第190話 震度4後の新宿通り&タクシー地名考(新宿西口編)(2005.8.1)
それは「愛・地球博」(地球市民村)への出展準備の打合せなどで、市民運動全国センター(千代田区麹町)の会議スペースにいた時。横揺れが始まったなぁ、と思ったら、途端にガタガタ大きく震動が続き、肝を冷やした。震度4を体感したのは、おそらく初めてか、二度目くらいだろう。7月23日(土)16:35。この記録時刻は、ちょっとしたニュースになった。(奇しくも、7月28日(木)19:15の震度3の時も、同じ市民運動全国センターの同じ場所にいた。耐震・免震の建物ならいいのだが、そうでもないようなので...(^^; しばらく同所での打合せはないが、はてさて?)
打合せのペースを落とし、しばらく様子見した後、17:30に散会した。帰途が四谷方面だったのは筆者だけだったので、一人黙々と新宿通りを西進する。ニュースでは交通情報が十分でなく、各線の運転状況も確認できていなかった。途中、麹町界隈の都バスの停留所に人だかりができているので、何かイベントでもあったか?などと能天気に見送っていたが、四谷駅に着いて、なお人が群れ成しているのを見て、ようやく事態が呑み込めた。経験が少ない震度の場合、都内の交通網がどうなるか、というのはきちんと想像を巡らせたいもの。電車が動かなければ、人は滞留するし、代替の交通機関が混むのは至極当然なのである。(日常的なリスクがどうのと、いろいろと筆を振るっている割には、我が危機意識の軟弱ぶりと来たら。) 地震発生から70分ほど経っていたが、JR総武線・中央線は運転見合せ中。ならば東京メトロはどうか? 南北線・丸ノ内線ともにストップのアナウンスが地下から発せられている。全ての線路を徒歩で点検中とのことだ。気が遠くなる話だが、止むを得まい。
都バスも当てにならない。タクシーに乗る気は毛頭ない。帰宅難というものがどういう状況か、程度は軽いながらも疑似体験することになった。晴天で、日が長めなのが救い。
とにかくこのまま西に歩き、新宿駅まで行ってみよう。道中、丸ノ内線の駅が幸い地下浅くに3駅続くので、運行状況を確認しながら行けばいい、と意を決することにした。
かつて、その市民運動全国センターに向かう際、時間にゆとりがあったので、新宿駅から徒歩で向かったことがあった。自転車でも何度となく、この新宿通りを行き来しているので、勝手は知っている。その経験が生きたとするなら、普段から自分の足で現場慣れしておくことが大事、という教訓が導かれることになる。
18時には四谷三丁目駅に到着。発売中止になっている券売機だが、それに列を作るように、路線図を見遣る人達(写真左上)。反対側、銀座・池袋方面の改札前に廻ると、「振替輸送 JR線×」などと非情な掲示が(写真右上)。券売機の脇では、1台に1人の割合で待ちぼうけ状態の乗客が佇んでいる。珍しい光景だ(写真左下)。再び地上に出て、四谷三丁目交差点を見遣ると、品川駅行きの都バスが外苑東通りを右折しようとしている。バスの中は案の定、超満員(写真右下)。途中の乗り降りは円滑に行かないだろう。終点の品川駅まで何分かかることやら。
四谷三丁目 新宿・荻窪方面改札前 |
事故情報を伝える掲示板 |
四谷三丁目 銀座・池袋方面改札前 |
四谷三丁目交差点を右折する都バス[品97]系統 |
バスの混雑を思えば、徒歩は楽なもの。四谷四丁目を過ぎた辺りから、新宿に向かう人波が増えてきた。「歩け歩けのノリ」という会話も聞かれる。その通りである。人出に便乗して露店が出てきてもおかしくない状況になってきた。救急・消防のサイレンが響く。地震発生直後ではないが、道路も混雑しているから、何かあってもおかしくない。よく考えると、建物の損壊、窓ガラスの破損・落下などが、この新宿通りを歩く限りでは目に付かない。歩く街路の選定もリスクマネジメントのうち、ということか。
新宿御苑前駅に到着。駅員が外国人女性に状況説明するも、当惑が続いている様子。こうした時、お互いに言葉が通じないというのは何とももどかしい。(運転再開がいつになるかが駅員もわからない状態では、いくら訳したところでも解決にはならないか。) 何とか説明がついたようなので、筆者はその場を後にしたが、どこまで立ち入っていいものか、悩ましいケースである。
新宿駅の徒歩圏内に入ってきた。新宿二丁目、三丁目とカウントダウンのようになって来る。ゴールが近づくと、自ずと気も急くのだろう。赤信号を急ぐ歩行者も増える。対照的に筆者はデジカメ片手に地震後の新宿通りを記録しながらなので、至って鈍足。新宿三丁目駅には、18:30過ぎに着いた。
