随筆「東京モノローグ2009」(9−10月期)
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ソーラーパネルを見学しに来るだけでも来店する価値はある?第290話 東京ベイエリア petit エコツアー〜若洲、高洲、検見川デニーズ...

1989年の赤坂見附にて(サントリー美術館と赤坂プリンスホテル)第291話 平成元年 其の三

冷房設定がCOOLだから「COOLBIZトレイン」という訳ではないけれど...第288話 クールなCOOL BIZトレイン

京成電鉄創立100周年記念列車出発式と「青電」第289話 京成線1988〜2009

第291話 平成元年 其の三(2009.10.15)

 第275話第283話に続く「平成元年」シリーズ。今回は緩めに第275話で紹介しきれなかった比較写真を中心に(当時の記録を交えつつ)チラホラと。


  • 平成元年3月23日 → 平成21年5月13日:神宮前交差点

 東横線の代官山駅が新しく移った日、筆者は自転車で同駅を訪れ、その延長で恵比寿や六本木や表参道を巡回。17時過ぎに神宮前交差点を通った時に撮ったのがここ、原宿セントラルアパートである。1999年には「t's harajuku」となり、かれこれ10年が経つ。

 建物以外にも、電線がなくなっていたり、街路樹が高くなっていたり、とにかく変化が目に付く。写真ではわからないが、この下に副都心線の駅ができたのも一大変化である。


  • 平成元年4月6日 → 平成21年10月12日:銀座四丁目交差点から和光方向

 日比谷、銀座、日本橋と散策。第256話で紹介した「ぴあmap’89」を買ったのはこの日のことである。

 半年ずれてしまったが、一応20年での比較写真。12時ちょうどと15時ちょうどでの比較なので、時間的にも差があるが構図はほぼ同じ。山野楽器が立派になり、三越も化粧直しし、Kodakの看板がSEIKOに変わり、営団地下鉄は東京メトロになるなど、パッと見でもいろいろな違いが見てとれる。きれいになったが、見た目が同じなのが和光。街灯の格好も不変である。この景色あっての銀座というのを改めて実感する。


  • 平成元年4月15日 → 平成21年2月26日:市ヶ谷橋から見たJR中央・総武線

 市ヶ谷見附や印刷局記念館に行った日。市ヶ谷橋から電車を眺めていたら、黄色・朱色・黄色とつながったのでここぞとばかりにシャッターを切った。(今年撮りに行った時はなかなかこうした並び方にならなかったので、やむなく中央線快速のみ撮影。)

 車両はもちろん変わった。電車の架線柱がシンプルになっているのも時代の流れと言える。だが景観的には大きく変わった点は見受けられない。線路沿いの高台に建つビルの数が増えている程度である。


  • 平成元年7月28日(京王プラザ?) → 平成21年9月1日(工学院大学):新宿駅西口の眺望

 当時の京王プラザホテルにはスカイプロムナードなるものがあって、新宿駅の西口を見下ろすことができた(記録帳による)。今、同じ眺望を楽しむには、有料のスカイラウンジ(45階の場合→参考に入店する必要がある。世知辛くなったものだ。という訳で、かつて見下ろしていた手前の四角い建物(工学院大学)に今回は上らせてもらって撮ったのが右下の写真。見下ろす位置や角度が異なるため、単純に比較照合できないが、明治生命が明治安田生命になっていたり、ハルクとエルタワーがよく見えたのがコクーンタワーの出現で見えなくなっていたり、というちょっとした変化はわかる。昔の京王百貨店(右中央)には模様がついていた、というのは今回気付いた。


  • 平成元年8月11日 → 平成21年10月1日:旧常盤橋と日本銀行

 鳩の襲来に遭って、思うような角度で撮れなかったが、橋の佇まいは今も昔も変わらない。変わったとすれば、鳩が世代交代していることと、日本銀行本店(旧館)の見え方(木の高さ含む)くらいなものか。ちなみに日銀を隠してしまったのは、このレンタルオフィスである。


  • 平成元年8月12日 → 平成21年10月10日:芝大門と東京タワー

 門までの距離が異なるため、建物の入り方も違っているが、かつては昭和電工ビルとIKEDA BLDGの間に建築物はなかった。今は芝大門フロントビルというのが両者の間に入り込み、景観を変えている。(写っていないが、昭和電工ビルは今も同じ場所にある。) 東京タワーの外観、街灯の背丈、左側の建物なども変わったが、六本木ヒルズが出現したというのが最たる変化だろう。


  • おまけ1

 20年前の写真を再びいくつか。

 この日は永田町、赤坂、霞ヶ関などを探訪。国会図書館、吉野家本店、石油資料館を廻って、赤坂ツインタワーに到着。タワーの一つ、アーク森ビルにあったINAXのショールーム(XSITE)などを見学した。(平成元年3月14日)

 天気がいい日曜日。自転車で遠出し、代々木公園(都民グリーンフェスティバル)、高橋是清記念公園と走ってきて、赤坂見附に。サントリー美術館では「マーラー特別展」を鑑賞した。(5月14日)

 東急世田谷線 下高井戸駅にて。今では駅舎も車両も変わり、同じ光景は見られない。20年という時の重さを感じる一枚。(8月10日)

  • おまけ2

 当時はあまり意識していなかったが、今年2009年に「20周年!」と謳っている施設等は、いずれもデビューが平成元年ということである。筆者が最近目にしたものとしては、以下の3つがある。

 Bunkamura(文化村)にて

 わたらせ渓谷鉄道も20周年(先の「鉄道フェスティバル」で入手)

 エコマークも2009年2月で20周年を迎えた。(10月8日の記念講演会で入手した記念冊子)
参考記事

 葛西臨海公園もそうだし、横浜系で3つ横浜アリーナ横浜美術館横浜新都市交通(シーサイドライン)、平成元年デビューのものがあった。他にもいろいろ出てきそうだが、今回はここまで。比較写真ネタは1989年秋以降の分がまだ残っているが、現在の様子を調べに行く時間が確保できるかどうか微妙なので、とりあえず見送り、ということであしからず。_| ̄|○

