第385話 高架下トレンド(2013.9.15)
*「東京モノローグ」、おかげ様で17年目に入りました。引き続き、ご高覧いただければ幸いです。(^^)
線路や道路などが高架になっている場所の下には空間ができる。いわゆる「ガード下」である。その起源については、「『ガード下』の誕生」といった本があるので、いずれきちんと調べるとして、おそらくは有楽町のそれだろう。
かつては、有楽町を経由するルートで通勤していたこともあるので、当時は有楽町で降りれば、JRのガード下も目にしていたし、高速道路の下、「西銀座デパート」などもよく出入りしていた。高架下の店舗・施設というのはこういうもの、と固定的なイメージを得るのに有楽町は恰好の街だったと言える。
駅との一体的な再開発で、高架部分の下が立派になっていく例を除いては、既存のガード下が生まれ変わるケースは実は多くない。思い浮かぶのは、京浜急行の品川駅近くの高架下にある「品達」程度である。うっかり見過ごしていた(と言うよりも、単に気付かなかった)ものとしては、御徒町駅南側に2010年12月10日にオープン(第一期)した「2k540」がある。
この頃は、本郷三丁目の某財団オフィスに週2日程度通っていたので、御徒町から湯島を経由して行く時など、どこかしらで情報に接していておかしくなかった筈がそれが皆無。御徒町駅の南側の方を歩くこともあっただけに、なぜ気付かなかったのかが未だに不思議である。恥ずかしながらその存在を知ったのは、この番組の「第10回 御徒町編」(桐谷美玲、齋藤清貴)でのこと。
「鉄道用語では東京駅を起点とした距離『キロ程』で場所を示します。当該施設は2k540m付近にあるため『2k540』とし、呼びやすく親しみやすいように、読み方を『ニーケーゴーヨンマル』としています」とWEBサイトにはある。そのネーミングもさることながら、空間の使い方、色調、各店舗のセンスなど、画面からでもその良さは十分に伝わってくる。そしてオープン後、2年以上が経った今年の2/3(節分)に初めて同所へ。番組を観ていて感じた通り、実にゆったりした佇まいで、快かった。
b3Labo、クリエー鉄、micといったショップを見物。40分ほど過ごした。ガード下・高架下のイメージを一新しながらも、基調は平静そのもの。"COOL"を具体化したようなスポットだと思う。
ガード下の新たなトレンドを「2k540」が牽引...となれば、街の景色も随分変わることだろう。だが、そんな期待に反して、「2k540」とはまた違う形で、JR東日本都市開発は次の施設を打ち出してきた。前回第384話でも紹介した「ちゃばら」(→参考映像)である。残念ながら、あまり魅力的とは言えないため、平日夜などに行くと何となく閑散状態。仮に「2k540」のようなスタイルでアンテナショップを展開していたら、また違っていただろう。「2k540」とはそう遠くない位置にあるだけに、一体感ある設計が為されなかったのが惜しまれる。
さて、秋葉原界隈で高架下と言えば、総武線の下(↑写真)も挙げられるが、南へ進むと万世橋の赤レンガがあって、何を隠そう今はそこが最もトレンディ。「mAAch ecute 神田万世橋」である。春だ夏だと云っていたので、ようやくの観があるが、9/14、めでたく開業した。
以下、その初日レポートなど。
神田川に架かる万世橋。「mAAch ecute」(マーチ エキュート)は、橋の手前からすぐに目に入る。橋を渡るとすぐ、思いがけない形で出入口が現れる。入ってみると、回廊状になっていて、どこかのギャラリーのような感覚。面白いのは、通路という概念がなく、店内を進んで奥に分け入っていくというスタイルだろう。通路という意味では、神田川に面したオープンデッキがその代わりになりそうだ。川そのものはお世辞にも美しいとは言えないが、都心有数のリバーサイドスポットであることは間違いない。
オープンデッキもOPEN! |
万世橋を渡ってすぐ、入口はこれが目印 |
神田川サイドは北側、即ちN(ノースコリドーにて) |
