第417話 2015年3月ダイヤ改正概説(前編)(2015.1.17)
今春のJRグループのダイヤ改正日は、2015年3月14日(土)。今回のダイヤ改正は、前々から何度となくリリースが出ていた2大テーマ、北陸新幹線(長野〜金沢開業)と上野東京ライン(東北縦貫線経由直通列車)の開業を筆頭に、さまざまな変化が目白押しで、例年にないインパクトがある。重量級の改正と言っていいだろう。
筆者としては、北陸新幹線もさることながら、やはり上野東京ラインである。今の通勤ルートに関わることもあり、待ってました!の一大事。あと2か月で開業というのが信じ難いくらいである。
とにかく情報がてんこ盛りなので、自分なりにまとめてみようと思い立った。JRの本州3社(東日本・東海・西日本)、北陸新幹線延伸開業と引き換えに経営分離される区間を受け持つ三セク各社について、その概要やポイントを綴ってみる。何らかの参考にしていただければ幸いである。(まとめていたらあまりに長くなってしまったので、前編・後編に分けることにした。前編は、新幹線、寝台特急、在来線特急、首都圏在来線その1とし、後編は、首都圏在来線その2、北陸・信越エリアの在来線、その他のエリアの在来線、企画乗車券関係などを予定。)
1.新幹線
北陸新幹線の長野〜金沢間228.1kmが、1998年3月の着工から足かけ17年を経て開業する。同延伸区間の新幹線駅としては、飯山、上越妙高、糸魚川、黒部宇奈月温泉、富山、新高岡、金沢の7駅が設けられ、黒部宇奈月温泉駅と新高岡駅は新駅として開業する。並行する在来線区間は、4つの三セク会社に引き継がれ、上越妙高駅はしなの鉄道、糸魚川駅はえちごトキめき鉄道、富山駅はあいの風とやま鉄道、金沢駅はIRいしかわ鉄道と連絡。また、黒部宇奈月温泉駅は富山地方鉄道の新駅、新高岡駅はJR城端線とそれぞれ接続する。現在の信越本線の脇野田駅は、新幹線駅側に移設済み。3月14日、えちごトキめき鉄道の上越妙高駅になる。
北陸新幹線の運行体系は4つ。列車名と運転区間は、速達タイプの「かがやき」が東京〜金沢間で1日10往復、停車タイプ(停車駅多め)の「はくたか」が東京〜金沢間で1日14往復、長野〜金沢間で1日1往復、「シャトルタイプ」の「つるぎ」が富山〜金沢間で1日18往復(1時間あたり1本)、「現長野新幹線タイプ」の「あさま」が東京〜長野間で1日16往復走る。東京〜長野間の運行本数は、現在の新幹線よりも5割ほど増え、富山〜金沢間の運行本数は、現在の在来線特急列車とほぼ同程度になる。
列車名の「かがやき」と「つるぎ」は、往年の列車で使われており、今回復活することに。「かがやき」は、1988年から1997年まで上越新幹線の連絡特急として金沢〜長岡間を走った特急の名称、「つるぎ」は、立山連峰の剱岳(つるぎだけ)が由来で、大阪〜富山間の夜行列車の名称として使われていた。(1972年に寝台特急に格上げ後、1996年まで運転。)
「かがやき」の途中停車駅は、上野(一部通過)、大宮、長野、富山の各駅で、群馬県、新潟県内の駅には停車しない。「はくたか」は「停車タイプ」としているが、熊谷駅、本庄早稲田駅には停車しない(高崎〜上田間、飯山も一部は通過)。
「かがやき」は、最短で東京〜金沢間を2時間28分で、東京〜富山間を2時間8分で結ぶ。東京〜金沢間は現行よりも約1時間20分の短縮になる。特急料金は、いずれも大人普通車指定席で、東京〜金沢間6,780円、東京〜富山間6,250円など。運賃と合わせた金額は、東京〜金沢間14,120円、東京〜富山間12,730円になる。(上越新幹線と特急「はくたか」を使った現在の最速ルートでは、東京〜金沢間13,050円、東京〜富山間11,910円。) 使用する車両は、現在運用中のE7系のほか、JR西日本所属のW7系が登場。E7系同様12両編成で走る。「あさま」の一部には8両編成のE2系が引き続き運用される。
