげ様でまる7年が経ちました。記念すべき節目なのに、またしても掲載遅れ。w(--)w

 増えたり減ったりでちょっとした注目を集めている人名用漢字。審議会では当初、単に「常用平易」と認められるか否かの観点から選定したんだそうで、漢字の意味(人名にふさわしいか否か)については一切考慮しなかったというから驚き。(経緯はこちら

 使う人の判断でいずれ淘汰されるだろう、といった見通しもあったようだが、いくら何でもという字は除外され、ようやく落ち着いたようだ。まだ異論も残っているようだが、できるだけ文字を前向きに考えた結果ということだから、それはそれでいいと思う。すでに新しい漢字を使った出生届が出されていることだろう。

 人名用漢字の動きは、今年に入ってから急で、2月に「曽」、6月に「獅」が加わったと思ったら、一挙に増やす際のプレイベントとしてか、「瀧」「毘」「駕」の3文字を法務省が先行して追加。そして6月、現行の2232字から新たに578字増やす見直し案を公表となった訳である。(578字のうち、3字は先行確定分)*この時点で、+575

 7月23日、「人名にそぐわない」とパブリックコメントでの批判意見が100件以上あった9字を削除(−9)、一方で「掬」を追加することを決めた。(+1) まさに掬われた(救われた)?一字。

 575−9+1=567字に対し、先の9月13日、新たに79字を削除し、最終的に、計488字を追加することになった、というのが顛末。(この推移をまとめるのに結構手間取った。)

 常用、人名用漢字の両方を合わせ、計2928文字が人の名付けに使用できる。戸籍法の関係で、9月14日以降に生まれた新生児から新たな漢字が使用できるそうな。

 一覧表が出ているかと思い、インターネットで探ってみるも、なかなかこれというのが見当たらない。字の読み方を知らないと、すぐにフォントが引き出せないからだろう。使うための文字なのに政府系のホームページではPDFファイルでの紹介どまりで、テキスト抽出もNG。フォントが対応してない、文字化けしてしまうなどのトラブルを回避するための処置なのだろうか。無難な公表方法である。

 PCで文書を作る際などは、辞書ファイルと連動していないと使いにくい。各種辞書ファイルはダウンロードできるようになっているものの、今回の人名用漢字はまだまだ先になりそうだ。

 さて、ご存じ「人気のある名前のランキング」てのを見ると、案の定、スゴイことになっている。これはもう漢字テスト、漢字検定試験状態の域である。ただでさえ読み方の難しい、一ひねりした名前が増えている折りだが、今回の追加で、さらに複雑さが増すことは明白。幼稚園、保育園、児童館はじめ、こどもに関係する施設・機関・事業者などは相当の苦労を強いられそう。直接的でなくとも、こどもの名前と接する必要性が高い人は当分難儀することになるだろう。いずれは成人し、社会人になってくる訳だから、人事・総務担当や人の名前を呼ぶ職業の人も骨が折れることに。名前の読み方が社会的なロスになりそうなのは日本くらいなものか。

 少子化とは裏腹に、名前の多様性は広がっていく。人気のある名前に偏る傾向が続くのであれば、一定の難読人名をマスターすれば済むので、よしとしたいところだが、名前はオンリーワンであればあるほどいいはず(googleなどで、その人個人を特定できる検索をかけやすくするためにも)。人名の選択肢・多様性を活かしながらも、やはり読みやすさ、呼びやすさ、書きやすさ、伝えやすさを考え、かつ普遍性のある命名を、といきたいところである。人名用漢字が増えたことを機に、名前の付け方・あり方について社会全体で考えた方がいいように思う。

*余談だが、筆者が関わった、小学生向けの夏休み行事でも、海花(ウミカ)、那称(トモナ)、美沙希(ミサキ)、莉穂(リホ)といった女のお子さんの名前があり、読み方を確認するのにひと苦労だった。

 「最新名づけ傾向」にはもっと強力な名前の数々が。ここまで捻ると、親の趣味というか、マニア領域だろう。

 読み仮名のガイドラインでもできない限り、何かを申し込んだり、手続きをする際の用紙や書式には、読みは必須項目にしておかないと。


[特別付録]488字の人名用漢字について(活用法など)

