第285話 客商売における「べからず」五選(2009.7.15)
今回の「べからず集」は、業種横断的に「客商売におけるべからず」。と言っても、店員のちょっとした不注意や不行き届きをどうこう言うつもりはなく、よりタチの悪い例を挙げたいと思う。店や会社の都合が露骨、または意地の悪さ(意図的・作為的)が目立つ、そんな例である。
で、具体例を並べてみたところ、いくつかの傾向・類型があるらしいことがわかった。集約するなら5つ。これまではワースト10方式だったので変則的ではあるが、この方が直感的でわかりやすいと思われる。(どれも似たり寄ったりなのでランク付けはなし)
圧力
競争が激しいので、落ち着いて考えることができないのだろう。量販店の店頭で日々ワイワイガヤガヤやっているのが、ネットブック+データカード系通信業者の類であるが、ここの店員の無為・無思慮ぶりは目に余るものがある。デモ用・お試し用で置いてあるはずのネットブックだが、これを使わせたいのかそうでないのかがまずよくわからない。
Yahoo!の画面が開いているPCがあるとする。その前に立って、何となく操作を始める。するとどこからともなく説明員が現れて、圧をかけてくるのだ。通信速度がとりあえず速いとされている「イー某」は、試す間もなく声をかけてくるケースが多く、第一声は大概「速いですよね」と来る。こっちはろくに動かしていないので「わかりません」と答えるしかないのだが、思うにこれは単なる妨害? そう邪推したくもなるのである。(同じ速いでも店員の速さは客として求めるところに非ず) 店によっては説明員が何人もいてウロウロしているのを見かけるが、あまりに非効率。誰か一人が離れたところからデモPCの様子を見て、例えば2分経ったくらいで声かけするとかすれば済む話ではないだろうか。(「今、試してますので...」を3人の店員に対して伝え、待ってもらったこともある。) そんなこんなで最近はすっかり懲りてしまったので、イー某についてはそれらしき人物が近づくとすかさず立ち去るのを心得としている。声かけしないと仕事にならない、というのはわかる。悪質な客がいて、こういう対応にならざるを得ないというのもわからなくはない。それでも、そのタイミングや話の切り出し方がどうにも好かないのだ。圧力をかけるような態度はどうかと思う。
(参考)別の業者ではこういうことがあった。(→今では改善済み)
2009/2/11筆者問合せ |
2009/2/12業者回答 |
・データカードを使ったインターネット接続のお試しを店頭でよくやってらっしゃるので、他社サービス(特にネットブック)との比較の意味でその操作性や速度を時々試させてもらっています。
・本日2/11の15時過ぎ、△△店1Fの同コーナーがたまたま空いていたので、特定のページから特定のクリックをいくつか試し、そのアクセス時間を調べていたら、店員さんが近づいてきて「データカードのご説明を...」とのことだったので、「あとでいいです」(つまり操作を試した後で説明を求めたい)と返事しましたら、「ここは通路」「プライベートでの使用の場合、他のお客のジャマ」と強い調子で言うので、ビックリさせられました。
・いつもなら時計を片手に、検証していることがわかるようにしているのですが、今日は通路の出入りが激しく、こちらも気を遣って邪魔にならないように態勢を変えたりしていたので、それができず、店員さんに誤解を与えてしまったようです。
・いずれにしても十分な確認もないまま「プライベート」云々と断じた上、人を「ジャマ」呼ばわりする態度は承服しかねます。こちらもその場で抗議させていただき、然るべき陳謝も受けましたが、今後同じようにイヤな思いをするお客が出ないために、以下の提案をさせていただきます。ご参考までにお取り計らいください。
1.通路の妨げになる場所にお試しコーナーを設けない
2.メールやチャットなどプライベートで使う客が出るのを防ぐため、PC周りにことわり書きを付しておく(あるいは、コーナーの趣旨を明示する)
3.それが難しいようなら、いっそこうしたコーナーは設けない
・通勤途中で通ることがあるため、本店は時々立ち寄りますが、他の日時だと店員さんが同コーナーに張り付いていて、ある時などYoutubeで動画を楽しんでおられるようでした。(今日もYoutubeは開いた状態) 動画が見られる環境というのをPRするため、と解釈したいところですが、単に店員の娯楽用として置いてあるのであれば考え物ですし、まして客が試しに使うのを拒んでいるのだとすればなおさら問題だと思います。(今日の一件は「店員は使ってもいいが客はダメ」と言っているようなものです。)
・とにかく貴社の同サービスは使う気がなくなりました。毅然とした対応は感心しますが、売場での対応はより慎重を期したいものです。重々お気を付けいただくことを切望します。 |
○○ショップでは、お客様の立場に立った、正確かつ迅速で明朗な対応を心がけておりますが、この度は、○○ショップ△△店および店員の対応について、ご指摘をいただく次第となり、大変申し訳なく存じます。
この度お客様よりいただいた、○○ショップ△△店のにお試しコーナーの設定状況などや店員の対応については、担当部署へ報告を行い、教育・指導を一層強化してまいる所存でございます。
お客様には、ご不快な思いをおかけし誠に恐縮でございますが、弊社といたしましては、お客様にご満足いただけるよう、カスタマーサービスの向上ならびサービスの提供に努めてまいりますので、今後とも○○をよろしくお願い申し上げます。 |