  • 1988〜1989シリーズ

第256話 昭和63年 其の一 / 第264話 昭和63年 其の二 / 第275話 平成元年 其の一 / 第283話 平成元年 其の二

 

第290話 東京ベイエリア petit エコツアー(2009.10.1)

 クルマを使わないと行けない場所というのがある。バスを使えば行けなくもないが、そういう場所が複数ある時は時間が足りない。点を線にするにはやはりクルマなのである。遠方から眺めるだけだった風力発電施設、新浦安まで行ってバスに乗らないと行けないケナフ畑、そして国道14号(千葉街道)沿いにあるファミレス、少なくともこの3カ所を掛け持ちするにはクルマを借りて行った方が手っ取り早い。かくして、8月に二度お世話になった中古車レンタカー(→参考を今回も使い、有志で見て廻ることにした。言うなれば"プチエコツアー"である。

 中古車なので気が楽、料金も安い(全車ETC付き)、営業所はガソリンスタンドと一体なので返却時の給油も楽々(しかも会員価格)と、ありがたいことづくめ。今はとにかく人気があるので、朝早くからは借りられず、この日の予約成立は11時〜だった。

 行先がベイエリアなので、アクセスのしやすさも考えて、京急大森町の営業所で借り、平和島のバス停でPさん、Lさんと合流し、出発。9月28日、つまり月末最終週だったせいか、トラックの往来がやけに多く、環七通りの末端(大和大橋手前)までは順調だったものの、その先からはノロノロし始め、城南島への右折付近で完全に渋滞モード。バスでは通らない道、ということで選んだのだが、さすがに読めなかった。

 城南島の先には臨海トンネルがある。東京湾の下をくぐって、お台場に抜けられる訳で、行先表示は「臨海副都心」。もっと一般車が通っても良さそうだが、トラックやトレーラーに挟まれる格好になり、何とも心許ない。渋滞を抜けた後も、おそるおそるではあったが、トンネルに入ればスイスイである。中央防波堤まではそれほど時間はかからなかった。

 当初は、この見学案内に従って、東京都環境局の中防合同庁舎の見学というのも考えていた。このトンネルを出た先を左折後、その合同庁舎に出るにはすぐ右折しなければいけないのだが、これがNG。またしても右折車渋滞が生じている上、「関係者車両以外、進入禁止」となっていたのである。

 右折ができないと、そのまままたトンネルに直行せざるを得なくなる。第二航路海底トンネル、そして東京湾岸アンダーである。気が付けばお台場、という有様で、アンダー出口はもう東京ビッグサイトの手前。一般車だと中央防波堤どころではないことがこれでわかった。(おとなしく都バス[波01]で行くのが無難のようだ。)

 いったんトラック群から解放されたものの、東雲鉄鋼団地〜新末広橋〜新曙橋と通る間はまたしてもトラック渋滞につかまる。どうも東京湾岸はトラックだらけのようである。何だかんだで新木場の駅前に着いた頃には12時。途中でクルマを降りていないので、普通に走っても平和島〜新木場はクルマで1時間、ということになる。

 とにかくここまで来れば、若洲をめざすばかり。その若洲にあるのが風力発電施設である。東京ビッグサイトや京葉線から眺めてはいたが、実際に直下を訪れるのは今回が初めての筆者。勝手がわからないので、その巨大なプロペラを目印にひたすら南へ向かうのであった。

橋梁、プロペラ、飛行機... 何とかプロペラの下にはたどり着くも、公園の入口が見当たらない。仕方がないので、施設を取り巻くようにクルマを走らせていたら、若洲海浜公園の裏の端に来てしまった。海(京浜港)がよく見えるので、ちょっとした行楽気分には浸れたが、巨大な橋が建造中で、その橋の向かい側、つまり中央防波堤では風力発電のプロペラが二つ堂々と回っているのだから、落ち着きようがない。(あとでわかったのだが、この橋、「東京港臨海道路」の橋梁部だった。城南島と若洲がこれで結ばれる、つまり、橋ができていればもっとすんなり来ることができた訳だ。)

ブレードが描く円の直径は80m! 再びぐるっと回り込んで、やっとこさ発電施設の前に到着。あいにく風速が1.3m/sだったので、ブレードの回転(4m/s以上が必要)は見られなかったが、タワーとブレードを足した高さ100mという雄姿を真下から見上げることができたのは良しとしたい。

 環七通りは平和島六丁目が起点ということになっているが、東京港臨海道路ができると若洲が、いやこの道路の先、新木場とか夢の島が起点になるのでは、とか思いながら今度は北上。湾岸道路に出て、荒川を越え、京葉線沿いにひたすら東へ進む。

ケナフの向こうは海 詳しい地図を持ち合わせていなかったが、舞浜を過ぎたところで湾岸道路を下りて、ひたすら海をめざせば高洲に出ることはわかっていたので、またまた右折渋滞に並びながらも「鉄鋼団地」方面を進んだら、これが大当たり。浦安南高校が見えたら、その先ちょっと。見事、高洲海浜公園に行き着いたのである。第286話でケナフ畑の一件を紹介したが、とにかく現物を見るには至らなかったので、ここでケナフに対面できたことは快挙以外の何物でもない。本数や背丈は想像したほどではなかったが、9月の終わりにして、この生育ぶりは目を見張るものがある。(ケナフ事情については、こちらをどうぞ)

 当地に着いたのは13時。若洲から高洲は30分ほどだった。(往路途中までの行程は上図の通り)

 新浦安駅行きのバスに途中までついていって、少々曲折しながら再び京葉線沿道に出る。市川塩浜駅を回り込んでから、塩浜交差点に出て、あとは湾岸道路をひと走り。が、ベイエリアならでは、というか千葉県の国道はどこかしら渋滞するもので、船橋の西浦だったり、海老川大橋付近だったり、どうやら今度は左折渋滞に引っかかっていたようだ。ららぽーとを横目に見ながら、国道14号(千葉街道)へ。次の目的地は、デニーズ(新)検見川店である。