ノースコリドーの通路を兼ねるオープンデッキ |
神田川の反対側、つまり高架部分の南側はと言うと、多少ゆとりのある歩道があり、神田川サイドとは別の店が並んでいる。こちらは屋外からのアクセスなので、客が集中してもそれほど問題はないだろう。心配なのはやはりリバーサイド。店内通り抜け客の流れが集中した時、その混雑対策はいかに?と思う。雨天時など、オープンデッキに人が流れない場合は店内の動線が混乱する可能性がある。今後課題として浮上しそうである。
兎も角、9/14に無事OPENはした。晴れていたので、傘がどうこうすることもなく、店内の人の流れは至って円滑。賑わってはいるが、適度に分散する感じで、居心地は悪くなかった。滑り出しとしては上々だったのではないだろうか。
9/14〜16の3日間は、赤・オレンジ・茶のどれかの色を身に着けるか、その色の物を持ってくれば、赤いバラがもらえる(先着914人)。当日朝にその情報を得て、とりあえず赤色のバッジを持って行き、赤いバラを一本頂戴した。赤レンガで赤いバラ、という趣旨である。
高架下の南北をつなぐ通路は3つある。その1つはこんな感じ(休憩スペースあり) |
バラのアレンジ例 |
第206話では、交通博物館のフィナーレと「旧万世橋駅遺構特別公開」について記した。今回の目玉は正にその遺構。旧万世橋駅ホームにお目見えしたカフェ・バー「N3331」とそこに通じる「1912階段」「1935階段」である。それらはどうやら3点セットになっていて、カフェ・バー利用者に限り、階段の上り下りが可能という設定だった。案の定、待ち人数多めにつき、今回は見合わせ。階段だけでも自由に見学できるようにしてもらえれば…と思ったのは筆者だけではないだろう。(参考→旧万世橋駅)
そんな行列を横目に、OBSCURA COFFEE ROASTERS、VINOSITY domi、ポポンデッタといった店を見物し、最後に改めて店内を一周。12時過ぎに来て、13時前には出る感じ。まぁ、その程度ということか。
オープンに先だって、7/22から28日間、万世橋高架開発プレオープンイベント「神田麦酒祭り」(→PDF)の会場として、赤レンガの内部(一部)が開放されていた。その初日、帰り道に立ち寄ったが、あまりパッとせずほぼ素通り。表向きを「内覧会」にして、ビール祭りはおまけ扱いの方がしっくり来る感じだった。
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とりあえず、内覧はできた |
正式名称「mAAch ecute 神田万世橋」が発表されたのは7/19(→PDF)だったので、プレオープンイベントの前ということになる。「旧万世橋駅ホーム・階段遺構と一体化した新商業施設」というのは既報だが、「エキナカからマチナカへ エキュートブランドの新業態」というキャッチは"ナカナカ"。だが、この時点で明らかになっていた出店はまだ2つ。やはり何かあった?と思わせるリリースだった。詳細が明らかになったのは8/20(→PDF)。そして9/14・大安吉日、そんな塩梅である。
最初のリリース(→PDF)が出たのは2012年の7/3だった。以来、出勤の行き帰りなどに様子を見てきた。足かけ1年2か月余りということになる。「mAAch」だけに、待〜ちに待った開業と誰かが云ったどうかは知らない。(^^;
2012/7/4・・・オープンデッキはまだまだ先 |
2013/3/5・・・レンガ部分の色がなくなった頃 |
2013/4/20・・・オープン感がないオープンデッキ |
2013/4/20・・・あまり工事が進んでいる感じがしなかった頃 |
2013/5/10・・・どこをどうするとこうなるのか…デッキ部分が姿を現す(第380話でも紹介した通り) |
2013/5/10・・・内部に手が入ったことがわかるようになった頃 |
2013/7/11・・・オープンデッキ、ほぼ完成か |
2013/7/11・・・内部が整ってきた?頃 |
2013/7/19・・・この日はメディア向け内覧会だった(→参考) |
