第168話 青山ブックセンター(2004.9.1⇒5)
*ここのところ、常勤職場(2つのNPO法人の事務兼任)の仕事がめいっぱいなのに加え、掛け持ちの作業(ホームページ、取材、レポート、Eメールニュースなど)も滞り気味。東京モノローグへの影響も大きくなってきた。さすがに5日も過ぎると調子が狂ってしまうが、何とかキャッチアップしようと思う。(掲載が遅れて、すみませんでした。)
筆者が何となく馴染みにしていた書店、青山ブックセンターが思いがけず休業に入ってしまった。書店業界も大競争を展開している折り、淘汰が進んでいる表れと考えれば合点が行かなくもないのだが、「あの青山ブックセンターが!」という感じが強い。(何でもバブル期の投資が回収できなかったこと、ネット販売が軌道に乗らなかったこと、などが理由らしい。)
積年の行動記録帳によると、東京に戻ってきた筆者が最初に青山ブックセンターを訪れたのは、1988年10月11日のこと。学生時代の2年半、派遣型の様々な仕事をさせてもらった広告代理系の会社にアルバイトの面接で訪れた日である。(随分と古い話になってしまった。) 当時、その会社事務所は六本木にあったため、面接の帰りにフラと青山ブックセンターに立ち寄った訳である。外国人の往来激しい六本木にあっては、こうした洋書が目立つ本屋があるのは当然の如く受け止めたが、深夜・早朝までの営業というのにはさすがに驚いたものである。
その後、環境関係団体に何となく身を置いていた筆者は、環境系の情報交流・交換の場が増えるとともに、地球環境パートナーシッププラザ、日本環境協会 青山オフィスなど、青山本店界隈に出没する機会も増し、青山ブックセンターと言えば青山本店というのが常道になってきた。そして青山ブックセンターデビューから10年後、1998年の12月半ば、グリーン購入ネットワーク(GPN)への出向とともに、筆者の青山生活は始まる。青山本店と同じ建物(コスモス青山)・同じフロア(B2F)に通う日々を通じて、青山ブックセンターは、すっかりおなじみに。フルで書くのは面倒なこともあり、いつしか略称「ABC」で書いたり、伝えたり、になっていた。それだけ身近になっていた訳である。
コスモス青山勤務は、足かけ3.5年。筆者が通っていた頃、ABCはワイン学校(アカデミーデュヴァン)ともども華やいでいて、青山のインテリジェンスを象徴するような輝きがあった。(全面ガラス窓のディスプレイコーナーの出し物には、疑問を抱くものも多かったが、そこは「アートのABC」の面目躍如ということなのだろう。)
コインロッカーがあったり、買い物用のカートがあったり、通路は広め、ジャンルの見出しも大きめ... ABCが持つ、もともとのセンスに加え、本店ならではの風格を感じた。サイン会やトークショーもマメに行われ、時には長蛇の行列を作っていた。(著名人を垣間見ることもしばしば。名物スポットである。) 洋物雑誌の品揃えが売りだが、環境関係の書物の充実ぶりも際立っていた。(「環境」を一大ジャンルに据える書店は実は多くない。) 「環境」の中でも、さらに細かく分類がされていたので、少しは環境通を自負していた筆者も「おそれいりやした」の一幕あり。ただ、この本はこう分類した方が...とか、何もこの本を前面に出さなくても...のような一人問答をすることも多く、それがまた一興になっていたようだ。GPN在職中は、手がけたデータブックの新刊が出ると、並び具合(売れ具合?)をよく見に行ったりもした。そのついでに、環境本を物色したり、環境コーナーに陳列してあった各種環境測定キットや、いわゆるエコロジーグッズを手に取ったり、環境トレンドを追うには格好の場であった。環境を仕事とする者にとって、こんなに好都合な書店はなかったのである。(環境グッズを図書券で買えてしまうのが、ABC本店のミソ?)
仕事の合間にフラリと足を運ぶ。図書館が近くになかったので、ちょっとした調べ物(=立ち読み?)をしに行くこともあった。とにかく居心地が良く、気分転換には打ってつけだった。
2002年5月末あたりから、再びコスモス青山勤務が始まった際も、ABCはまだ健在。だが、コピーショップが店外に移ったと思ったら、また引っ込んで来たり、何かあわただしい印象を受けていたのは確か。ジュンク堂書店に対抗してか、書棚の横にイスを置くようになったり、フロアを拡張してレイアウトをがらりと変えたりというのも前々から気にはなっていた。そして、筆者が青山を離れて1年が経った頃、今回のABC休業の報。(8月16日を以って、営業休止に。)
よく考えてみると、来店することは多かったものの、実際に本を買ったり、ということはごく稀だったような... だが、そんな客が多かったのが休業した理由という訳ではないのが救い。民事再生法申請をしたとは言っても、営業ベースでは黒字だったようで。(バブルのツケがよほど大きかったということか。)
さて、どんな感じで休業中なのか、様子を見に行くべく機会を探っていたが、なかなか身動きがとれず、ようやく8月28日(土)に、六本木(16時)→青山(17時)→新宿(18時)と各店見て廻ることができた。(偶然にもほぼ1時間刻みだった。)
8月30日からは、再開に向けての支援フェアがスタート。9月1日(水)の夜、何とか都合を付けて、六本木店に行ってみた。ハリーポッターの新刊発売初日ということもあるのかも知れないが、待ってましたとばかりに次から次へとお客が来る。フェアは洋書・洋雑誌に限ったものだが、全品20%オフとあって反響は頗るいいようだ。本店のような通路のゆとりはないものの、カートはちゃんと置いてある。満載にしてカートを押す客に遭遇すると、あぁここはABCなんだ、と実感できる。(ありし日の本店の情景を思い浮かべながら、所狭しと動くカートをまじまじと見送る筆者であった。) ふと、見覚えのある顔の店員さんがいることに気付いた。青山本店からもスタッフが集まっているようだ。着々と再開に向けた準備が進んでいるようで、ひと安心である。
(お客が次々) |
(店内を撮らせていただきました) |
(ブルーはABCのテーマカラー) |
さすがにこの日は現金のみで図書券は使えなかったが、支援の観点からすればごもっともである。(なぜか、カードはOKだった。) 同伴の妻君は、ディック・ブルーナの絵本を買って、しっかり再開支援に協力。「9月29日に再開します。よろしく〜」とレジでは一人一人に声をかけている。そんな心意気もABCならではか。外国人客には余裕の英語で対応。ペーパーバックもその人の好みを察知して、すばやく解説。洋書に強いABCならではの光景がこの日も見られた。店員の資質や専門性をキープする上でも、このフェアは重要な意味がありそう。
洋物ではなく、環境本が目当てだが、再開が待ち遠しいのは筆者も同じである。
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