都営新宿線の改札は思いがけず人が少なく、券売機も稼動中。程なく、「徐行・注意運転中」との放送が入った。これにはビックリ! 同駅の丸ノ内線は、と言うと、相変わらず運転見合せ中。有人改札の行列に対し、メモを見ながら拡声器でアナウンス、という有様。都営地下鉄と東京メトロのこの違いは何なのだろう。丸ノ内線改札では、そんな状況に呆れてか、A4ヨコの路線案内やメトロカードに印刷された小さな路線図と睨めっこしながら、自動改札機に隣接する柵に腰掛ける人がチラホラ。気分が悪くなったか、地下道に座り込む人も時折見かけた。給水などのケアが必要な事態は、このようにして起こる。まずは運転再開を優先するとしても、より総合的なサービスを考慮するなら、再開を待つ乗客への備えや対応も必要になるだろう。
新宿三丁目から新宿までは、地下通路(メトロプロムナード)をそのまま歩く。地震発生から2時間後、18:35、丸ノ内線新宿駅に到達。四谷を起点とすると、5駅分、営業キロ数では2.9kmの行程だった。半蔵門からだと約4kmといったところか。何だかんだで1kmを15分ペースで歩いてきたんだから、寄り道した割にはまぁまぁだろう。この時点で、東京メトロは銀座線と日比谷線のみが再開。JRは埼京線と中央線(新宿以西)が動き出した、ということだった。埼京線が動けば筆者は帰宅可能。新宿駅西口から[王78]系統で、十条か王子に出るパターンも覚悟していただけに安堵感は大きかった。とにかく新宿までの徒歩敢行は無為ではなかった。
埼京線再開はいいのだが、動き出したばかりだとすると、混み具合は半端じゃないだろう。せっかく新宿駅西口に来ていることもあるし、交通網がマヒ気味の時だからこそ、調べ甲斐があるものを思い出した。そう「タクシー地名考」である。
大正元年(1912年)8月5日、銀座で日本で初めてのタクシーが営業開始したことから、8月5日は「タクシーの日」なんだそうな(⇒詳細)。次にタクシーネタを書くならこのタイミングで、と前々から画策していたのだが、ひょんなことから続編を調べる機会に恵まれた。(前回は137話、その前は87話。50話刻みだったら、187話だったのだが、8月5日に免じて、ということで。)
新宿通りを歩いている時に、「回送」で東に向けて走り去っていく高慢(?!)な1台を見かけたが、そんなタクシーが多いせいなのかはいざ知らず、とにかく台数が少ないのには驚いた。いつもの当・西口地下乗場は、タクシーの車列がそれなりにできているので、いくら非常時でもそんな...というのが正直な印象である。
県外からのタクシー到着(何と市川から!) |
左から右方向にかけ、列が進んで行く |
タクシー待ちの人の列は長く蛇行している。需要と供給のバランスが崩れるというのは、こういうことか。タクシーは来ず、列はどんどん長くなる。ともかく、乗場に入ってくるタクシーの地名を観察して、帰宅時間を調整することにした。
◎7月23日(土) 18:48〜19:08
*今回は、書き留めるのに十分な用意がなかったので、会社名は省略。(営業所名50音順)
【中型車(実車)】 |
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【周回(または小型車)】 |
営業所名 |
台数 |
営業所名 |
台数 |
足立 |
1 |
足立 |
1 |
浅草 |
1 |
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板橋 |
2 |
板橋 |
2 |
市川(千葉県) |
1 |
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荻窪 |
1 |
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蒲田 |
1 |
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錦糸町 |
1 |
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高円寺 |
2 |
品川(1台は研修中?) |
2 |
品川 |
1 |
志村 |
1 |
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自由が丘 |
1 |
成城 |
2 |
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千住(1台はワゴンタイプ) |
2 |
千住 |
1 |
高井戸 |
1 |
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滝野川 |
1 |
