第208話 変化あっての新宿駅(2006.5.1)
*今回から、新サイトでの「東京モノローグ」掲載開始です。引き続き、ご笑覧ご高配の程、お願いします!(過去コンテンツはメンテしながら移転している途上のため、リンクが間に合っていない箇所があります。ご了承の程を。)
何かと話題満載のJR新宿駅。3月のダイヤ改正後もとどまるところを知らず、特に4月はニュースずくめといった感じ。掛け持ち職場に出向く際、新宿を経由することが多いので、通る度に何かしらに出くわしていた。各種アクシデント等による遅れや乱れはいつものことだが、他の月ならそれも話題にならなくはない。だが最近では、よりインパクトのある話題が集中したために、ちょっとした遅れ・乱れはすっかり日常の一部と化してしまったようだ。そんないくつかのインパクト系出来事をお伝えしつつ、第160話からちょうど2年が経ったところで、今のJR新宿駅についてまとめておこうというのが今回の趣旨である。
筆者が幼少の頃、新宿駅の南口には改札口も何もなく、ただ甲州街道が通るだけの無粋なエリアだったのを憶えている。南口ができ、新南口なんてのまで出現し、今度は遂にサザンテラス口と来たから驚いた。隔世の感あり、とはこのことか。新南口はこれまで、中央線特急・埼京線・湘南新宿ラインのホーム(1〜6番線)から東側に抜けるだけの孤立した改札口だったが、サザンテラス側、つまり西側に新たな改札ができ、新南口とつながったことで、立派な玄関口になった。サザンテラス口は、JR新宿駅の構内最南方に新しい東西通路をもたらした。埼京線から山手線・総武線・中央線に乗り換えるのに、南口のコンコースまで行かなくても済むようになったのは実に有意義なこと。ラッシュ時間帯は、乗り換えのコンコースに出るまでがひと苦労で、エスカレーターや階段の渋滞は相当なものだったが、この通路ができたおかげで、かなりの分散・緩和が図られているはず。よく利用する人にとっては、待った甲斐があったというものだろう。(駅構内図は、こちらからご参照ください。⇒「構内図のある駅一覧」)
開業前夜のサザンテラス口 |
すでに看板の準備もOK(新南口の隣は、サザンテラス口) |
東西を結ぶため、新南口は新南東口、サザンテラス口は新南西口でもよかった気がするが、おそらく通路の途中に近い将来設けられるであろう、新改札がオープンするまではこの名称でいくものと思われる。その新改札とは、甲州街道の歩道部分、というより、バスやタクシーの乗り場(ターミナル)に直結するゲートを指す訳だが、どんな状態でオープンするのかは不明。4月15日(土)の大工事で、てっきりこのターミナル部分もでき上がってしまうものと思っていた筆者にとっては、物足りなさの残る跨線橋工事となった。
ここで言う跨線橋とは、甲州街道がJRの線路を跨ぐ橋。幼少時の記憶とおそらく同じ状態のままだった橋が人工地盤によって拡幅され、その地盤上にバスやタクシーの乗り場ができることは、埼京線の1・2番線のホームがこの工事に関連して手狭になって以来、聞き知っていたこと。ホームを狭くしていた囲いが外れ、東西通路ができ、跨線橋も拡がり、と勝手に想いを廻らしていた訳だが、一朝一夕にはいかない。東西通路とサザンテラス口ができただけでも大したもの。跨線橋架替工事ということだったが、どのように架け替えられたかはピンと来ない。とにかく橋と地盤の基礎を固める、というのが主旨だったのだろう。翌16日、真新しいながらもまだ工事途中のような東西通路と所在無げなサザンテラス口を往復し、山手線・総武線のホーム最南端部分と東西通路を結ぶ長細い通路を試し歩きしたりしながら、新宿駅の進化を実感した次第。甲州街道の南口ターミナルがお目見えしないと新しい歴史は始まらないのかも知れないが、これはこれで一大事。次の展開に向けたプロセスをまた楽しむとしよう。
新しくできた通路はこんな感じ。(右奥を進むと新南口に出る) |
ホーム最南端にある通路から見た13・12番線の山手線列車。サザンテラス口から山手線に乗ろうとすると、ちょっと歩くことになる。 |
中央線特急用の5・6番線ホームが南側に新たにできた際、かつての特急用ホームに、東京方面行き(上り)の中央線(快速)ホームが移ってきて、7・8番線になった。列車が発着しなくなった旧7・8番線は、廃線・廃駅のような状態がしばらく続いていたが、改良工事がいつしか始まり、受け入れ態勢が整っていた。その空いていた上りホームに、今度は高尾方面行き(下り)の中央線(快速)ホームがやって来て、新9・10番線に。これも4月15日の大工事の賜物である。4月14日の終電から16日の始発まで、埼京線・湘南新宿ライン・中央線特急・中央線快速を新宿駅から締め出しただけのことはあって、同時進行でいろいろな工事が捗り、見事改造が実現した、という訳だ。
日中のこの時間に、各駅停車 豊田行き、各駅停車 東京行き、なんてのはまず有り得ない。 |
埼京線・湘南新宿ライン・中央線特急・中央線快速が動かないとなると、これだけ書かないといけなくなる。 |
もっとも、この大工事日に東京に出てきて、新宿を経由する移動を予定していた人にとってはたまったものではない。東京生活に馴染んでいる人にとっても、日中にまさか総武線(黄ラインの電車)の各駅(御茶ノ水〜三鷹)に朱色の電車が入ってくる、なんてのはドッキリものだし、埼京線で南へ行くのにどの列車も皆、池袋止まり!てのはさぞギョッとしただろうと思う。予定されていたことなのでアクシデントとは言えないが、非日常という点では大事件。鉄道マニア(特に車両・編成系)にとっては貴重な写真を撮りだめする絶好の機会になったことだろう。(かく言う筆者は、路線マニア?!)
