第390話 不発弾処理にまつわるべからず集(2013.12.1)
東京都北区は今年、不発弾のアタリ年。第379話の通り、6月4日に一つ処理を終えたと思ったら、ちょうど1か月後の7月4日にまた新たに出てきてひと騒ぎである。今度は、筆者地元での発見だったため、見つかってから処理が済むまでの流れを身近に追うことができたのは、物騒な中にあってちょっとした収穫ではあった。処理日は11月17日(日)だったので、ごく最近の話題。となれば、今回は不発弾レポートでキマリ、と行きたい訳だが、15話ごとのローテーションで、「べからず集」と重なるため、一捻りしないといけない。少々苦しいところではあるが、今回の件を踏まえ、不発弾にまつわる対応でのべからず云々、ということにした。一般的にはまず接することのない事態なので、あまり参考にならないかも知れないが、非常時における対応のあり方を考える上では、こういうのもアリだと思う。順不同で5つ、挙げてみる。
7/6の現場。後日、「ライナープレート」と呼ばれる円柱状の囲いが組み立てられ、土嚢が積み上げられる。 |
発見現場は、JR鉄橋のごく近く。処理日当日は運休に。 |
発見(7/4)、発表(7/5)は、報道で知ったが、その後の警戒区域の設定、処理日が11/17(日)に決まったことなどは報道では聞かなかった。11/17の話は、列車の運休についてJR東日本が出したリリース(10/11付)でまず知る。そして、この日の夜、帰宅した際にポストに入っていた案内で、地元住民として知るべき情報を得たのだった。
運休のお知らせ(@説明会会場) |
予告看板は11/1から設置開始(@環八通り) |
説明会についてもその案内で知ったが、開催日はその1週間後。1回目が10/18(金)19時〜、2回目が10/19(土)14時〜ということで、何ともあわただしい。筆者は何とか10/18の回、途中から参加し、あれこれ聞くことができたのでよかったが、この時の説明会に足を運ぶ人は決して多いとは言えず、関心の低さ、いや、こうした会の設定の難(拙速、周知不足)のようなものを感じざるを得なかった。
これが盛会で、後は近隣住民間で情報が伝播していけば、いわゆる"周知"につながるのだと思うが、そうなってない以上、区としてはあの手この手が必要になるだろう。その辺りは、区も心得たもので、戸別訪問で以って知らせるとともに、「不発弾処理日の予定確認票」なるものの提出を求め、当日の動向を把握するというんだから恐れ入る。案の定、当方不在時に二度の訪問を受け、「お知らせ」一式を投函してもらった訳だが、せっかく来てもらったのにこれでは...というのが正直なところ。訪問履歴が付されていて、10/21午前、10/22午後とある。平日日中というのは果たして適切なのかどうか、戸別訪問での説明ができなかったのであれば、メールサービス、SNSでの配信などで補うというのは考えられなかったのか、思うところはいろいろある。
戸別訪問〜確認表提出(フロー) |
「不発弾処理に関するお知らせ」一式 |
図書館は、「警戒区域解除後に開館」 |
「立入制限予告」の看板。これも周知方法の一つ |
周知する対象は、現場周辺住民にとどまらない。その一帯を通行する一般の人向けには、どうアナウンスしたのだろう、と思う。定期的に自家用車、タクシー等で移動する人、決まった日時に何らかの品を配達する人...さまざまである。警戒区域内は、店舗や施設も休止になるため、そこに用がある人はまともに影響を受ける。当然、業務系の通行(物流、デリバリーetc.)も規制される。こうした点についての案内や説明はなかった(と思う)。
無事に終えた以上は、とやかく言うものでもないが、周知のあり方については幾分見直す点があるように感じる。
説明会では、爆弾のあれこれ、発見後〜処理準備の状況、広報、当日の流れなど事細かに説明がなされた。それらはPowerPointでまとまっていて、なかなかの出来だったと思うのだが、残念ながら投影されるのみで、手元資料はなし。不発弾処理に関する特設WEBサイトがある以上、こうした資料も当然掲載されるものと思っていたら、筆者の見た限り、載ることはなかった。(説明会終了後に、「載ります?」と問うたところ、「載ると思います」との返事だったのだが...)