 旧店舗が500m手前にあって、思わず入りかけたが、無難に切り抜け、リニューアル検見川店に。最寄駅は幕張(JR・京成)、住所も千葉市花見川区幕張町だが、何故か検見川。とにかくここがデニーズ初のエコ実験店舗だというので、わざわざやって来た、という次第である。

 冷夏や衆議院議員選挙の影響もあって、8月の全国百貨店売上高は前年同月比8.8%減(1965年の調査開始以来、8月の下げ幅としては最悪)、外食産業市場動向調査でも、8月は外食チェーン全業態の平均で前年同月比3.6%減、特にファミリーレストラン業態の売上高は7.2%減と、不況感を反映する統計値が依然として続いている。

 奇しくもこの9月28日は、筆者地元のデニーズの閉店日(営業最終日)。他にもレストランの閉店が後を絶たないのはそんな景気動向の表れと言えるが、逆にオープンする店もある。その一つがこの検見川店7月27日開店。新規出店ではなくリニューアルオープンな訳だが、ただのリニューアルではなく環境配慮をふんだんに盛り込んでいる点が違う。生き残り策と考えられなくもないが、環境配慮型商業施設(またはエコストア)などはあっても、ファミリーレストランでの実践例は珍しいし、環境とサービス業の両立を模索する上でも意義深いと言える。

 エコタイプというテーマがそのまま店の雰囲気づくりに直結しているためか、他店では感じられない落ち着きや心地よさを感じた。店長さんに何気なく話を聞いたところ、今ではすっかり落ち着いたとのことで、接客にも余裕が感じられた。(今回の写真撮影も快諾していただいた。ありがとうございました。) シルバーウィークの午後は閑散とする時間帯もあったそうだが、総じて好評で、この日同様、午後は概ね満席とのこと。飲食の楽しみもさることながら、快適さを求める客のニーズをとらえた結果と言えそうだ。環境配慮を強調しなくても、しっかり環境のことを考えた店づくりをすれば、居心地の良い店となり、客も自ずとついてくるのである。

 雰囲気づくりにひと役買っているのは、LED照明だろう。料理を美味しく見せる効果が得られるよう改良したというが、注目すべきは省エネ性。蛍光灯やハロゲン球の従来型の店内照明と比較して約44%のCO削減を見込む。看板灯など外部の照明も含め、全てLEDということから、その徹底ぶりは賞賛に値する。(「高くてもエコ」の好例) 窓ガラスは二重のペアガラス(エコガラス)を採用、空調システムは従来より省エネタイプのビル用マルチエアコン(うち1台は自動清掃機能付き)、トイレは最新の節水型で水使用量は従来比で約45%減、客席からは見えないが、厨房設備も工夫しているようだ。(賛否あるが、IH調理器をはじめとするオール電化厨房を導入。ただし、オール電化厨房は先例あり。)

 緑色に光っているのが自動清掃機能のセンサー

 LED下の日替わりランチ

 9月28日は晴天、27℃、発電量も上々

 ソーラーパネルを間近で見学したい人もやってくる?(「エコ集客」も実験のうちか)

 最たる特徴は、ソーラーパネルを大がかりに導入していることだろう。店舗の屋根はもとより、駐輪場の屋根などにも設置し、太陽光発電で得た電気を店内照明に利用している。レジカウンター後方には発電量を表示するパネルが設けられており、会計時に目が行くようになっている。話題性や啓発効果も十分という訳だ。

 14時過ぎに入店し、ランチをいただきつつ、店内には1時間ほど滞在。15時過ぎに店を出たが、出庫したのは15時半。すんなり出られなかったのは、店の外にも見るべきものが多々あったからである。説明を読み込まないとなかなか理解できないが、大気中の熱を利用した給湯システム「業務用エコキュート」、雨水を溜め、除菌&濾過する装置(その水は主に屋外散水に使用)、太陽光発電装置一体型の外灯、廃材を混ぜ込んだ店舗外壁などである。設備は割と大がかりなので、しっかり設置するには相応の敷地がまず必要で、さらに太陽光発電の効率を確保するためには日射が豊富な立地(できれば南向き)である必要がある。今後につなげるためには、そうした条件にかなった場所を探す苦労が伴う訳だが、郊外型のレストランであれば十分可能と思われる。

 雨水利用・散水システムの大型タンク

 パッと見は極めてコンパクトな検見川店

この構造だとどうしても煙が流れてきてしまう... 料理そのものの環境配慮(フードマイレージの考慮or表示、食べ残しの有効活用等)、テーブルやイスなど客用設備の環境配慮の明示、トイレ水流への雨水利用など、さらなる環境対応に向けての余地がまだまだあるのは確か。すぐにでもできそうな改良点としては、プラスチック箸の常備(筆者はこの日、マイ箸を使用)、分煙の徹底(または全面禁煙化)が挙げられる。ただそうは言っても検見川店はあくまでCO排出量削減の実験店舗という位置付けである。実験結果を見ながら段階的に環境配慮を深めていく、ということと考えたい。持続可能なエコ実験とはそういうものだろう。

ヨシ原、干潟、東関東自動車道... 第289話で紹介した京成線の往年の列車カラーシリーズは、京成千葉線なら遭遇確率大ということで、帰途に習志野市役所近くの踏切で10分待ってみる。10分に一本だからやはり早々お目にかかれるはずもない。15:59 津田沼発 ちはら台行きを一つ見送って、さっさと次へ。せっかく千葉まで来たのだから、帰りに谷津干潟に行かない手はない。同行のお二人を翻弄しつつも、あてずっぽうに走っていたら、ちゃんと干潟の端っこに着いていた。さらに干潟中央部(習志野市谷津3-5界隈)に行ってみたら、「干潟体験ゾーン」の出入口に出くわしたので、ここでしばし休憩&見学。出入口はふだんは閉まっているのだが、開いていたのは役所関係者らしき一行が調査をしていたためで、干潟に下り損なったのは、一行がちょうど戻ってきたからであった。干潟の日に合わせて、観察会があることを教えていただいたので、機会があれば再訪しようと思う。