運転初日(2014.3.15)に地元で撮ったE7系 |
王子駅の隣を走るE7系(北とぴあ展望階から撮影) |
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「Maxたにがわ」も大きく減る可能性大。逆に「かがやき」「はくたか」が登場し、「長野新幹線」の表記は、いよいよ「北陸新幹線」に。(写真は、大宮駅で撮った発車案内) |
また、「かがやき」は6月末までの毎日、「はくたか」は平日にそれぞれ臨時列車が走る。臨時の「かがやき」は3往復し、うち1往復は、地元から「かがやき」停車の強い要望があった新高岡駅に停車する。臨時の「はくたか」は上越妙高駅から長野駅まで朝時間帯に2本運転される。上越新幹線の「とき」と「たにがわ」などは、北陸新幹線金沢開業を受け、運転本数が減る。(「たにがわ」では、車内販売も3月13日で終了。)
東海道新幹線では、「のぞみ」の一部列車で最高時速が270kmから285kmに引き上げられる。東京〜新大阪間は3分の短縮。「のぞみ」の下り最終列車は東京駅21時23分発に3分繰り下げられ、新大阪駅まで最速の2時間22分で結ぶ。早朝の下り列車では、名古屋駅での接続改善が行われる。東京駅6時00分発で「のぞみ」→「ひかり」→「しらさぎ」を乗り継いだ場合、福井駅には9時14分に到着。北陸新幹線「かがやき」の下り初列車は、東京駅6時16分発、金沢駅8時46分着。「サンダーバード」への乗り換えで、9時45分に福井駅に着く。
2.寝台特急
寝台特急では、大阪→札幌間約1,496km(札幌→大阪間は約1,508km)を結ぶ「トワイライトエクスプレス」が、上り下りとも3月12日(木)(始発駅基準)に営業運転を終了。ダイヤ改正日当日の運転はない。
西金沢駅でたまたま遭遇した「トワイライトエクスプレス」。ご縁があったのはこの時くらい。(2010.2.12) |
上野駅13番線を発車する「北斗星」。臨時列車としてはまだ残るとは言え、いずれはこのシーンも見納めになる。 |
上野〜札幌間を結ぶ「北斗星」は、3月13日(金)に定期運転を終え、その後、8月下旬頃まで臨時列車として運転を続ける。
「北斗星」は、東北本線、函館本線などを経由し、上野〜札幌間の約1,215kmを約16時間半かけて走る寝台特急列車。JR発足後の1988年に運行を開始した。編成は、24系25形客車と電源車1両の12両。客車は、A寝台1人用個室「ロイヤル」、A寝台2人用個室「ツインデラックス」などがあり、食堂車も併結している。牽引する機関車は、上野〜青森間がEF510形、青森〜函館間がED79形、函館〜札幌間がDD51形。
当初の定期列車は2往復だったが、2008年のダイヤ改正で1往復に。2014年3月、「あけぼの」の定期運転終了後は、唯一のブルートレイン定期列車となった。車体の老朽化に加え、走行区間の青函トンネルなどで、北海道新幹線の試験走行と重なり、ダイヤの調整が困難になったため、定期列車の運転終了が決まった。今回の3月ダイヤ改正により、ブルートレインによる定期列車が全て姿を消すことになる。
筆者が「北斗星」に乗ったのは、1988年9月2日。函館を21:46に発車する「北斗星2号」だった。(東北本線の一部区間が不通だったため、奥羽本線を経由。2時間以上到着が遅れ、特急料金が返って来たというエピソードつき) |
当時の函館駅はこんな感じ。「はるばる来た〜」というのがピッタリな佇まいだったのを憶えている。 |
「サンライズ出雲」は、備中高梁駅に停まるようになる。岡山から先、下り列車の停車駅は、倉敷、備中高梁、新見、米子、安来、松江、宍道、出雲市になる。
なお、青森〜札幌間の寝台急行「はまなす」は、引き続き運転される。
今まで通過していたのが不思議な気もする備中高梁駅(2012.11.4 伯備線の道中で撮影) |