せっかくオープンしたんだから、今後はマメに訪れたいところだが、如何せん朝は11時開店である。出勤前にカフェでひと息、というのがここではできないのだ。逆に夜は割と遅くまで開いているので、どこかで夕食、というのも考えられるが、どうにもお高くて不可ない。飲食店関係は、価格設定を見直した方がいいかも知れない。いや、そもそも神田や万世橋界隈ならではの気質のようなものがうまく取り込めていない印象を受ける。(いわゆる"ブランディング"を優先する余り、庶民性がないハコモノになってしまったパターン) 「地域の賑わいの場を創出」「街の活性化の一翼を担う」・・・リリースにあるこうした表現も、今となっては通り一遍。本気でこれを実現するには、もうひと工夫が必要と思う。ブランディングはあくまで一助であって、本旨ではないはず。「2k540」「ちゃばら」「mAAch
ecute」、いずれもJR東日本のグループ企業の手による。トレンドを仕掛けるなら、「2k540」が一つの理想だと個人的には思う。
トレンディとは言い難いが、「地域の賑わい」を具現化している例は実在する。新橋〜有楽町の高架下である。9/14、万世橋の後にウォッチしてきたので、軽くご紹介する。(有楽町に近づくにつれ、ガード下の"本家本元感"が出てくるのがポイント。)
新橋駅烏森口。ガード下というよりホーム下だが、景観としてしっかり定着しているのがわかる。 |
SL広場近くはこんな具合。高架ホームの上にさらなる高架を造る工事が進行中。こっちのキムラヤはクローズ状態(駅北側の高架下で営業中) |
構造は万世橋のそれと同じ。アーチの中にあるコンビニは珍しい?(第一ホテル近くのローソン) |
「はなまる第一ホテル前店」はローソンの北隣 |
これは高速道路(正確には東京高速道路線)の高架下。銀座コリドーの蕎麦店だが、上をクルマが走るようにはとても見えない。 |
銀座コリドーにはトルコ料理店もある。その名はズバリ「イスタンブール」。 |
左:JR、右:高速道路。対照的な2つの高架下はこの先で分かれる。(→拡大地図) |
ガード下文化を感じさせる一角(千代田区有楽町1丁目) |
嗚呼、有楽コンコース!(晴海通りを挟むが、こちらも有楽町1丁目) |
こちらは有楽町駅のホーム下。外観は万世橋に似ているが、中はアウトレット店。これも時代の波か。 |
ガード下あっての「アメ横文化圏」と言っていいだろう。どこを見ても問答無用な感が強い。(右下のユニクロは、位置的には上野駅前だが、その文化圏の一端にある。奇跡の出店と筆者は見る。)
以下の4つは、通りがかりに撮ったもの。御茶ノ水から神田は、やはり赤レンガである。
西武新宿駅 |
水道橋駅(東口) |
御茶ノ水駅から淡路坂を下った辺り |
神田駅(北口) |
地元赤羽も高架下は頑張っている。駅の北と南は「アルカード」が挟み、南はさらにいろいろできていて、規模としてはそれなり。「2k540」のような空間ができれば、格段にオシャレな街になる?と思われるが、ここは赤羽。どこか垢抜けない感じがまたいいのである。(アカ抜けたら、ただの「バネ」である。)
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北側のアルカード(生活提案館)は、この通り。トレンディに見えなくもない。 |
蛇足ながら、アルカードでは現在「Suica de タッチ!」なるキャンペーンを実施中。このように用紙切れになってしまったりはするが、その努力は認めたい。 |
浜松町もガード下はあるが、店はなし。北側では橋桁の改築工事中。 |
高田馬場のガード下。手塚マンガの壁画がある。 |
第一大久保架道橋(山手線)の側面は、落書き防止のためか見事にカラーリング! |
上の3つは、おまけ。こうした例を含め、高架下・ガード下の類は、調べればまだまだあちこち出てくるだろう。街歩きのついでなど、撮りためていこうと思う。
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