第126話 埼京線、南へ(2002.12.1)
営団地下鉄南北線の南進・北進については、第86話などで綴ってきた。南北線の動向と競うような動きを見せていた埼京線だが、南北線の南進に遅れること2年2カ月。ようやく池袋〜大崎までが埼京線でつながった。田端〜品川の山手線東側は、京浜東北線が日中は快速運転になるので、限られた時間ながら南北間の移動は容易だが、山手線西側の南北移動はこれまでちと不便だった。この埼京線の並行運転で、西側の南北間の移動はさらに楽になり、池袋・新宿・渋谷の三都心に向かう人の流れもより勢いづくだろうと思われる。(こうなると、この部分は埼京線というよりも、山手新線という感じ。)
第74話でも書いたが、当初、埼京線の延伸計画では、渋谷の次は、目黒・五反田・大井町、という停車駅案もあったようだ。それが全く逆転し、恵比寿と大崎が優等列車停車駅になってしまったのだから予断を許さない。
これは第109話で紹介した、小田急線江ノ島線の中央林間、湘南台の格上げに似た印象を受ける。後発で駅周辺開発が進んだところの方が、新系統や新列車導入時は有利に働くようである。
筆者が北赤羽に移ってきて6年と8カ月。埼京線が南に延びることの期待感もあって、埼京線沿線を選んだのだが、恵比寿までは早々に延びてメリットを享受できたものの、その後は本当に待たされた。
かつての出勤時、恵比寿駅で乗り換えて品川方面に向かう時は実に苦痛だった。ホームが狭いため、階段も狭く、特にラッシュ時の乗換階段での行列には泣かされた。(階段の下に来る車両の扉付近だけ異様に混んでいるのは、乗換階段での行列を避けるためである。)
逆に帰途にも難があった。恵比寿駅で始発の下り列車を待つのだが、埼京線は昔から大崎が始発駅のようなものだったから、発車時刻の1〜2分前にならないと恵比寿駅に入線してこないのだ。始発駅なのに列車を待たされるというあまり愉快でない事態がこれで解消されることになる。(解消とは言っても、始発列車そのものが解消されてしまう訳だから、これまでの恵比寿始発利用者にとっては痛手だろう。)
北赤羽駅にりんかい線の車両が行き来するようになるのは夢のよう。特に下り列車は、お台場の潮風を運んできてくれるような気がして、爽快である。
これまでの埼京線の車両は完全にワンパターン(もちろん、女性専用車両や6扉車など、車両編成のバリエーションはあったが)。井の頭線のようなカラーバリエーションや小田急線のような白やらステンレスやらの多様性は期待できなかっただけに、りんかい線が入って来るのは何ともうれしい話である。
上りの行先(地図上では下りだが)が豊富になるのがまたうれしい。大井町、品川シーサイドへ一本。天王洲アイルではモノレールにアクセス。そしてお台場の玄関口「東京テレポート」、東京ビッグサイトの最寄駅「国際展示場」、いずれも一足で行けるようになる。運賃が高い点はこの際、目をつぶるとしよう。
埼京線とりんかい線がつながった初日の12月1日、出遅れたが新規区間の試乗に出かけた。まずは赤羽を12:52に出る快速、新木場行きに乗る。(日中は、北赤羽から新木場へ直通する各駅停車はないので、赤羽で乗り換えた。) 初日なのでいろいろあったのだろう。2分遅れで到着。好都合なことに、りんかい線オリジナルの車両が来たので、ありがたかった。(きっと、見慣れない客が多かったため、乗り降りに円滑さを欠き、遅れたんだろう。)
初日人気のせいか、何となく混雑している印象を受けたが、いつも通り、池袋で降り、新宿で降り、という客は多く、ただ逆に乗ってくる客も多かったのがいつもと少々異なる程度。こっちは池袋、新宿と下るにつれ、どんどん乗客が増えると見込んでいたので、いささか拍子抜けだった。
ターミナル駅のホーム先端には、案の定、カメラを持った人・人...。停車中は外に目を遣るとフラッシュを浴びる始末。午後にさしかかっていたのでこんな程度で済んだのだと思うが、午前中はもっと多かったに違いない。運転士の人はさぞ大変だっただろう。
大崎駅から先は新線部分。どこから地下に入るかとキョロキョロしていたら、程なくしてスッと潜り込んでしまった。2分遅れを引きずったまま、大井町に到着。地下5階分という深さはあまり感じなかった。大井町からは大きな直角カーブが待っているが、あまり曲がり具合は感じさせず、順当に品川シーサイドに。ここから天王洲アイルまでは、今度は北へ向け直線を快走。大崎からここまでたったの7分。どうせならこのまま終点まで乗って行っても良さそうなのだが、新規開業部分の天王洲アイルまでにして、おとなしく引き返すことにした。