  • 今回新たに加わった人名用漢字の中から使えそうな字をあえて選んでみた。ざっと以下のような感じ(?)。

岡誰頁頃其阪此匂韓芭袖柏枕庵犀笠厨幡撫濡狼雀菅貌蘇梶詣爪瓦挨筑拶播而篠喋宛蹴稽雁淵膳嶋溜烏柴鵜蒙梁錐鍋柿凄魯讃蹟裳毘畠蒲裾臼麓峯棲鷲鴨鱗盃蔭帖頓惚堺醍醐淀醒琵隈袴琶蜂菱洛幌芥鋸蜜駕恰埼淋叉捧馳粟埴瓜芯牡阜蓑桶廿槍寵峨巾鞍俣苔燕汝惹輿窪磐諏詫莫憐牟禰葺縞玩嘗纂蔓裡庇焚蕨漕藁釘弛綴函荻碗杵肴昏殆畿茸賑榎晒汎栃梯湊葡蟹仔糊羨疋蕎董曳柵堆駈撒蝦壬輯疏燭堰甥壕竿桁螺串杭按閃俄劫粥栖瓢樫硯箔舵鎧兜套杷薙坦纏圃枇灸酎舷掠轟牒鳶椀柘箕柑闇寓姪閏鷺砥櫓托些耽宕竺傭凧碓鋒萄斡卜錫戊珂蒐沫砦薗鍬湛萱跨佃蕪鼎撞竪沓砧塙沌畢閤釧冨禽葦蹄瀧桔雫浬埜檎椛珊禾湘桧哩祢孜樟娃煌絆遙橙萬曖檜凉蕾徠苺凛琥珀萠稟凰禮櫂實麒釉榮槇珈堯圓惺昊逞梛羚晄驍俐倶

(後方の字ほど頻度(常用度)が下がるため、読みにくくなってくる。筆者の漢字検定は今のところ2級だが、徠、惺、昊、驍は読めなかった。)

 *以下の漢字は字体に注意が必要。

薩逢鍵葛迦鞘杖祇梗茨釜櫛蓬榊辻辿兎樋樽煎槌芦逗挽灼灘籾楢漣豹繋莱鴎

  • 上記の範囲で、漢字を2つ組み合わせて新しい人名を考えてみた。

(女の子)

うらら:卜螺
かつら:葛螺
かのこ:珂鋸
けいこ:稽仔
こそで:此袖
こづえ:琥杖
さうす:叉碓
さつき:些撞
さやか:鞘迦
つかさ:柘笠
なつめ:梛爪
ほたる:圃樽
まり:萬俐
みさお:箕竿
みさき:壬埼
みすず:禰錫
もゆる:萠弛

(男の子)

しゅうと:蹴砥

しょうご:湘檎

しんじ:賑而

けんさく:鍵柵

りょうが:凉駕

 などが挙げられそう。(それなりに通用しそうな組み合わせを考えたが、かなりムリがある。) まぁ、新しい漢字だけで命名したい、という向きにはご一考あれ。(字画に基づく運勢はいざ知らず。)

 響きの良さそうな音読みの漢字が少ないのがネックだが、無理して読ませることで、何とか上記のようなリストアップができた。これは漢字の学習にはもってこいである。(名前の響きを重視する場合は、この488字、あまり使われないかも知れない。)

 街頭の落書きでおどろおどろしいのを時折見かけるが、それに近い世界である。思いがけない組み合わせでインパクトが生じる。文字の力、漢字の力を改めて思い知らされた。

  • 漢字一文字の命名だと、苺、兎、鴎、雫、菫、燕、蕾、遙、澪が引き合いに出されることが多いが、筆者流に列挙するなら...

庇(ひさし)

汎(ひろし)

頁(ぺーじ):男女を問わず使えそう?

哩(まいる):栖哩(すまいる)君てなのも出てきそう。

槇(まき)

湊(みなと)

冥、姪(めい):五月と書いてメイ(May)と呼ぶ場合もあるそうな。それよりはましかも。

椛(もみじ)

掠、羚(りょう):ちなみに、掠めるは「かすめる」と読む。

凛、稟、淋、鱗、憐(りん):淋はちょっと淋しいものが。

禮、澪(れい)

煉(れん)

芥(あくた):actorをめざすなら(?!)

浬(かいり)

駈(かける)

鼎(かなえ)

兜(かぶと)

絆(きずな)

砧(きぬた):きぬたの反対、狸(たぬき)は狐とともに落選。

厨(くりや)

頃(ころ):犬の名前みたいだけど。

芯(しん)

焚、托(たく)

辿(たどる)

 など、いくらでも出てきそう。

 苗字・姓についてはもともと制約がないようだが、人名の方は使える・使えないがあった訳で、思いがけず不便だったことがわかる。こうして一文字の漢字を書き出してみて、そう思った。今回の追加でかなりカバーされるようになったことは間違いない。

  • 珍名としては、

惹倶(じゃっく)
梁錐(はりきり)
殆(ほとんど):ほとんど意味不明。

  • 珍名で、特に職業柄(?)、命名されそうな予感があるのは、

喋(しゃべる)
鳶(とび)
跨(またぎ)

*この他、単独では難しいが、桶(銭湯)、灸(鍼灸師)、釘(大工)、鍬(農業)、硯(書道家)、鍋(金物屋)なども使われそうである。

 ちなみに「樽」が加わったので、例えば「栗栖」という苗字の人が、樽と命名されると、何と「クリスタル」になってしまう。(これが本当の「何となくクリスタル」?)