東京駅を22時ジャストに発車する「サンライズ瀬戸・出雲」(第412話の旅を終え、東京駅に着いた時に撮影) |
3.在来線特急
3月14日(土)、「上野東京ライン」の開業にあわせて、常磐線特急も変わる。いわき駅方面と東京駅、品川駅方面との直通運転を開始し、74本中44本の常磐線特急列車が、品川駅発着になる。停車駅も見直され、大津港と植田には停車しなくなる。あわせて、列車名も再編。速達タイプの「ひたち」、多くの駅に止まる停車タイプの「ときわ」の2種類になる。(北陸新幹線で設定される「かがやき」が「ひたち」、「はくたか」が「ときわ」に相当する。) 「ひたち」と「ときわ」に列車名が集約されることで、現行の「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」の名称はなくなる。(「スーパーひたち」「フレッシュひたち」の運転は、3月13日まで。)
券売機で表示される常磐線特急列車の停車駅一覧(例)。3月14日からは、東京、品川が加わる。(勝田駅で撮影) |
上野駅に大きく掲げられている「ひたち号」の停車駅案内。今回のダイヤ改正で列車名と停車駅が再編される。 |
「スーパーひたち」と「フレッシュひたち」は見納め |
上野駅には、常磐線特急列車用ホーム(16・17番線)に通じる専用改札がある。品川駅を発着する特急列車が設定されると、この改札口の扱いも変わることが予想される。 |
運転区間は最長で、いわき〜品川間の約222km。品川駅発着分は、データイムの全列車と、夕方、夜間の一部列車が対象で、上り(南行)の「ひたち」については、全列車がいわき〜品川間の運転になる。
特急「ひたち」は、上野〜東京間に在来線の回送線があった期間のうち、1971年4月から1973年3月まで東京駅に乗り入れていた。列車名としての「ときわ」は、準急や急行などでかつて使われており、急行「ときわ」は、1966年3月から1985年3月まで運転していた。「ひたち」の東京駅乗り入れ、列車名の「ときわ」、ともに2015年に復活することになる。
「ひたち」と「ときわ」の運転開始にあわせて、両特急列車に新しい着席サービスが導入される。普通車の指定席、自由席の区分がなくなり、代わりに、事前に特急券を購入することを前提とした料金体系に。通常期、繁忙期の区分もなくなる。従来の指定席特急券、モバイル端末を使った「えきねっとチケットレスサービス」での予約を通じ、全席で座席の指定が可能になるほか、座席を指定しない特急券「座席未指定券」(乗車日と区間のみを指定)も設定。使用するE657系の車内の座席の上には、その座席の発売状況を示すランプが設置される。
現行では、100kmまでの指定席特急料金は1,450円(自由席は930円)だが、事前購入時は1,000円に。このほかの事前料金は、50kmまでが750円、150kmまでが1,550円。車内購入時は、事前料金に一律260円を加算した額になる。グリーン車の料金も変わる。また、同特急列車自由席用の「定期券用月間料金券」廃止に対応した割引制度として、特急「ひたち」「ときわ」で利用可能な「定期券用ウィークリー料金券」が新たに設けられる。
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常磐線特急に関係する特別企画乗車券は、発売終了へ。「定期券用月間料金券」は、ひと足早く2月14日に発売が終わる。 |
このほか、JR東日本の特急列車で料金制度が変わるのは、「スワローあかぎ」と「成田エクスプレス」。
昨年の2014年3月ダイヤ改正時に、指定席料金と自由席料金の中間の額に設定した「スワローあかぎ料金券」を導入した特急「スワローあかぎ」では、同料金券が廃止に。常磐線特急列車と同じ料金制度・体系に変更され、座席未指定券も発売される。座席未指定券は、特急「成田エクスプレス」でも発売。ただし、満席時に発売する立席特急券はなくなる。