反対側のホームで待っていたら、6両編成の新木場発のりんかい線がすぐにやって来た。何となくガランとしていたが、次の品川シーサイドからは結構お客が乗り込んで来る。この調子で乗客が増えるか、と思っていたら、その次の大井町で、品川シーサイドからの客がそのまま降りてしまったような感じで、またまたガランとした状態に。要するに、品川シーサイド周辺の住民が買い物等で出かける先は、近在の青物横丁(京急)ではなく、大井町だったが、これまで利用していたバスに代えて、今日からりんかい線を使うようになった。そんなことを示しているようだ。(もちろん、品川シーサイドの駅上には、ジャスコをはじめとする新しい商業施設がオープンしたので、わざわざ大井町に出なくてもいい筈なのだが。)
大崎駅に戻ってきて、じっくり番線の割り振りなどを調べることにした。新たに開設された埼京線などのホーム(5〜8番線)は、方面別に乗り換えできるが、大崎止まりの埼京線が5番線に入ってくると、その隣のホーム(6番線)には新木場行きのりんかい線が待機し、横浜方面からの湘南新宿ラインが8番線に着くと、やはりその隣のホーム(7番線)には新木場行きのりんかい線が待機する、といった乗り換えパターンになっているようだ。新木場方面への乗客の利便性を優先した結果と言えるが、これとは離れた山手線ホームからの乗り換え客は、新木場行きの番線が安定しないから翻弄されるかも知れない。
乗ってきてわかったことだが、りんかい線のみを往復する列車は6両編成が中心。埼京線との直通は10両編成。これですでに4両分の差がある。さらに、湘南新宿ラインは最長で15両。湘南新宿ラインの先頭や最後尾に乗った客がりんかい線に乗り換えようとすると、15両−6両=9両分も差があるから、うかうかしてると乗りそびれてしまいそうだ。(地下鉄表参道駅の銀座線と半蔵門線の並行ホームだが、ここも車両数に大差があるので、誘導案内が大書されている。)
それにしても、大崎駅からの下りの行先の多様なこと(↓)。京成線高砂駅の西方面(金町・印旛日本医大・京成本線の3方向)を想い起こさせる。
さて、今回の埼京線の大幅ダイヤ改正が駅構造に如実に反映されているのが新宿駅である。11月30日まで、
↑こんな感じで入り組んでいたのが、12月1日から、
色分けした形でスッキリ表示されるようになった。湘南新宿ラインは、(南へ向かう)国府津や逗子行きは全て1・2番線、(北へ向かう)籠原や小金井行きは全て3・4番線にすっきり分かれたようだ。ただし、大崎駅同様、車両編成にバラつきが出るので、15両が来ると思って、ホームの端っこで待ってたりすると、10両編成の埼京線やりんかい線に乗りそびれる、なんてハメになる。注意したい。
上りと下りの区別が確かに明確にはなった。しかしながら、埼京線下りの始発列車は相変わらずあっちこっちの番線から出るようで、この時も大崎方面の1番線に大宮行きの始発列車が入っていた。また、成田エクスプレスは渋谷方面に走るので1・2番線に来そうなものだが、上り・下り問わず、3・4番線が成田エクスプレス用に供用されているのは以前と同じ。完全にスッキリさせるには始発専用のホームを作るなどしないとダメそうである。
今回の埼京線+りんかい線の直通によって、最長路線は川越〜新木場に。新木場から西、京葉線に直通させれば、正に首都圏大動脈になるのだが、そうはならなかった。例えば新宿と海浜幕張を往復する通勤客がいるとする。【新宿−(中央線)−東京−(京葉線)−海浜幕張】のJR線経路の定期券があれば、【新宿−(埼京線)−大崎−(りんかい線)−新木場−(京葉線)−海浜幕張】の経路をタダ乗りできてしまうことになる。直通運転すると、りんかい線部分のチェックが働かないので、同線の定期券収入が減る、とかの理由で見送られてしまったそうな。お台場で途中下車できる魅力が上回れば、正しい経路で定期券を買うと思うのだが、何だか性悪説を前提にしたような話で配慮に欠ける。仮に直通運転することによる経済効果の方が、りんかい線の巨額負債を上回ることになるなら、ここは政治的判断を以ってしても実施すべきではないだろうか。新宿からディズニーランドや幕張メッセに一発で行けるとなれば人の流れも大きく変わると思うのだが。(幕張からお台場や天王洲アイルにアクセスできる意味も小さくなかろう。)
第115話では乗降駅数が1200を超えたことをお伝えした。その後も着々と駅数を増やして、11月17日までに1240駅まで到達した。今回のりんかい線の新駅となる、大崎、大井町、品川シーサイドも早く加えて、年内には1243駅にしようと思う。
第124話(番外)で記した所要時間(分)の表示だが、今回めでたくリニューアルされて、このようになった(⇒ここをクリック)。通勤快速と快速の所要時間のねじれは変わっていないので、やはり戸田公園で乗り換えると快速の方が速い、ということなのだろう。 |