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この2業者については、比較的緩やかに試させてもらうことが可能(通信速度もまぁまぁ) |
専断(=店都合)
これはどの店でも共通、つまり会社方針と思われるので店名を明かそうと思う。ワンコインランチでおなじみ「さくら水産」である。ご飯などのおかわり自由もあり、それなりに満腹になるため、500円相当のサービスというのはこういうもの、と妥協すればいい話ではあるのだが、神保町でも本郷三丁目でも市ヶ谷でも半蔵門でもとにかくどのさくら水産に行っても必ず「こちらの席で」と強要されてしまうのはいかがなものかと思う。
ランチタイムは14時までだが、時間までに入店すればある程度はいられる。それでも時間前からそこここと片付けは始まり、落ち着かないのが常。片付けを進めやすくするには客を一定のエリアに固めておくのが得策な訳だが、それはあくまで店側の論理。とにかくどんなに空いていても、客を分散させることなくひたすら集中させるのだ。一人客=カウンター、というのはある程度はわかるが、遅くに来た一人客を次々と狭いカウンターに押し込んでいくような捌き方はいただけない。まして、その卓に「ご自由にどうぞ」の品々(卵、海苔、ふりかけetc.)がなかった時には「何のための集中か!」と一喝したくもなるのである。
挨拶の励行も他店より秀でているし、接客態度が総じて悪くないだけにこの「着席指示」がどうにもやりきれなかったりする。
軽視・軽侮
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ファストフード店において一列待機でない店は多々あるが、公平を期すべき工夫というのがあって、概ね「お先にお待ちのお客様」と声かけすることで何とかなっている。ところがMで始まるおなじみ某店ではこの声かけがなされないことがあり、筆者は時に割を食う。客への目配り・気配りができていないことを示す一例だろう。
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デパ地下を歩いていると、試飲や試食を勧めるのに出くわす。ところがターゲット客とそうでないのを選別しているらしく、筆者などはこれがなかなかありつけない。この意味するところは何か? プロの勘のようなものがあるにせよ、選別とは即ちどの客も軽視している、ということではないだろうか。
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池袋東口にある「宮城ふるさとプラザ」は、入ってすぐのところでよく大盤振る舞いをやっているが、ここも例外ではない。しっかり目を見て呼吸を合わせているのに渡さない店員がいるのである。よほど問い質してやろうかとも思ったが、どうということはない。行かなければいい、ただそれだけのことである。
→今は「試飲会」実施中。(試食でなければ大丈夫?)
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分煙が不完全なのに、堂々と禁煙席を語る店はまだまだ多い。特にファミリーレストランでは曖昧な店ばかりなので、まずは自分で煙から遠い席をしっかり見定めてから入店するようにしている。きちんと仕切るのが難しいのはわかる。ならばせめて表現を変えてはどうだろう。煙の近くはズバリ「弱煙席」。禁煙席とは区別してほしいものだ。
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さて、客軽視の最たるものはやはり「挨拶なし」だろう。某クイックメニュー業態店では示し合わせたように挨拶不励行(または無礼講?)が続いたので、さすがに投書することにした。そのやりとりは以下の通りである。
2006/6/9筆者問合せ |
2006/6/13業者回答 |
□□店に限らず、●屋はどこの店舗に行っても、挨拶がきちんとできていない印象が強いです。入店時はまだしも、店を出る際の「ありがとうございました」はまず聞くことがありません。(出る際に声がかかるのは、概ね10回中、1回程度。□□店でまた記録を更新し、ここ6〜7回連続で挨拶なし。)
いそがしいのかも知れないですが、客の出入りに関心が向かない・目線を向けない、というのは接客業における基本ができていないのと同じであり、お客に対して不敬千万。総合的なサービスの質も当然落ちてきます。入店時の挨拶すら散漫なところは、概して店内の清掃状況やカウンター備品の手入れもだらしないことが多く、「まぁそんなもの...」と諦めています。せめて、挨拶はしっかり励行して、印象を良くしてほしいものだと思います。(より良質なクイックメニュー業態店は他にいくらでもあるのですから。) |
平素は●屋をご利用いただき厚く御礼申し上げます。この度はメールによる貴重なご意見ご感想をありがとうございました。
はじめに、従業員の教育不足により、ご不快な念を生じさせてしまいまして、誠に申し訳ございませんでした。
早速ご指摘を頂戴いたしました□□店へは、店舗責任者をつうじまして、同様のご指摘を頂戴することの無いよう、お客様より頂戴致しました貴重なご指摘を、今後の店舗指導に活用させて頂きます。
多々至らぬ点はございますが、お客様のご期待に副えるよう努力してまいる所存でおりますので、今後とも変わらぬご愛顧と、ご指導ご鞭撻の程、よろしくお願いいたします。 |
この後しばらくはどの●屋に行っても店を出る際の「ありがとうございました」が聞かれるようになった。投書が少なからず貢献したものと思いたいが、はたして?