飯田橋に朱色の電車! |
こっちは千駄ヶ谷での一枚 |
下り中央線快速が走らなくなった旧9・10番線は、今ではひっそりしているが、直に何らかの工事が始まるだろう。今度は総武線・山手線が移動することになるのか、はたまた新宿を起点・終点とする特別列車のホームにでもするのか、予測がつかない。ただ同じ改良をするなら、もっと広めのホームにすることが望まれる。せっかくの新ホームながら、上り中央線快速ホーム(7・8番線)は混雑時には人が線路に落ちそうなくらいの逼迫感がある。乗客の膨張は、ダイヤの乱れに伴うケースが多いが、予期できたことだけに、何とかならなかったのか、といつも思う。今は休眠中のホームだが、ここの動向についても期待しつつ見守るとしよう。
下り中央線快速が走らなくなった旧9・10番線ホーム |
誰もいないホームは不思議な佇まい |
4月24日(月)は、朝から国分寺に出勤していて、特にニュースもチェックしていなかったので、日中に山手線・埼京線がとんでもない事態に陥っていたなんてことは、知るべくもなかった。往路は、正にその高田馬場〜新大久保のレール隆起箇所を走り抜けていただけに、隆起前だったとは言え、ヒヤヒヤものである。帰途、新宿駅で中央線から埼京線に乗り換えようと思ったら、いやはや。埼京線は間引き運転とやらで、発車時刻の掲示はなし。南口改札をいったん出て、詳報を聞こうと思ったら、某公共放送の実況と思しきインタビュアーがLUMINEの入口付近でスタンバっている。やはり何かあったんだ。
事の重大さを了知していなかった筆者は、漫然と次の埼京線発車案内に応じて2番線へ。20:40頃、下り各駅停車に乗ろうと思ったが、結構な混雑。この時「次の当駅始発列車は、3番線から20:53〜」云々とアナウンスがあったので、足早に3番線へ。ところがこのアナウンス、実はとんだ食わせ物だった。間引きとは言え、15〜20分おきには来るだろうとタカを括っていたのがそもそもの誤り。通常なら始発列車は5〜10分前には入ってくるので、そろそろと思っていた20:45、アナウンスは変化した。「次は4番線、続いて2番線...」。でも2番線は、通勤快速だったはずだから、パス。先発でも後発でも各駅停車に乗れればいい、ととにかく待つことにした。3番線に折り返し列車が入ってくる気配は皆目なし。だが、4番線も動きがないから、じっと待つ。やがてアナウンス。「20:50到着予定の各駅停車、6分遅れ...」そして「3番線に回送列車〜」。4番線到着に続き、直に3番線に回送が入って来て、憐れ、筆者の始発乗り込み作戦は泡と消えてしまった。追い討ちをかけるように2番線折り返しは「各駅停車に変更」とな。それなら最初から2番線で待っていたのに...
21時ちょうど発車予定の2番線。だが、発車時刻前になっても折り返し列車は現れない。1・2番線ホームは大混雑。隣の島の3番線からそれを飄々と眺める筆者だが、涼しい顔もしてられない。順番では、4番線→2番線→3番線。回送が去った後の3番線は、21:12発 各駅停車。21時を過ぎた今、このままここで待っていれば、大差ないタイミングでの発車になるはずだが、このまま2番線が来なかったらどうなる?