 大相撲ファンなら、モンゴルブームなので蒙の字を使いたいところだろう。(蒙太郎とか、蒙吉とか? 何かマンガの主人公みたい。) 韓流ファンなら、ズバリ韓の字を使えばいいことになる。(韓太、韓次? 安易だが。)

  • 使える漢字だが気を付けたい

刹:名刹、古刹で使う字だが、ちょっと間違えると大変なことに。
曝:これも怖い。ばくと読むだけならいいかも知れないが。
玩:訓読みは、玩ぶ(もてあそぶ)である。
已:己(おのれ)と巳(み・へび)の中間的な字。書き間違いのもとになるような字はちょっと...。
煤:あまり使いそうもないが使用可能。似た字で「煽」の方は落選。
牡:「〜お」と名付ける時には便利かも。だが、牝の方は削除されてしまった。男女共同参画になってない。

  • 使えそうだが、9月13日に削除されてしまった漢字

蛙:井中という苗字で、名前が蛙だと不都合なためか。
蟻:勤勉さの象徴だと思うのだが。シロアリのイメージが勝ってしまったか?
塵:芥が通っているが、塵はNGだった。芥塵(ごみ)が人名で使われるのを防ぐためか。
髭、剃:残しておいても特に支障はなかったような。隣り合っていたので、まとめて削除されてしまったようだ。
妓:舞妓で使われる字だが、あまりいい字ではないらしい?

 

 

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第61話 短縮形ネーミング / 第108話 社名表記 / 第124話 看板類の誤記・誤用など / 第147話 曲名の妙 / 第159話 加速する市町村合併

 

第168話 青山ブックセンター(2004.9.1⇒5)

*ここのところ、常勤職場(2つのNPO法人の事務兼任)の仕事がめいっぱいなのに加え、掛け持ちの作業(ホームページ、取材、レポート、Eメールニュースなど)も滞り気味。東京モノローグへの影響も大きくなってきた。さすがに5日も過ぎると調子が狂ってしまうが、何とかキャッチアップしようと思う。(掲載が遅れて、すみませんでした。)

 筆者が何となく馴染みにしていた書店、青山ブックセンターが思いがけず休業に入ってしまった。書店業界も大競争を展開している折り、淘汰が進んでいる表れと考えれば合点が行かなくもないのだが、「あの青山ブックセンターが!」という感じが強い。(何でもバブル期の投資が回収できなかったこと、ネット販売が軌道に乗らなかったこと、などが理由らしい。)

 積年の行動記録帳によると、東京に戻ってきた筆者が最初に青山ブックセンターを訪れたのは、1988年10月11日のこと。学生時代の2年半、派遣型の様々な仕事をさせてもらった広告代理系の会社にアルバイトの面接で訪れた日である。(随分と古い話になってしまった。) 当時、その会社事務所は六本木にあったため、面接の帰りにフラと青山ブックセンターに立ち寄った訳である。外国人の往来激しい六本木にあっては、こうした洋書が目立つ本屋があるのは当然の如く受け止めたが、深夜・早朝までの営業というのにはさすがに驚いたものである。

 その後、環境関係団体に何となく身を置いていた筆者は、環境系の情報交流・交換の場が増えるとともに、地球環境パートナーシッププラザ、日本環境協会 青山オフィスなど、青山本店界隈に出没する機会も増し、青山ブックセンターと言えば青山本店というのが常道になってきた。そして青山ブックセンターデビューから10年後、1998年の12月半ば、グリーン購入ネットワーク(GPN)への出向とともに、筆者の青山生活は始まる。青山本店と同じ建物(コスモス青山)・同じフロア(B2F)に通う日々を通じて、青山ブックセンターは、すっかりおなじみに。フルで書くのは面倒なこともあり、いつしか略称「ABC」で書いたり、伝えたり、になっていた。それだけ身近になっていた訳である。

 コスモス青山勤務は、足かけ3.5年。筆者が通っていた頃、ABCはワイン学校アカデミーデュヴァンともども華やいでいて、青山のインテリジェンスを象徴するような輝きがあった。(全面ガラス窓のディスプレイコーナーの出し物には、疑問を抱くものも多かったが、そこは「アートのABC」の面目躍如ということなのだろう。)