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戸塚(神奈川県) |
1 |
中野 |
1 |
中野 |
2 |
練馬 |
2 |
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深川 |
1 |
堀ノ内 |
1 |
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本田 |
1 |
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三鷹 |
1 |
三鷹 |
1 |
代々木 |
1 |
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こうした事態(概ね1分に1台)だと、一人一台では勿体ない。方面別に固めて乗り合いにするなどの工夫も必要だろう。調査開始からの10分間は本当に台数が少なく、気の毒だった。(少ないながらも、やって来たタクシーの営業所名が全て違っていたのは驚異だった。さすがは新宿、多様である。) だが、19時を過ぎた頃から配車ペースが多少上がり、列の長さが抑制されてきた。待っている方々には無礼ながら、ちょっとした見物だった。
客を乗せず周回するタクシーがあるかと思えば、先のエリアに停車して降り乗りするタクシーもある。何か妙だなと思ったら、先には小型車乗場が在ったのである。筆者がチェックしていた手前の乗場は中型車専用だった。行列が長過ぎてよくわからなかったのだが、よくよく見たら、小型車待ちも列も相当な長さになっていて、小型・中型で2つの列が曲線を描いていたのでビックリ。中型・小型で分けてカウントしないと実情レポートにならない訳だが、途中で気付いた以上、仕方ない。という訳で、乗場を発着したらしいタクシー(左)と周回タクシー(右)とで分けて表にしてみた。
さて、地震を受けての鉄道の乱れ、他線はどうだったんだろう。各紙号外が出そうな予感もあったので、配られそうな場所を探しつつ、京王線、小田急線のメインの改札口を廻ってみることにした。京王は何事もなかったようだ。遅れの表示もなく飄々としている。小田急は20〜40分の遅れで済んだようだ。JRと東京メトロが地震に強くないことがこれでわかってしまった。
小田急線新宿駅の電光掲示 |
遠中近距離タクシーはこちらから |
新宿三丁目で地下に入って以来、100分ぶりに地上に出る。京王と小田急の両百貨店の中間ほどにもタクシー乗場があって、程々の行列ができていた。ここは「遠中近距離用」(要するにオールマイティ?)。初めて知った。長い列ができていないとわからないものである。さすがに、ここを今から調べる気にはならなかったので、JRの地下改札に戻る。地下のタクシー乗場の行列はまだまだ長め。ただ、先刻とは列の曲がり具合が変わっていたので、またまたビックリ。生き物の態である。(ちなみに号外は配達手段が確保できなかったためか、どこにも出ていなかった。代わりに、街頭配布品をいくつか受け取ってしまったが。)(^^;
山手線外回りと総武線はまだ再開せず...(階段に座り込む人達) |
混雑する中央通路と発車予定時刻にバラつきが目立つ番線案内 |
地震発生から3時間弱が経過。山手線内回り(12番線)がやっとこさ再開した模様。そのせいか、中央西口改札はごった返し。中央通路を歩いて、埼京線番線に向かうも、容易に進まない。運転ストップ中の番線(総武線・中央線(東京方面)など)では、階段に座って待つ人が相当数。通路にしゃがみこんでいる人も大勢。なかなか平常に戻らないものである。1・2番線に続く群衆は黒山の如し。中央東口から埼京線に乗るのは困難と見切った筆者は、東口を何とか出て、再び地上へ。南口を経由して、新南口に辿り着いた。さぞ混雑しているかと思いきや、難なく改札を通り、停車中の各駅停車(10号車)に悠々乗車。座席も確保できた。先頭の1号車の状況は想像するに余りある。この差はいったい... 19:40には新宿を発車。地元駅には20時前に着いた。帰途に付いた17:30から2時間30分が経っていたが、徒歩帰宅シミュレーション、各線の耐震性、タクシー事情、混雑回避法など、得るものが多い150分だった。
非常時の調査は済んだので、今度は平常時。
7月28日(木)、炎暑が戻った都心は、この時間、34℃を示していた。この暑さ・陽射しの中、外に出るのは艱難の極み。タクシー需要も程々だろう。