21:10前だろうか。ようやく2番線に折り返し列車が入って来た。程なく3番線には折り返しではなく、新木場からの列車が入線。4番線はいつまでも発車できない各停が停車中。21:15頃か、この瞬間、2・3・4番線に埼京線の各停列車が揃い踏みする、という珍事が起こった。超満員の4番線がまず発車、同じく超満員の2番線がそれに続く。そして程々の混雑の3番線列車が徐行しながら動き出す。やれやれ。3番線には30分超、待機していたことになる。線路隆起の余波は大きい。復旧後もこれだけ運行を乱してしまうのである。耐えた報いか否か、池袋で席に着くことができたのは幸いだった。先の第207話とは逆の立場になるため、隣客に迷惑がかからないよう、極めて控えめに着席。お隣が不行儀かどうかなど、こういう事態では言ってられない。だが、この時は極めて平穏に過ごすことができた。ありがたいことである。
新宿駅がいろいろと動いているのは、こうしたことからおわかりいただけると思うが、ダイヤ改正や、第206話での「JR・東武直通特急」スタートに伴い、行先のバリエーションという点からも変化が見て取れる。
行楽列車などの情報がイマイチ把握できなかったこともあり、今回は通常ダイヤにおいて、JR新宿駅からどこへ行けるかを一覧化してみた。2年前と比較してみると、ざっと下表の通りである。(駅名のみ、50音順)
行先 |
線名 |
赤羽 |
埼京線下り(大宮方面) |
安房鴨川 |
総武快速・本線 |
池袋 |
山手線外回り(池袋・上野方面) |
伊豆急下田 |
東海道線 |
宇都宮 |
宇都宮線下り(宇都宮方面) |
青梅 |
中央線下り(高尾方面) |
大崎 |
山手線内回り(渋谷・品川方面) |
埼京線上り(大崎方面) |
大月 |
中央線下り(高尾方面) |
大船 |
横須賀線下り(大船方面) |
大宮 |
埼京線下り(大宮方面) |
奥多摩 |
中央線下り(高尾方面) |
小田原 |
東海道線下り(大船方面) |
籠原 |
高崎線下り(高崎方面) |
河辺 |
中央線下り(高尾方面) |
鎌倉 |
横須賀線下り(大船方面) |
河口湖 |
中央線下り(高尾方面) |
川越 |
埼京線下り(大宮方面) |
鬼怒川温泉 |
宇都宮線下り(宇都宮方面) |
久里浜 |
横須賀線下り(大船方面) |
黒磯 |
宇都宮線下り(宇都宮方面) |
国府津 |
東海道線下り(大船方面) |
甲府 |
中央線 |
古河 |
宇都宮線 |
小金井 |
宇都宮線下り(宇都宮方面) |
国分寺 |
中央線下り(高尾方面) |
小淵沢 |
中央線 |
高麗川 |
中央線下り(高尾方面) |
指扇 |
埼京線下り(大宮方面) |
品川 |
山手線内回り(渋谷・品川方面) |
信濃大町 |
中央線 |
新木場 |
埼京線上り(大崎方面) |
逗子 |
横須賀線下り(大船方面) |
高尾 |
中央線下り(高尾方面) |
高崎 |
高崎線下り(高崎方面) |
立川 |
中央線下り(高尾方面) |
館山 |
総武快速・本線 |
千倉 |
総武快速・本線 |
千葉 |
中央・総武線東行(東京・千葉方面) |
津田沼 |
中央・総武線東行(東京・千葉方面) |
東京 |
中央線上り(東京方面) |
東武日光 |
宇都宮線下り(宇都宮方面) |
豊田 |
中央線下り(高尾方面) |
中野 |
中央・総武線西行(三鷹方面) |
成田空港 |
総武快速・本線 |
新潟 |
高崎線 |
西船橋 |
中央・総武線東行(東京・千葉方面) |
沼津 |
小田急線・御殿場線 |
白馬 |
中央線 |
八王子 |
中央線下り(高尾方面) |
平塚 |
東海道線下り(大船方面) |
前橋 |
高崎線下り(高崎方面) |
松本 |
中央線 |
三鷹 |
中央線下り(高尾方面) |
南小谷 |
中央線 |
武蔵五日市 |
中央線下り(高尾方面) |
武蔵浦和 |
埼京線下り(大宮方面) |
武蔵小金井 |
中央線下り(高尾方面) |
横須賀 |
横須賀線下り(大船方面) |
竜王 |
中央線 |
2年前からは4つ減って、2つ増えた。行先に関しては大した変化はないかも知れないが、列車の種類は確実に変わった。湘南新宿ラインに特別快速が走るようになった、なんてのはちょっとした出来事だったと思う。
ここのところ、信号トラブル、車両故障などが相次いでいる観があるJR(東日本)。各線が行き来する新宿駅では、当然ながら様々なトラブルに巻き込まれる確率も高くなる。あちこちに行ける利便性は、トラブルが極小化されてこそ活きるもの。列車の運行状況を乗客が気遣う、というのが常態化してしまうのは考え物。看板駅である新宿だからこそ、進化を遂げつつある訳で、駅ばかり立派になっても輸送が万全でなければ意味が薄れるし、工事を耐え忍んできた多くの利用客にも申し訳が立たない。信号や車両の点検・改良も重々お願いしたいものである。
|