かつて「スーパーひたち」などで活躍した651系。今は「スワローあかぎ」などで運用中。 |
「スワローあかぎ料金券」の券売機も仕様が変わることになる |
千葉・房総方面の特急列車は縮小方向。「わかしお」「しおさい」「さざなみ」は運転本数が減り、「さざなみ」については運転区間も短縮(東京〜君津間に)。東京〜佐原間の「あやめ」は定期運転を終了する。
券売機で「あやめ」が表示されるのは、3月13日まで... |
そして、岩井駅(→駅ログ)で「さざなみ」を見ることもなくなる |
関西では、「きのさき」と「こうのとり」が、福知山〜豊岡間では臨時列車に。北陸本線や信越本線などを走る特急列車は、北陸新幹線の長野〜金沢間開業に伴い、一変する。
金沢発着の特急列車として、IRいしかわ鉄道の金沢駅と七尾線の和倉温泉とを結ぶ「能登かがり火」(1日5往復)、北陸本線の金沢〜福井間を走る「ダイナスター」(1日3往復)が新たに登場する。
「能登かがり火」は、キリコ祭りなど、火や灯りにまつわる夏祭りが能登地方に多いことから命名。火と結び付いた能登の幻想的な風景や、かがり火の燃え盛る勢いをイメージしている。「ダイナスター」は、福井県立恐竜博物館など、同県の観光資源として恐竜の人気が高いことから名付けられた。恐竜の英訳「ダイナソー」(dinosaur)に、期待の星を表す意味での「スター」を組み合わせたネーミング(造語)。列車名としては新しいが、車両は現行のまま。両特急列車とも、特急「サンダーバード」と同じ681系・683系車両が使われる。
北陸本線を走る特急列車では、その「サンダーバード」が金沢〜富山・魚津間で、「しらさぎ」と「おはようエクスプレス」は金沢以東での運転がそれぞれなくなる。
2004.6.24、高岡駅ホームで撮影。当時は寝台列車も含め、実に多様な列車が高岡駅を行き交っていたが、今春のダイヤ改正で、在来線特急は走らなくなる。 |
2010.2.10、富山駅にて。「北越」の文字を見ることはなくなる。 |
七尾線の羽咋駅(→駅ログ)にもさまざまな特急列車が入っていたが、ここに掲げられている中で残るのは「サンダーバード」のみに |
「しらさぎ」も「サンダーバード」も富山行きはなくなる...(2010.2.11 金沢駅にて) |
北陸・信越エリアをまたぐ特急列車では、金沢〜新潟間の「北越」、金沢〜越後湯沢間の「はくたか」が廃止に。津幡〜直江津間での在来線の特急列車の運転がなくなることになる。
特急「北越」は1969年、大阪〜新潟間を結ぶ臨時列車としてデビュー。1970年に定期列車化した後、運転区間、運転本数を変えながら存続し、1997年に現在の新潟〜金沢間の運転になった。車両は当初より485系が運用され、現在は485系1000番台と485系3000番台を使用している。3月13日の「北越」廃止により、新潟車両センターに在籍する485系は、定期列車としての運用が終わる。JR東日本管内での485系車両による定期特急列車は、「白鳥」のみになる。
現行の特急「はくたか」は、1997年、北越急行ほくほく線の開業に合わせてデビュー。当初は最高時速140kmで運転していたが、2002年にほくほく線内での最高時速を160kmとし、新幹線を除く在来線の列車で、国内最高速度での運転を始めた。車両は、北越急行の681系「スノーラビット」と683系、JR西日本の681系「ホワイトウイング」の3種類。9両編成の運転時は、各種の6両編成と3両編成を組み合わせて運用している。東京と北陸方面を結ぶ最速ルートとして、上越新幹線と「はくたか」の乗り継ぎが定着し、北越急行の黒字経営を支える特急列車だったが、北陸新幹線の金沢開業により遂に廃止に。「はくたか」の列車名は、北陸新幹線に継承される。