今度は小型も中型も周回も確実に捉えられる見通しの良い位置でチェック開始。しかし、売店に並べる新聞(この時間でもう夕刊?)の配達時間にぶつかり、各紙のトラックが乗り付けてくる停車エリアに居合わせてしまったことがわかった。待機する作業員が闇雲に喫煙するし、その吸殻の後始末のために清掃員が徘徊するしで、落ち着かない。仕方なく、途中から小型車の乗場近くで調査再開。場所が安定しないと、調べ損なうクルマも出てくるもの。しかも、予想以上に回転が激しいものだから、会社名はおろか、区別も何もない調査になってしまった。とにかくこの時間帯に通って行ったタクシーを、確認できた範囲で営業所別にカウントするにとどめることにする。(新宿、おそるべしである。)
◎7月28日(木) 12:58〜13:28
*西部・東部別、台数の多い順。
【西部】営業所名 |
台数 |
【東部】営業所名 |
台数 |
板橋 |
21 |
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三鷹 |
20 |
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西新井 |
19 |
中野 |
17 |
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江古田 |
15 |
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|
練馬 |
14 |
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阿佐ヶ谷、荻窪 |
11 |
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足立、成城、堀ノ内 |
9 |
足立 |
9 |
吉祥寺、新宿 |
6 |
|
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深川 |
5 |
池袋、大森、高井戸、志村 |
4 |
|
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大泉、石神井、目黒、代々木 |
3 |
尾久、亀有、砂町 |
3 |
牛込、品川、世田谷 |
2 |
千住、向島 |
2 |
赤羽、大井、三軒茶屋、新町、玉川 |
1 |
浅草、江戸川、亀戸、小松川、新小岩、田端、日暮里、南千住 |
1 |
合計 |
187 |
合計 |
54 |
これまで赤羽、十条、池袋、羽田空港で調べてきたが、ここ新宿は台数、多様性ともに群を抜く。同じタクシーが重複している可能性も高いが、回転が良ければ、どの営業所のが入ってきてもおかしくない。営業所に偏りがあったとしても、これが実態なのである。
営業所名があまりに多岐にわたるものだから、今回は「正」の字カウントも本当に骨が折れた。(地名50音順のチェックリストか何かを用意して臨むべきだった?) 13:13にちょっと小休止があった程度で、後はひたすら動きがあった。7/23の時とは打って変わって、待ちの列ができない。ワンコインタクシーを選別して乗り込む客がいる程、客優位のシチュエーションである。タクシーの方は時折、客待ちができる状態で、至って通常モード。需給バランスの絶妙さに感心してしまった。
*今回、営業所名で初登場は、自由が丘、成城、三軒茶屋、世田谷、高井戸、吉祥寺、阿佐ヶ谷、新宿、新町、牛込、江古田、田端、日暮里、浅草、南千住、向島、亀有、亀戸、新小岩、江戸川、小松川、大井とたくさん出てきた。初登場というのはあくまで過去2回の調査との比較なので、普段、街中で見慣れている筆者としては、営業所名での発見や驚きはそれほどではない。ただ、都内各所から新宿に集まってくることには驚嘆を覚えた。
中央線沿線や山の手側が多い印象を受けるが、台数は少なくても東京都東部からもやって来るというのは一目に値する。 |
ニュートランスシステムの「エコタクシー」 |
ワンコインタクシー(2台連続)と東京新聞の配送トラック |
タクシーが整然と並ぶ(7/23にはなかった光景) |
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それにしても、「新町」というのはいったいどこを指すのだろう?(世田谷区の桜新町のようだが、何とも。) 自動車ナンバーともども確認しないと特定できなさそうだ。(仮に横浜ナンバーなら「神奈川新町」なんだろうけど、ちょっと考えにくい。) まだ網羅できていない営業所名の発掘もしたいところ。次回は、渋谷、飯田橋、錦糸町、門前仲町などで調べてみようと思う。
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