 コインロッカーがあったり、買い物用のカートがあったり、通路は広め、ジャンルの見出しも大きめ... ABCが持つ、もともとのセンスに加え、本店ならではの風格を感じた。サイン会やトークショーもマメに行われ、時には長蛇の行列を作っていた。(著名人を垣間見ることもしばしば。名物スポットである。) 洋物雑誌の品揃えが売りだが、環境関係の書物の充実ぶりも際立っていた。(「環境」を一大ジャンルに据える書店は実は多くない。) 「環境」の中でも、さらに細かく分類がされていたので、少しは環境通を自負していた筆者も「おそれいりやした」の一幕あり。ただ、この本はこう分類した方が...とか、何もこの本を前面に出さなくても...のような一人問答をすることも多く、それがまた一興になっていたようだ。GPN在職中は、手がけたデータブックの新刊が出ると、並び具合(売れ具合?)をよく見に行ったりもした。そのついでに、環境本を物色したり、環境コーナーに陳列してあった各種環境測定キットや、いわゆるエコロジーグッズを手に取ったり、環境トレンドを追うには格好の場であった。環境を仕事とする者にとって、こんなに好都合な書店はなかったのである。(環境グッズを図書券で買えてしまうのが、ABC本店のミソ?)

 仕事の合間にフラリと足を運ぶ。図書館が近くになかったので、ちょっとした調べ物(=立ち読み?)をしに行くこともあった。とにかく居心地が良く、気分転換には打ってつけだった。

 2002年5月末あたりから、再びコスモス青山勤務が始まった際も、ABCはまだ健在。だが、コピーショップが店外に移ったと思ったら、また引っ込んで来たり、何かあわただしい印象を受けていたのは確か。ジュンク堂書店に対抗してか、書棚の横にイスを置くようになったり、フロアを拡張してレイアウトをがらりと変えたりというのも前々から気にはなっていた。そして、筆者が青山を離れて1年が経った頃、今回のABC休業の報。(8月16日を以って、営業休止に。)

 よく考えてみると、来店することは多かったものの、実際に本を買ったり、ということはごく稀だったような... だが、そんな客が多かったのが休業した理由という訳ではないのが救い。民事再生法申請をしたとは言っても、営業ベースでは黒字だったようで。(バブルのツケがよほど大きかったということか。)

 さて、どんな感じで休業中なのか、様子を見に行くべく機会を探っていたが、なかなか身動きがとれず、ようやく8月28日(土)に、六本木(16時)→青山(17時)→新宿(18時)と各店見て廻ることができた。(偶然にもほぼ1時間刻みだった。)

  • 六本木店では、間違えて入りかける人が後を立たなかった。再開支援フェアに向けて、洋書を棚卸している最中だったため、店員が行ったり来たりで自動ドアが半開きになっていたせいだろう。フェアのチラシを受け取って、ホッとした表情を浮かべる人が多かったのが印象的だった。

  • 青山本店では、大部分の照明が落ち、扉も閉ざされていて、寂寥の感ありあり。かつての輝きが失せていた。9月29日再オープンの貼り紙がせめてもの救いだった。

コスモス青山の案内表示(ABCは[休業中]と付してある)

B2Fと言っても、外に面しているのがコスモス青山の特徴

もうちょっと美しく貼り出してもらえるといいのだが

  • 新宿店は8月1日にとっととブックファーストに衣替えしてしまっていて、威勢のいいことと言ったら。残念ながらブックファーストは「環境」コーナーなんてないから、実に凡庸な感じ。大競争を生き残るには、ABC的なこだわりは無用なのだろうか。(ABC新宿店にも何度か足を運んだが、ジャンル分けは本店と同じだったため、品格は保っていたように思う。)

 8月30日からは、再開に向けての支援フェアがスタート。9月1日(水)の夜、何とか都合を付けて、六本木店に行ってみた。ハリーポッターの新刊発売初日ということもあるのかも知れないが、待ってましたとばかりに次から次へとお客が来る。フェアは洋書・洋雑誌に限ったものだが、全品20%オフとあって反響は頗るいいようだ。本店のような通路のゆとりはないものの、カートはちゃんと置いてある。満載にしてカートを押す客に遭遇すると、あぁここはABCなんだ、と実感できる。(ありし日の本店の情景を思い浮かべながら、所狭しと動くカートをまじまじと見送る筆者であった。) ふと、見覚えのある顔の店員さんがいることに気付いた。青山本店からもスタッフが集まっているようだ。着々と再開に向けた準備が進んでいるようで、ひと安心である。

(お客が次々)

(店内を撮らせていただきました)

(ブルーはABCのテーマカラー)

 さすがにこの日は現金のみで図書券は使えなかったが、支援の観点からすればごもっともである。(なぜか、カードはOKだった。) 同伴の妻君は、ディック・ブルーナの絵本を買って、しっかり再開支援に協力。「9月29日に再開します。よろしく〜」とレジでは一人一人に声をかけている。そんな心意気もABCならではか。外国人客には余裕の英語で対応。ペーパーバックもその人の好みを察知して、すばやく解説。洋書に強いABCならではの光景がこの日も見られた。店員の資質や専門性をキープする上でも、このフェアは重要な意味がありそう。

 洋物ではなく、環境本が目当てだが、再開が待ち遠しいのは筆者も同じである。

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