新潟〜上越妙高・新井間では、新たに「しらゆき」が新設。えちごトキめき鉄道(妙高はねうまライン)を経由する特急として、1日5往復(うち、新潟〜新井間は2往復)走る。
「しらゆき」は、常磐線の特急車両E653系をリニューアルして運用。外観は「アイボリーホワイト」を基調に、紫紺の帯と朱色の線を配したデザインになった。E653系1100番台として4両編成4本が投入される。
新幹線と在来線特急列車とを乗り継ぐ場合の料金割引制度では、上越妙高駅と金沢駅が乗継割引の対象駅に追加される。上越妙高駅で、特急「しらゆき」と北陸新幹線に乗り継ぐ場合は、在来線区間(新潟〜直江津間)の特急料金が半額になる。金沢駅で、特急「サンダーバード」などの関西、東海、福井方面の特急列車と北陸新幹線に乗り継ぐ場合にも、在来線の特急料金は半額になる。
4.首都圏在来線(上野東京ライン編)
2015年3月14日(土)、首都圏在来線では、宇都宮・高崎・常磐各線と東海道方面を結ぶ新たなルートとして、「上野東京ライン」が開業する。
上野東京ラインは、上野〜東京間約3.8kmの複線区間「東北縦貫線」を経由して、宇都宮・高崎・常磐の各線と東海道本線とを直通運転するルートの名称。東北縦貫線により、これまで上野駅で折り返しになっていた宇都宮線・高崎線などと、東京駅で折り返しになっていた東海道本線が結ばれ、直通列車の運転が実現する。上野〜東京間に途中駅はなく、並行する山手線・京浜東北線の神田、秋葉原、御徒町の各駅は通過する。直通列車ができることで、上野駅や東京駅での乗り換えが不要に。上野〜横浜間などの所要時間の短縮のほか、並行する山手線・京浜東北線の混雑率の緩和も見込まれている。JR東日本では、両線の上野〜東京間の通勤ラッシュ時の混雑率は、約200%から180%程度に低減する見込みとしている。
おなじみの「路線ネットワーク」。上野と東京の間は山手線・京浜東北線、新幹線が結ぶだけで太さがないが、上野東京ラインができると、様変わりする。秋葉原を避けるようにして、線が結ばれる形になる訳だが、果たしてどうなる? |
秋葉原駅の3階部分から望む東京駅方面。3月14日には、ここから上野東京ラインの列車と新幹線が並走したり、離合したりする様子が見られるようになる。上野東京ラインには、秋葉原駅はなく、上野駅の次は東京駅になる。 |
朝の上野駅での乗り換え客の様子。上野東京ライン開業後は、上野駅終着が減り、東京駅などへ直接行けるようになるため、同駅での乗り換え客が減ることが予想される。 |
御徒町、秋葉原、神田に行く場合は、上野で乗り換え。(写真は、東京駅開業100周年記念の山手線ラッピング列車) |
秋葉原と神田の間の高架橋を走る試運転列車。この区間は、35‰の急勾配なので、勾配に対応できない車両は走れない。 |
東京駅に停車中のE233系3000番台(国府津車両センター所属)。開業を控え、実際に使う車両での試運転が連日行われている。(この後、上野方面に向け発車した) |
上野東京ラインは、大宮〜横浜間は京浜東北線の速達列車として、大船駅以西の東海道本線各駅へは湘南新宿ラインの別ルートとして機能するようになる。特に埼玉と神奈川の両県を結ぶ輸送力が増すことになる。
上野駅発着の宇都宮・高崎・常磐各線の列車は、平日午前8〜9時台の朝の通勤ラッシュピーク時には計34本のうち各5本が東京駅以南に乗り入れる。宇都宮線と高崎線の直通列車は神奈川県方面へ、常磐線直通列車は品川駅まで運行。東海道本線の列車は東京駅止まりとせず、同時間帯はすべて宇都宮線や高崎線に直通する。所要時間は、大宮〜品川が46分(10分短縮)、柏〜品川が49分(8分短縮)など。上野〜品川は15分前後。