 16時半に谷津を出て、来た道を戻る感じで湾岸道路からレインボーブリッジへ。17:45には三田を通過していたので、所要時間としてはまぁまぁだろうか。クルマを借用した時間は8時間。走行距離は約120kmだった。

 ベイエリアには他にも三番瀬、市川野鳥の楽園、新砂干潟などがある。公共交通利用がベターだが、一気に巡るにはやはりクルマの出番だろう。格安のレンタカーで、エコドライブを心がけながら計画的に...今回のレポートを参考に皆さんも一つお試しの程を。

  • こちらもどうぞ ⇒ ベイエリアが出てくる話題

第30話 11月の寒空と晴天と / 第126話 埼京線、南へ / 第132話 立会川、ボラちゃんレポート / 第137話 タクシー地名考(羽田空港編) / 第212話 PC等リサイクル施設の今 / 第234話 車内で買えない?京急バス一日乗車券 / 第267話 水と公園と海と

 

第289話 京成線1988〜2009(2009.9.15)

 東京生まれの筆者だが、少なくとも10才になる前までにご縁がなかった私鉄が一つあって、それが京成線だった。総武線から並走するのを見たり、京浜急行に乗った際、乗り入れで走っている車両を見た程度で、京成線の駅で乗り降りしたことはなかったのである(と記憶している)。

 京成線に乗車したのは東京に戻ってきてからのことで、記録帳に従えば昭和63年(1988年)の2月23日、京成上野から博物館動物園(1997年営業休止、2004年廃止)までの一駅、というのが最初。その後、9月10日には新三河島〜町屋、関屋〜青砥、立石〜曳舟、9月13日に金町〜柴又、高砂〜市川真間、中山〜船橋、新津田沼〜千葉中央、1989年6月11日は金町〜堀切菖蒲園、20年前になるが9月5日は、JRとの乗り換えがしやすい駅を狙って、新千葉、千葉、幕張本郷、津田沼、東中山、八幡、国府台、小岩、お花茶屋、千住大橋ととにかく乗り降りした。東京の私鉄にしては洗練されていない感じがよく、それは街々にも表れていた。いい意味でローカル観があり、飽きることがなかったのを憶えている。(当時はまだ自動改札はなく、切符を買っては渡し、の繰り返し。それもまた妙味ではあった。)

 1991年3月19日には、成田〜成田空港(旧 成田空港駅は東成田に)が新たに開業し、その日に出かけたりもした。3月31日は北総鉄道が延伸し、高砂から千葉ニュータウン中央がつながったが、この日もいそいそと京成線に乗り、その新線区間まで足を運んだ。八広(旧 荒川)で降りて周辺を探索したのもこの道中でのことである。(→参考

 成田空港ターミナル乗り入れ記念乗車券(下半分)

 北総開発鉄道線相互乗り入れ開始記念乗車券(見開き)

 1991年はちょっとした京成YEARだった訳だが、それからはどうだろう。千葉急行が京成千原線になったとか、東成田の先に芝山鉄道が開業したとか、ボチボチか。筆者的には第128話(8.参照)にあるように、一日乗車券ツアーを堪能したりもしたが、やはりそれ以降はスカイライナーのお世話になる程度で疎遠になっていたのは確か。何かがないと乗ることがないのが京成線だったのである。

 平成7年7月7日には、777編成にちなんだ記念乗車券が出た

 京成千原線 学園前駅の外観はこんな感じ(7年前)

 ちなみにその一日乗車券の旅は、2002年8月26日のことで、かれこれ7年前。新たに乗降した駅のラストは江戸川駅になるが、それ以来、京成線に乗ることはあっても新たに下車した駅が皆無というのはいくら何でも、と思ってしまう。(純粋に京成電鉄の駅でカウントすると、64駅中53駅が乗り降り済み。残る11駅は、菅野、鬼越、海神、大久保、実籾、志津、大佐倉、西登戸、みどり台、大森台、おゆみ野である。全駅達成は近いのか遠いのか?)

 そんな京成線だが、今年2009年は会社創立100周年。記念日にあたる6月30日は火曜日だったが、とにかく都合を付けて記念行事&記念列車に臨むことにした。こうした情報を見つけてしまっては行くしかないのである。これを機に筆者の京成参りは始まった。


  • 6月30日レポート

 第268話に書いた通り、京成上野駅に出向いた際、京成パンダのストラップを買い求めたりはしたが、いわゆるオリジナルグッズはその程度。6月30日に新たに手にすることができたのは、創立100周年記念オリジナルシャープペンシル! 10時頃、改札口で配られ始めたのだが、筆者はちょうどその始めのタイミングに居合わせていたので難なくゲットできたのであった。(シリアル番号が振ってあったら、おそらく1桁だったろうと思う。)

 赤と青を強調した「京成らいん」9月号の表紙に、ストラップとシャープペンシルを並べて撮影

 ジョージアエメラルドマウンテン190g缶、MAXコーヒー250g缶、いずれも売り切れ!

 グッズとしては、パズル型キーホルダーというのもあったが、上野駅コンコースの自販機ではその対象商品はすでに売れ切れ。そもそも買うともれなくついてくる、という訳ではなかったので見送ることにした。

 あとは記念乗車券(京成上野〜京成金町 310円)があればOK。コンコースの特設売場では「全駅記念入場券」なるものも同時発売されていたが、お値段何と10,000円! とてもとても、である。それでも結構な列ができていたのは京成ファンの底堅さの表れだろう。(仮に売れ残っていたら、「鉄道の日フェスティバル」(10/10・11@日比谷公園)で再登場するものと思われる。) なお、10,000円に比べればぐっとお安い感じがするが、「100周年ワイン」(6,300円)の方はサッパリだったようだ。

 記念列車の出発までは時間があったので、他の用事を済ませてから再度上野へ。今度は駅の中に入っていないといけないので、日暮里で乗車し、上野をめざすことにする。出発式は14時なので、その前に... かくして13:50頃からカメラを構えることになるのだった。