6/4、西ヶ原の不発弾(長さ約40cm)とはスケールが違う。信管を抜いて処理することになるので、爆音はしない訳だが... |
「戸別訪問で伺う内容」も示された。筆者はあいにくお伺いを受けることはなかった。 |
今は、特設サイトも何もなく、拾える情報は、
赤羽北1-22地先における不発弾の発見について
赤羽北1丁目22番地先で発見された不発弾について【第2報】(不発弾処理に伴う事前工事の決定)
赤羽北1丁目22番地先で発見された不発弾について【第3報】(弾種特定及び不発弾処理実施日の決定)
11月17日(日曜)、不発弾処理を実施しました
といった程度。大っぴらにするものでないのはわかるが、説明会資料を含め、作り込んだものはできるだけ公開&キープしてほしいと思う。他の自治体にとってもきっと有益な情報になる筈だ。
広く周知すればいいという訳ではないのは、防犯面からわからないでもない。特に警戒区域の情報は、一帯が一斉に留守宅になることを知らしめてしまうことから、要注意。ただ、周知を抑えること=犯罪予防、というのは結びつかない訳で、どうあっても当日は万全の防犯体制で、と思う。
11/17当日は、「防災北区」の広域アナウンスで起床し、9時前に「避難」を開始した。規制がかかる前に、不発弾現場を経由しつつ、警戒区域を横断しながら、赤羽岩淵駅方面に向かったが、途中、相当人数の"関係者"を見た。区職員、警官、警備員などである。これなら不安はない、と思うものの、それだけ人数がいると「なりすまし」も出てくる?と要らぬ心配をしてしまうのだった。
いよいよ当日。新河岸川も現場も予想に反して静か。 |
現場付近の関係者は少なめ |
9時過ぎの様子。処理は2時間後。 |
「青色パトロールカー」も巡回 |
その時、街は空っぽになる(関係者を除く)。道路はもとより、荒川、新河岸川の航行も止められる。ただし、上空から来る何か、というのは想定外だろう。上から急襲し、虚を衝くというのは映画の世界ではよくあるパターン。その辺りの対策、実際はどうだったのだろう。
避難したフリ(居留守)、というのも大いに有り得る。潜伏していて、何かやらかすパターンである。居たとしても、"不発"だったことを願うばかりである。
説明会で複数から質問が出たのがこの件。過去に不発弾処理が失敗した例がないらしく、答えようがないのというのはごもっともだが、同じ爆弾、または同等のものを爆破したらどうなるか、とのシミュレーションは出せたのではなかろうか。
避難対象が現場から半径500mという数字がある以上、何らかの根拠はある。説明会では、人への被害が及ばない範囲との話だったが、となると、建物はどうなのか、大型ペットはどうすればいいのかといった具合で疑問が次々と出てくる。建造物については、万一被害が出たら「災害対策基本法」がカバー云々とのことだったが、どうも弱い。一つ明確だったのは、北区が何かを補償することはない、ということだけ。
東京都、国土交通省など、現地に関係しそうな行政機関の名前が出てくることもなかった。総じて、想定が甘い印象を受けた。
天候急変時の対応
救急・消防など、区域内で緊急自動車が出動する事態になった時の対応
どうしても避難したくない、避難できない人がいた場合の対応
避難途中の急病、不慮のケガなどの対応
...
概ね大丈夫とわかっていても、あらゆる事態を想定するのが筋というもの。今回のとりまとめは、「北区役所危機管理室危機管理課」だった訳だが、言い換えれば「リスクマネジメント」そのものである。そのマネジメントがどこまでできていたのか、区の広報等がないので今のところはわからない。事後談でも何でもいいので、マネジメントレポート的なものを見てみたいとは思う。
何はともあれ、処理は終わり、今は至って平穏な地元界隈である。護岸工事もとっくに再開されたことだろう。同じ場所でまた見つかったりすると厄介だが、次はより確実にやってもらえるものと思う。
不発弾処理以前に、不発弾そのものが「べからず」であることを付け加えて、お開きとします。
(おまけ) 前日(11/16)〜処理日当日(11/17)の様子いろいろ
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(1)〜(3):前日(11/16)の現場付近 |
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赤羽岩淵駅前のジョナサン。当初、ここで避難・待機するつもりだったが、10/27に店じまいしていた。(思わぬところで不発) |
(4)〜(10):環八通りと赤羽交差点付近の様子
ちょうど通行止めがかかる頃合だった。(7)は、通行止め前の最終一般車両 |
赤羽駅北口改札前 |
運休時間にあたる11時台は列車の発車なし |
宇都宮線、運休前最終列車。発車時刻10:52のところ、11時の発車になった。 |
運休時間帯は、振替乗車が実施された。埼玉高速鉄道と東京メトロ南北線は、警戒区域にかかっていたが、地下なので対象外。 |
(まとめ)
不発弾:米国製2000ポンド普通爆弾(全体重量約1トン)
発見場所:北区赤羽北1−22地先 処理当日の流れ ↓
避難対象:3,200世帯、約6,800人 列車運休状況 ↓
11時過ぎから約1時間、京浜東北線、宇都宮線、高崎線、湘南新宿ラインが運休。約33,000人に影響。
参考動画:「赤羽北の不発弾処理 住民一時避難し無事終了」(TOKYO
MX NEWS)
不発弾に関するQ&A(北区) → PDF
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