JR東日本のリリースに従えば、平日の「南行」(7時〜23時合計)では、宇都宮線→東海道本線を直通する上野東京ラインは、84本中53本が設定。氏家発・熱海行きというのも含まれる。高崎線→東海道本線を直通する上野東京ラインは、81本中54本が設定。このほかに上野発の東海道本線方面もある。「北行」では、東京発の宇都宮線方面のほか、東京発・籠原行き(1本)もある。土休日の南行で長距離のものだと、黒磯(6:52発)→熱海(11:29着)、前橋(17:41発)→沼津(22:20着)などがある。首都圏で片道4時間半以上を走る普通列車というのは、あまり例がなかったように思う。
宇都宮線快速「ラビット」、高崎線快速列車「アーバン」は、上野東京ライン開業後も継続。東海道本線にも直通するが、同線区間では普通列車として走る。東海道本線の快速「アクティー」は宇都宮線内に入るが、同線区間では普通列車になる。宇都宮・高崎線と東海道本線の直通区間を通しで快速として走る列車は設定されないことになる。平日の南行では、上野発の「アクティー」も1本走る。(東京発の「ラビット」「アーバン」は設定されない。)
常磐線の特別快速や普通列車は、データイムを中心に北行・南行各17本(合計34本)が品川駅発着になる。このほか、成田駅を発着し、成田線・常磐線を経由する列車も設定される。平日、土休日とも、成田発・品川行きは朝に2本、品川発・成田行きは夕方に3本走る。
上野東京ラインで使われる車両は、常磐線系統がE531系(左)など、宇都宮・高崎線系統がE231系(右)などの予定。今は上野駅止まりだが、3月14日以降、東京駅やその先に向かう。 |
上野駅の6番線は、「宇都宮線(東北本)」「高崎・上越線」。この番線は、「北行」で主に使われる筈なので、表記が大きく変わることはないと思うが、「常磐線」が加わる可能性はある。 |
御徒町駅ホームから見た東北縦貫線の線路脇には、制限速度の標示が設置済み(上野と秋葉原の間では、60km、70km、85km、90kmなどとなっていて、そこそこ速く走る模様) |
宇都宮線快速は「ラピッド(rapid)」ではなく「ラビット(rabit)」。つまり「rapid service “Rabit”」と、もともとややこしい訳だが、東海道本線内に入ると快速ではなくなるため、益々ややこしいことに。 |
185系は特急用車両だが、普通列車としても運用される。この運用が上野東京ラインでどうなるか、鉄道ファンなら気になるところだろう。 |
東京駅の発車案内も大きく変化することになる。東海道本線は、今は下りのみでいいが、上野東京ライン開業に伴い、「北行」「南行」の両方を設ける必要が出てくる。「東北・山形・秋田・上越・長野新幹線」も、「長野」を「北陸」に変えたり、いろいろとありそう。要注目である。 |
上野駅に出ている常磐線の各種ご案内。3月14日、停車駅や所要時間のほか、特別快速にも少し変化があり、北千住駅に特別快速が停まるようになる。(品川駅発着の特別快速は、日中時間帯に上下各6本走る) |
上野駅9番線・10番線は、現在は主に常磐線で運用。現在は上野駅が始発駅だが、上野東京ライン開業後は、品川駅発着が増え、上野駅は一部列車では途中駅になる。 |
なお、高崎線系統の在来線特急「スワローあかぎ」「あかぎ」「草津」は引き続き上野駅発着、東海道本線系統の在来線特急「踊り子」「スーパービュー踊り子」も(東京駅発着分については)やはり東京駅のまま。上野〜東京間を走る在来線特急は、「ひたち」「ときわ」のみということになる。(臨時の特急列車については今のところ不明)
上野東京ラインが開業したところで、筆者が関係する区間は専ら赤羽〜上野間。これまで通り、上野駅で乗り換えるため、直接的な恩恵はない。ありがたい話は、上野〜秋葉原間の混雑が少しは緩和されるだろう、ということ。行きは兎も角、帰りは山手線・京浜東北線ともにグダグダになることが多いので、少しでも上野東京ラインに流れてくれれば、不本意な遅延もなくなり、楽に帰途につけるようになるだろう。