青電到着後もなお騒然とした感じが残る 2番線ホーム、14時ちょうど発のスカイライナー27号が出た数分後のこと。記念列車(青電塗装車両)が入線してくるとホームはたちまち騒然となる。「離れてください!」のアナウンスとともに、どよめきと歓声が続く。が、何しろ4両編成なので、気付いたら停車&開扉、という状態。乗り込む客が多くないのは、車両を撮ったり、行先表示を撮ったり、が大勢のためで、セレモニーどころではない? とりあえず青電が着いてから取締役運輸部長らの挨拶は始まった。

 上野発金町行き、というのは通常ダイヤで走っているので珍しくないのだが、この記念列車は別格。金町行き「特急」なのである。その表示を撮らずして記念日も何もないだろう、というのがこの時の皆々の気分だったに違いない。

 少なからず挨拶が聞こえる位置にいながらも、筆者も同様に車両の内や外をうろうろ。満員になったら、と思うと気が気ではなかったが、思ったほど乗客は多くなく、混乱もなし。いつしか発車時刻になり、予定通り14:19に出発となった。

 車内天井には古式ゆかしい扇風機。シートの感触も昔ならでは。博物館動物園駅の遺構を通過した折には、タイムスリップ感を覚えることになる。昭和の雰囲気を楽しみたい向きにもお誂えだと思う。

 特急なので、日暮里の次の停車駅は青砥。青砥、高砂に急ぐ客はいるだろうから、それなりに乗客は増えるだろうと思ったら、これが極めて少数だった。客が少ないからではないだろうけど、音、揺れともに案外小さく、往年の走りを楽しむように列車はまったりと進んでいく。と、千住大橋で減速し、一旦停止。何事かと思ったら、後続の成田空港行き特急を先に通すと言う。特急に抜かれる特急というのはまた不思議な設定だが、これも記念列車ならではか。乗り込もうとする女性客はいたが、あいにく扉は閉ざされたまま。静かに数分が経過し、14:32、再び緩やかに走り出す。そうか、空港特急に抜かれることがわかっていたので、日暮里から乗る客がいなかった訳だ。そんなことを考えていたら、関屋を過ぎ、荒川越えとともに加速。適度な揺れ心地が逆に速度を感じさせるのだった。

 青砥ではケータイを向ける人々が増え、高砂では撮影者も乗客も増。金町線に入ると、柴又、金町と向かうにつれ、沿線の見物人は増えに増える。踏切はどこも物珍しそうに見送る人垣。「撮り鉄」の方々もとにかく多かった。今日が復刻運転初日とあらば、詰めかけるのはわからないでもないが、それにしても!である。

 本線の踏切安全確認とかで少々の遅れはあったが、ほぼ定刻に終点の金町に到着。レトロムードな小旅行はこうして終了となる。時間にして30分弱だった。

 金町駅改札を通る人は少なく、一様にホームに残っている。青電にまた乗って戻れればなぁ、という思いも皆一緒か。ホームのすぐ先の踏切がなかなか鳴らず、発車がもたついたのはそんな余念が引き止めたせいだろうか。やがて「回送」青電は今来た線路をゆっくり力強く引き返すのだった。

 その後、ごく普通の高砂行きで柴又へ。柴又下車後は徒歩で北総鉄道の新柴又へ向かうことにした筆者である。そう、すんなり帰らないのが筆者流なのだ。

  • 「赤電」をたずねて

 さて、青に続く「往年の列車カラー」は赤。真っ赤ではないのだが、とにかく「赤電」と称される。

 これが走り出すのは8月下旬から、というのが創立100周年記念サイトでのご案内。実に漠然としていて具体的な情報は見つからない。辛うじて赤電の試運転開始の報は得たので、とにかく待つことにした。となると、初日は24か25か...

列車番号1345、津田沼行き「青電」 とにかく前々から撮影スポットとして考えていた西日暮里五丁目交差点陸橋に出向くことにした。すると、狙いとしてはよかったようで、早々に青電に遭遇。6月30日は車中だったので、車外のシーンはこれが初めて。なかなかの感動モノではあった。

 これで勢いづけばよかったのだが、その後はパッタリ。京成の本線ではあるのだが、日中はそれほど本数が多い訳ではないので、時間的空白が増えてしまう。同じ場所で粘っていると虚無感が漂ってくるので、気分転換がてら藍染川西通りを新三河島方面へ向かうことにした。車窓からの眺めでなじみがあり、その鄙びた感じが佳いのがこの一帯。が、いざ下界を歩いてみると何ともせまこましていて、どこか危なっかしい印象も。京成線の高架を支える橋脚が古びた観があるのも事実で、その危なっかしさを高めている?(と言ったら言い過ぎか) 途中、JR貨物線の日暮里八丁目3号踏切に差し掛かるが、そこは見上げると京成線という好ロケーションになる。この際、橋脚がどうこうは不問とし、待機することにした。

 貨物線はこの先、田端、尾久へと続く

 こちらは日暮里八丁目2号踏切

 いい角度で列車は通るが、赤電は来ない。そうこうするうちにまず遮断することがないと思われていた貨物線の踏切が何度となく動き、貨物列車や電気機関車が通って行く。その線路の田端方向を見遣れば、遮断のバーがない踏切があって、そこを貨物専門と思われる「撮り鉄」の皆さんが熱心に撮影に励んでいる。京成電車には目もくれない様がおかしくもあり、同時に感心させられた次第。結局、赤電どころではなかったのだが、その道の撮影スポットを発見できたのは収穫だった。

 帰ってから調べてみたら、8月24日になってようやく、このような感じでアナウンスされていて、図らずも赤電の運行初日に出かけていたことがわかった。が、「通常ダイヤにて運用」と書かれているだけでは狙いの定めようがない。こうなったら、沿線ブロガー頼みだ。「鉄道コム」などをチェックしてわかったのは、日暮里界隈で見るには朝か夕方ということ、4両編成が基本となる区間なら日中に遭遇できること...大雑把なレベルではあるが、おかげで大筋をつかむことはできた。