制限・制約
クーポンの類は時にトラブルのもとになる。決して間違った使い方をしている覚えはないのだが、難癖を付けてクーポンを反故にしようとする店が少なからずある。こちらも傾向がわかってきたので最近は遭遇しなくなったが、かつては、@「ランチタイムは除く」と書いていないのに適用外にしようとした、Aドリンクサービスの適用例を予め聞いて頼んだのに、会計時にそのドリンクは別と言い出した、B予約時にクーポン利用の旨を伝えたのに、当日になったら予約したコースに最初から特典が含まれているとか言い出してサービスをゼロにしようとした、というのがあった。クーポンを使う客はとにかくその店をめざしてくる訳だから考え方によっては上客である。それを無下に扱おうというのだからいい度胸である。
*案の定、潰れてしまった店もあるが、しぶとくやっている店もある。Aでひと悶着あった例としては、ここ、Bはここを指す。くれぐれもご注意を。
悩ましいのは、アリオ川口の例だろう。併設する映画館にて「映画サービスデー」など特定の日に鑑賞し、その日の半券を協賛店舗に提示すると各種特典が受けられるという「シネマ・デ・ラッキー」という設定があるが、これがとにかく使えない。2008年9月1日はフードコートの某店で渋る店員と交渉して何とかドリンク一杯を勝ち得たが、よくよく考えると「なぜ客が交渉しないとサービスを受けられないのか」に尽きる。去る7月1日は「モールのセール期間中(今回は6月24日〜7月20日)ならびに土曜・日曜・祝日の場合は、映画の割り引き以外の特典は行わない企画」ということで今度はアウト。店内ではさんざん「シネマ・デ・ラッキー」のリーフレットが配られていたので、事情がわからないと痛い目に合う。ホームページなどで事前にしっかりチェックしてから臨むことを強く推奨したい。
→ホームページの「What's
New」には確かに出ているが、店内ではここまで明示されてはいなかった。
欺瞞・偽装
会計後のレシートを見てびっくりすることがままある。最もひどかったのは「いろはにほへと」青山学院前店(とうの昔に閉店)だろう。青山在勤のある日、大勢で打上げをやった際にそれは起こった。クーポン&会計担当だった筆者は頼んでいない品が飄々とレシートに打ってあることをその場で発見。クーポンによるサービスを払拭してあまりあるその粉飾会計にさすがに頭に来て、過剰請求分を即刻返金させたのだった。
外食においては何かとリスクがつきまとうが、見本と明らかに異なるのが出てくるのは如何ともしがたい。顕著なのはこの「万博カレー」の一件だろう。
欺と偽の2つのギ、さらに付け加えるべきは「疑」か。3つ合わせてギギギ。おそらくこの手の事例が最も多そうだが、今日のところはこの辺で。
結局のところ、食ネタ中心になってしまったが、この5つの「べからず」は他業種にも通じるところ大だと思う。あまりに理不尽な待遇だった場合は遠慮は要らない。特にホームページを持つ相応の企業の場合は、ホームページ中「問合せ」(フォームメール等)を探し出し、一筆投じるに限る。この時、@できる限り細かく(5W1H等)事実を書くとともに、A建設的な提案をふまえつつ、B回答を引き出しやすいような書き方で、が望ましい。(かく云う筆者は、年に5回はこのパターンで「問合せ」している。店のため、他のお客のため、と心しているつもりだが、どうだろう。)
*次回の「べからず集」は15話間隔を保つとズバリ第300話に当たりますが、「続 東京百景」をかねてから予定しているのでシフトします。(気が変わらなければ、第315話あたり?)
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