おそらくはメリットの方が多いとは思うが、何せスケールが大きな話なので、いろいろと混乱も出てくることが予想される。思いつく点を以下に挙げてみる。
赤羽駅以北、横浜駅以西は、湘南新宿ラインに乗っても行くことができ、選択肢が広がる、それ故の混乱(誤乗など)が増える可能性は高い。成田〜東京〜品川についても、総武快速線と上野東京ライン(成田線・常磐線経由)とで一応、2WAYになる。うっかり我孫子回りの品川行きに乗ってしまう客が現われないとも限らない。(概ねの時間は、千葉経由が80分に対し、我孫子経由は100分)
直通列車が増える=一つのアクシデントが波及する範囲が拡がる、というのがある。折返しが可能な駅が多ければ、遅れや見合せは緩和できるが、果たして...(上野、東京、品川の使い方次第か)
他に留意したい点、気になる点としては、
・これまでは、上野方面も東京方面も「上り」だったが、両駅が結ばれることで、その概念が変わる。「上り」「下り」の代わりに、前段で書いたように宇都宮・高崎・常磐各線方面が「北行」、東海道本線方面が「南行」になる。
・常磐線の各列車は、品川駅で折り返しになる訳だが、どのホームで発着するのかが、今のところハッキリしない。今は臨時ホームとして使われている9番・10番が濃厚だが、果たして?
・品川→東京の向きでは、東海道本線の利用者が少なかったが、上野東京ライン効果で、かなり増えるだろう。新橋からの客ももちろん増えると予想されるが、上野までならまだしも、その先に向かう場合は注意を要する。酩酊状態で乗り込んだら、土呂ではなく土浦だったとか、北千住ではなく北鴻巣だったとか...笑えない事態が起こり得る。常磐線特急を新橋に停めないのは、正解かも知れない。
・今の横浜駅は、5・6番線が東海道本線下り、7・8番線が東海道本線上り。上野東京ラインは、5・6番線を「南行」で、7・8番線を「北行」で使うことになるだろう。ちなみに湘南新宿ラインは、9番線(小田原方面)、10番線(新宿方面)。
あとは、上野駅・東京駅発着の臨時列車や団体専用列車の動向とか、「ムーンライトながら」のような夜行列車の設定とか...(仙台発・大垣行きなんてのができれば面白そうだが、どうだろう?)
昨年8月、品川駅9番・10番ホームでは、大がかりな工事が進んでいた |
藤沢駅の東海道本線上り、終電は23:43発の品川行き。上野東京ラインの終電は、小田原発21:29発なので、藤沢は22時台前半か。行先を示す白文字部分はすでに更新され、今はシールで隠されている。 |
185系試運転列車。特急形電車185系のうち、上毛三山をイメージしたこのタイプの塗装は、順次、湘南カラーに変更されている。見ておくなら今のうち。 |
上野から「東北縦貫線」に入り、東京に向かう試運転列車。結構曲がりくねっていることがわかる。 |
赤羽駅の「尾久・上野方面」の現在の時刻表凡例は、「すべて上野行」となっている。上野東京ライン開業後は、熱海、小田原、平塚などが加わり、表記が変わる。 |
ただでさえ複雑な系統や列車種別が、さらに複雑化する。(上野から左に向けて線が伸び、横浜で合流etc.) |
上野駅の9番線は、「東北本線・高崎線・上越線・信越本線・常磐線」が発着することになっているため、「日暮里」「尾久」の両方が出ている。上野東京ライン開業により、9番線の運用が変わると、この書き方も変わる可能性が。(逆側に「東京」が入ることは確実) |
上野東京ラインと並行して走ることになる京浜東北線の快速列車は、3月14日以降は神田にも停車。御徒町は、土曜・休日に限り、快速が停車するようになる。「▽」の表示はなくなり、所要時間も変わる。 |
☆後編(第418話)に続く。
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