 18時台の日暮里は、金町行きが5本出る。着いたのが遅れたため、18:20・30・42・49の4つを見送るにとどまったが、いずれもnot赤電。朝は、日暮里9時過ぎ発(877)が赤電、とのブログ記事が出てきたので、待ち構えてみたのだが、これが何故かハズレ。

 再度、18時台最初の09発(1873)に間に合うように日暮里をめざすも、あいにく上野駅で足止め(非常停止ボタン作動?)を食らいNG。これが赤電らしいことがあとでわかったものだから、余計に口惜しい。(18:20以降では出てこない訳である。)

金町線の高架化工事に伴う柱がジャマだが、辛うじて「赤電」発見! 平日の通勤途上では、赤電にお目にかかることは難しいようだ。ならば週末、とにかく金町線に行けば、青か赤がどこかで往復している?ということにして、9月12日、あえて乗車することを決めた。日暮里の乗換改札(JR<=>京成)では、PASMOのオートチャージが使えないとやらで、思わぬ冷や水を浴びるが、13:40に何とか高砂に到着。4番線に金町行きが入ってくるのを待っていたが... あいにく青でも赤でもなくやはり空振り。同駅車庫(検車区)に赤電が待機しているのを見つけられたのがせめてものお慰みである。(一応、動画↓)

  • ついでに「アド街」

関屋駅上りホームより荒川方面(行商専用車の案内がまた何とも...) という訳で、走っている赤電にはこの日も縁がなかったのだが、すごすごと帰ってしまっては能がない。高砂から上野に戻る途中、関屋で降りることにした。何を隠そう、9月12日の「アド街ック天国」は、ズバリ「京成関屋」(牛田・堀切・関屋と併記するならわかるが、堂々「京成関屋」の一点張り)。ホーム上から雰囲気だけでも予習しておこう、というちょっとした思いつきである。

 この予習が奏功したか、当夜の「京成関屋」編はすっかりハマってしまった。笑いあり、涙あり、なかなかの出来だったと思う。川と鉄道に囲まれている街だけに、いい流れがあり、それを番組がうまく汲んで紹介したため、だろう。いわゆる「住みたい街」ランキングは固定観念(オシャレ、グルメetc.)に誘導されている観があるが、関屋のような街が今回のように情感込めて取り上げられることが増えれば、「住みたい」の観念も変わってくるものと思われる。

 「京成関屋」だった割には、京成100周年の話が出なかったのが惜しまれる。2007年の年末には「京成線タウン in Tokyo Best50」という一大特集が放映されているし、そのうち「八広」(と思っていたら「柴又」に変更?)に出没するようだから、大目に見るとするか。

 次回はちゃんと関屋の改札を通って街(特に柳原界隈)を探訪するか、とも思う訳だが、カラー列車が走っている間はそっち優先になりそうだ。今回は紹介できなかったが、「ファイアーオレンジ」という威勢のいい、されどちょっと物騒な編成が「9月中旬」にお目見えする。ファイアー! 同じ日にうまく収められればいいのだが。ま、気長に一つ。(確実に見物するなら、幕張本郷辺りが良さそうだが、ちょっと遠いのが難。逆に都内でしっかり見届けられれば、その方が価値はありそうである。)


  • おまけ

1.京成線を撮るなら

 JRの駅からすぐにアクセスできるのは、都内で言うなら日暮里か金町か。(上野も近いが、地下なので撮影するには入場しないといけない。)

 ただ、金町は本数が少ないので、やはり日暮里ということになる。日暮里では、常磐線ホームからだとお隣なのでよく見える。難点は常磐線の上野行きが入ってくると隠れてしまうこと。改札を出て撮影するのであれば、北口から横断歩道を渡った橋の歩道がオススメ。橋の名は「下御隠殿橋(しもごいんでんばし)」という。

 常磐線ホームからスカイライナーを撮影(今なら記念ロゴマーク付き)

 下御隠殿橋は、「フレッシュひたち」など、常磐線特急を撮るにも最適

 走り抜けるシーンを撮るなら、前述の通り、西日暮里下車、日暮里舎人ライナーの駅へ続く「西日暮里五丁目交差点陸橋」がいいと思う。

 陸橋から日暮里方面(下の道路は尾久橋通り)

 陸橋から三河島方面(下の道路は道灌山通り)

 やや古いが、鉄道路線は変わらず。西日暮里はさまざまな列車(新幹線から貨物まで)を見たい人には打ってつけ。

 高砂まで行けばいろいろな車両(京成・都営・京急・北総・芝山)にお目にかかれる。行先も実に多彩。

2.2010年度に向けて

 2009年度ならぬ2010年度の話ではあるが、100周年記念事業に当たる。「成田新高速鉄道」の開業がいよいよ現実味を帯びてきた。下御隠殿橋からも新しい線路(→参考)がよく見えるが、これは本線の高速化の一環。高砂駅でも金町線を高架化する工事が進んでいて、これまた同じ。日暮里〜成田空港間を36分で結ぶためのテコ入れが進んでいる訳だ。古びた橋脚も直していくんだと思うが、日暮里〜青砥のウネウネは如何ともしがたく、この区間に限ってはスピードアップは望めそうもない。

 東京ローカルな感覚あふれる区間だけに下手な工事はしてほしくないが、千住大橋のような待避駅を増やすといった改良は必要かも知れない。待避機会が増えれば、また以前のように急行(廃止前の急行停車駅は町屋・千住大橋・堀切菖蒲園)を走らせることもできるだろう。それなりの街が多い割には優等列車がないのは不自然、されど快速や急行など種別を増やせば新型スカイライナーの足かせになりかねない。やはり難しい?

3.100周年つながり

 京成電鉄が創立100周年なら、山手線は命名100周年。その周年記念の編成が9月7日から走り出している。ただし、こちらは1編成のみ。山手線の駅で1時間待っていれば巡り合えるはずだが、そう易々とはお目にかかれまい...と思っていたら、いやいやどうして。その12日の京成線ミニ旅の後、上野駅でバッタリである。走り込んできた時のインパクトは絶大だった。

 京浜東北線が快速運転している時間帯だったので先回りして、田端で撮り直すという手もあったが、乗車するのも悪くないと思い、そのまま田端まで。途中どの駅でもケータイで撮影する人を見かけた。なかなか好評のようである。

 復刻調ラッピング電車ということだが、その色がチョコレート色ということもあり、ズバリ「チョコレートは明治」の全面広告編成になっている点、要注意。(走っていると溶けてしまいそう?) この編成、名前は何故か「ぶどう色2号」。阪急電車も似たような色だが、あちらはマルーン(maroon:#800000)。マルーンに似たチョコ色のぶどう色、と言って通じるかどうか、だ。

 京成線は青、赤、ファイアーオレンジ、山手線はぶどう色。秋らしく、色とりどりの電車が走る。簡単に出会えないのが悩ましいところだが、その分見つけた(または乗車できた)時の喜びは大きいと思う。

  • こちらもどうぞ ⇒ 京成線が出てくる話題

第115話 1200駅! / 第181話 手荷物への配慮 / 第217話 あらかわ号乗船レポート / 第226話 捏造は×、ゲン担ぎは○? / 第243話 ドラマティックステーション / 第260話 「アド街」放送666回に寄せて

 

第288話 クールなCOOL BIZトレイン(2009.9.1)

 2005年の流行語に選ばれた「クールビズ」。4年も経てばそれほど耳にしなくなるのが時の流れというものだが、今夏もしっかり登場してきた。今回は趣向を変え、電車とのタイアップ、その名は「クールビズ・トレイン」である。

 「決着の夏!」が果たされ、世間は熱っぽくなっている観があるが、8月31日の東京は台風接近に伴い、俄かにクールダウン。いろいろな意味で大風が吹き、雨を涙に喩えるなら悲喜こもごも、そんな象徴的な一日である。風雨ですっかり冷え冷えしてしまっているので、クールビズも何もない訳だが、一応、そのトレインは走っている(と思われる)

 とにかく聞き知ったのが遅かったため、小田急電鉄と江ノ島電鉄で運行されたクールビズ・トレイン(8月3日〜7日の5日間限定)にはご縁が無かったが、東京急行電鉄では路線限定ながら運行中(→参考。池上線・多摩川線については8月末で終了となったが、東横線(+みなとみらい線)では11月末まで走るというので見上げたものだと思う。該当する車両編成(例:東急東横線の場合、5000系)において、全車両の車内冷房温度を通常の設定より1℃高くしてあり、その分、省エネに、つまり乗客の服装がクールビズ仕様(老若男女問わずクールビズでいいかどうかはまた別にして)になっていれば暑さを感じなくて済む、という取り組みである。(10・11月はウォームビズ?)

 残念ながら、駅頭のポスターの他は目立った案内はなく、該当車両についても外側に正方形のステッカーが貼られている程度で、その意味や趣旨がすぐに把握できないのが難点。「運転士や車掌の服装がクールビズだからクールビズ・トレイン?」といった誤解が一部ブロガーの間に広がるような状況にさえなっている。車内にもこれといったPRはなく、温度計が設置されている訳でもないので、体感的に少々の暑さを感じて初めてそれがクールビズ・トレインであることを知る、そんな乗客が多いのではないだろうか。(「クールビズ・各停」「クールビズ・特急」など、新たな列車種別を設けても良さそう?)

 冷房の通常の設定というのは、概ね24〜25℃とされており、いわゆる省エネ温度(28℃)とはかなり開きがある。その差を埋めるのが趣旨ではないだろうが、通常+1℃ということであれば、クールビズ・トレインは25〜26℃になるはずなので、少しは省エネ温度に近づくことになる。果たして実際は?

 興味本位もあるが、東急東横線(5000系)にとにかく乗って、温度計(棒状・液)で測ってみることにした。その結果は以下の通りである。

 8月24日(月)、晴れ(午後はところにより豪雨)
・13:25 自由が丘発 各停(渋谷行き)1号車(先頭車両):22℃
 *終点の渋谷到着前は21℃
・13:45 渋谷発 特急(元町・中華街行き)6号車(弱冷房車):24℃

 運転士はもちろん軽装(渋谷駅到着時の指差し確認・・・合言葉は「クールビズ、よーし!」か)

 クールビズ・トレインにも弱冷房車は付いている(表現としては紛らわしい?)

 冷気が直接当たらないようにしながら、温度計の赤線が止まるまで調べた結果なので、決して大きく外れる値ではないだろう。混雑度や時間帯、日射、天候、走行区間の違い(地上か地下かなど)、停車駅の間隔(各駅停車か急行かなど)、そして何より車両や車内設備の新旧によって、温度は変わってくるので、一概に「●●℃だから省エネになっていない」とは言えないが、我ながらこれには驚いた。本来なら寒さ対策が要らない温度設定のところ、わざわざ上着を羽織る女性客がいたことからもその冷え具合がわかるかと思う。5000系は比較的新しい車両なので、冷房効率が良く、設定温度以上に涼しくなるというのが一因として考えられそうだ。

 なお、同じ日に他の路線で調べた結果(座る位置や温度計を持つ高さは同じ)は次の通り。

日付

路線等

形式

乗車車両

実測温度

乗車駅

乗車時刻

種別等

8/24

JR埼京線

205系

先頭車両(10号車)

24℃前後

北赤羽

11:54

上り各停

東京メトロ副都心線

7000系

先頭車両(8号車)

23℃

池袋

12:30

上り各停

東急田園都市線

8500系

先頭車両(10号車)

23℃

渋谷

12:56

下り各停

東急大井町線

6000系

後尾車両(6号車)

21℃

二子玉川

13:18

上り急行

東急東横線

1000系

後尾車両(1号車)

22℃

中目黒

13:55

下り各停

東急東横線

9000系

6号車(弱冷房車)

25〜26℃

祐天寺

14:00

上り各停

東京メトロ日比谷線(車両は東武)

20000系

後尾車両(8号車)

23℃

中目黒

14:05

 

東京メトロ銀座線

01系

後尾車両(1号車)

24℃

銀座

14:27

 

JR中央線快速

E233系

4号車(弱冷房車)

22〜23℃

四ツ谷

16:19

下り快速

JR埼京線(車両はりんかい線)

70-000系

後尾車両(10号車)

23〜22℃

新宿

16:55

下り各停

 

 副都心線の座席にて(一時は22℃?)

 これは東急1000系

 70-000系では、徐々に温度下降

 銀座線と中央線快速はそこそこ混んでいたが、他は立ち客まばら、空席チラホラといった状況。人が少なければ冷えるのは道理。だが、それにしても、である。

 この日、上記沿線の一部では集中豪雨に見舞われ、渋谷では28℃だった気温が一気に20.6℃まで下がったと言う(夕方の某天気番組にて)。外の気温よりも電車の中の方が暑くなっていた可能性があり、乗客も困惑したことだろう。冷房設定はただでさえ難しい。クールビズ・トレインが面目を果たし、地球温暖化対策として実効性を上げるのはもっと困難かも知れない。まずは、社員がきちんと温度計持参で実測するなり、体感するなりが必要だろう。(シミュレーションはやっているはずだが、どこか十分でなかったがために不可解な温度になっているものと思われる。年数の経っている車両の方が温度高め=クールビズに適う、という逆転現象は説得力に欠ける。)

 意識啓発としては一定の効果はあるだろう。だが、抽象論や感覚頼みではなくやはり「見える」化が重要と思われる。車外にデジタル温度表示(電光の行先表示をアレンジetc.)があれば、服装に応じた乗車選択ができ便利だろう。弱冷房と言っても大して変わらない場合もあるから、むしろこれをクールビズ車両と言い換えて、なおかつ温度も表示すれば言うことなしだ。

 外に表示するのが難しいのであれば、せめて車内のどこかにでも。アナログ式のでいいから一つ取り付けてもらえれば見る人は見るだろうし、訴求にもなるだろう。

 さらに実効性を高めるのであれば、古参の車両の空調設備を一新して省エネ性能を上げる、というのも考え得る。エコポイントは一般消費者向けだけでなく、むしろ業務用・事業者向けにあってもよかったかも知れない。車両を新造する方が手っ取り早いのだろうと思うが、設備更改を促す公的助成のようなものがあれば、また違った展開も出てきたのではないだろうか。

  • 余談1

 クールビズと言えば、ズバリこの方だと思うが、今回の選挙では何ともクールな結果(「もったいない」というフレーズも意味深だし)となってしまった。アクセスしやすいので、31日朝に選挙事務所に行ってみたが、至って静か。風車の回転が何とも空しく映るのだった。都内でクールビズ・トレインが走るのは小選挙区で言えば主に東京5区なので、関係ないと言えばないのだが、クールビズ(COOL BIZ)の文字が目に付く以上、東京10区の選挙戦のことを思い起こす人も少なからずいるだろう。仮に西武池袋線あたりがクールビズ・トレインを走らせていたら、ちょっとしたPR効果も? どっちにしてもこのトレインが走り続けることに何らかの意味はありそうだ。

  • 余談2

この日のクールビズ・トレインは23℃とやや高め なかなか同一条件では測れなかったりするが、他の日時で調べた結果は以下の通り。証拠となる画像も一応付けておくが、全てが揃っている訳ではない点はご容赦願いたい。(原則、座席が空いていればそこに温度計を置き、撮影。それが難しい場合は降車時に可及的速やかに撮ったが、ピントが合わずひと苦労。もたもたしていると温度が上がってしまうのがまた何とも...)

日付

路線等

形式

乗車車両

実測温度

乗車駅

乗車時刻

種別等

8/25

JR湘南新宿ライン

E231系

後尾車両(15号車)

18℃

赤羽

12:13

上り

JR山手線

E231系

先頭車両(1号車)

22℃

池袋

12:43+α

内回り

JR京浜東北線

E233系

先頭車両(10号車)

21℃

田端

15:34+α

北行

 

 

 

 

 

 

 

 

8/28

西武池袋線

20000系

先頭車両(1号車)

23〜22℃

池袋

9:23

下り各停

東京メトロ副都心線

10000系

後2両目

20℃

小竹向原

9:47

上り通勤急行

東京メトロ丸の内線

02系

前2両目

24.5℃

新宿三丁目

10:02

 

東京メトロ日比谷線

03系

後尾車両(8号車)

24〜23℃

霞ヶ関

10:18

 

東急東横線

5000系

後尾車両(1号車)

23℃

中目黒

10:35

 

東急東横線

5000系

6号車(弱冷房車)

23.5℃

自由が丘

10:45

 

東急東横線

1000系

先頭車両(1号車)

23.5℃

都立大学

10:51

北千住行き

東京メトロ東西線

05系

後尾車両(1号車)

23℃

日本橋

11:27

三鷹行き

JR中央・総武線

E231系

先頭車両(1号車)

22〜23℃

中野

11:53

千葉行き

 

 それにしても湘南新宿ラインは寒かった(降りた後でもこの温度)

 京浜東北線は21℃

 西武20000系は下がったり上がったり...

 都立大学のホーム端での外気温は30℃近く(この後、1000系に乗車した途端、温度急降下。ただし、ドアが開き外気が入ると再上昇。祐天寺では25℃になった。)

*次回はかねてから予告していた「京成線」ネタをお届けする予定です。(記念列車にうまく遭遇できたら、という条件つき)(^^;

  • こちらもどうぞ ⇒ 東急東横線が出てくる話題

第74話 南北線、さらに南へ / 第106話 横浜週末 / 第109話 私鉄特急 / 第154話 東急東横線2題 / 第162話 横浜週末(みなとみらい編) / 第283話 平成元年 其の二

 


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