第331話 牛込弁天町と目白台(2011.6.15)
鉄道ほどではないが、バスもチラホラ出てくるのが当・東京モノローグ。載せているのはその一部と考えるなら、特に都バスについては主だった系統は大方乗っている、と自他共に思ってしまう。ところが...
知人の弁理士が新宿御苑に近い場所に事務所を開いたというので、ちょっとした相談を兼ね、訪れることにした。6月10日のことである。通常なら新宿まで出て丸の内線(筆者的には多分徒歩)、または池袋から副都心線〜丸の内線で、新宿御苑前に行けば済むところだが、都バス、しかも「高頻度運行路線」を示す太線の途上に「花園町」という停留所があって、そこからすぐというのがわかったものだから、例の如くSuicaを「IC一日乗車券」にして、向かったのだった。
王子から池袋、そして千登世橋から目白警察署に出て、そこから一本。その高頻度運行路線は「白61」と言って、練馬車庫から目白通りを辿り、椿山荘、江戸川橋、牛込柳町、曙橋と来て、靖国通りから新宿へ向かうものだが、おそらくこれに乗るのが平成初!だったのである。
目白から西、練馬車庫までの山の手(山手線の外)は、いざ知らず、その内側の沿道風景が実に佳く、車窓に釘付けになってしまった。この時点での予定としては、弁理士事務所、文京区教育センター、そして事務所移転に伴う作業と3つあったので、来た道を戻る可能性は低かった。それゆえ、余計にキョロキョロである。江戸川橋〜花園町は、復路でまた通ることになっていたので、その間は安穏としていたが、とにかく目白通りを走っている最中は何とも落ち着かず、「目白から江戸川橋まで歩こう!」と思い立つに至った。そう思うことで落ち着けるしかなかった、というのが正直なところかも知れない。
バスは江戸川橋を出ると山吹町で曲がって西へ進み、その先でまた曲がって外苑東通りに入り再び南下する。この界隈も初めて見る景色ゆえ、キョロキョロが続く。そしてその後、更なるインパクトが待ち受けていた。牛込弁天町である。
東京百景の前座で、第94話に「新宿若松町」という題でこの近辺を探索したことを綴っている。この時は喜久井町がその地と信じていたが、どうやら筆者の記憶に近いのはこの牛込弁天町ではないのか・・・通り過ぎる景色を見ながら、そう直感し、居ても立ってもいられなくなってしまったのである。約束の11時までは時間はある。運行本数が多いのなら一旦降りてまた乗って、も十分可能。だが、お楽しみは後で、ということにしてそのまま花園町を目指した。弁理士のY.K.さんには1時間ほどつきあってもらったが、そんなこんなでお昼も何もなく、再度「白61」に乗り込む。
次の行先である文京区教育センターは、館内にある教科書センターに用向きがあり、折りよく「平成24年度使用教科書展示」云々の期間中だったことから、この日に決めていた。都バスでないと行きにくい場所なので、先の件と合わせて好都合だった訳だが、事務所移転の件が後に控えている以上、あまり悠長なことは言っていられない。悩ましかったが、本数が多いのをいいことに、まずは牛込柳町駅で降り、ざっと見回しながら一つ先の牛込弁天町まで歩き、次のを待つことにすればいいだろう、と相成った。
この高低差、この曲がり具合... 坂道はこんな感じだったような |
どことなく記憶にある路地 |
その先の砂利道。ここではないかも知れないが、こういう場所が他にもありそうな予感が弁天町にはある。 |
記憶が定かならば、バスを降り、道路を横断し、小高くなった細い路地を通り、カーブのある坂道を抜け、再び細い砂利道を...であった。身体が小さければ、小さな坂道でも大きく見える訳だから、その坂道がこれだとすると、行った先に砂利道が出てくる感じも何となく符合する。ただし、この坂道に至るまでが合わない。新宿から乗って、バスを降り、そこを横断するとなると見てきたのとは反対側。小高い細い路地も然りである。弁天町を東西に分かつようにバスが通っていると見立てると、西ではなく東側なのだ。牛込柳町駅で下車後、牛込弁天町では結局次の次のバスに乗った訳だが、乗ってからその東側に小高いのを見つけたものだから、またしてもソワソワ。かくして、教科書調べは必要最低限にとどめ、取り急ぎ、事務所に電話を入れる。
筆者のそんなソワソワが伝わったか、出番見送り(何とかなりそうレベル)とのありがたい返事。となれば、再度教科書をじっくり、という選択肢もあった訳だが、一も二もなし。来た道を戻るばかりである。
移転の前々日につき、その手伝いに行くとしたら、大曲〜[上69]〜江戸川橋〜[白61]〜牛込柳町〜[橋63]〜麹町四となり、いずれにしても牛込を通ることにはなったのだが、時間ができたとあらば、違う展開になるのは道理。大曲ではなく、その一つ手前、安藤坂を上がった伝通院前から乗ることにした。坂の途中で見たこの緑、こういうのはやはりお導きなんだろうと思う。
「教科書展示会場」と出るのはこの期間ばかり?(教科書センターは一応常設) |
文京区立三中前の木々 |
弁天町の西側は、12時20分過ぎからの20分ほど。次の弁天町東側は、14時20分過ぎから同じく20分。計40分の弁天町探訪ができた。が、若松町同様、記憶にピタリと一致する場所は探し出せなかった。英文タイプの原稿を納品した後、つまり帰り道が坂道を上り、道路を渡り、バスに乗った、という順番なのだとしたら、先の写真で合っていることになるが、確信がない。地形的に限りなく近いことがわかったのだから、よしとしないといけないだろう。
バス通り(外苑東通り)が二階部分とすると、家屋左側に一階に相当する路地がある。違う高さの道路が並行するのが弁天町西側の特徴。 |
史跡標の記憶はないが、道路を渡って出てくる坂道、という点でこれは近い |
祖母に連れられて乗ったのがこの系統だとすると、「白61」は初にはならない。冒頭で平成初と記したのはそのためである。ともかく、沿道の景観を楽しむならこの系統!というのを挙げるなら、その一つに筆者は大いに推したいと思う。(あとは、「虹01」「上26」「秋26」「東43」「王45」「黒77」など)
さて、一日乗車券で動いているからには、まだまだこれからである。日を改めて散策に来ることを考えていたが、それが急遽実現した。往路でキョロキョロやっていた目白通り! それしかない。
江戸川橋からだと上り坂があるので、坂を上ったところ、椿山荘停留所で降車して、行けるところまで歩くことにした。目に付いた建物は、東京カテドラル聖マリア大聖堂であり、目を惹いた緑は、野間記念館のそれであった。「こんなスポットが・・・」というのがある一方で、路地に入ると弁天町と似たようなそうでないような趣ある家並みに遇する。目白台運動公園もなかなかだし、日本女子大も格調を感じる。文京区の文、つまり文化的な側面を感じる一帯(区内のone of themだが)と言ってよさそうだ。
東京カテドラル |
講談社野間記念館(現在、「近代日本の洋画展」開催中) |
震災の影響か、瓦が損壊しているが、このような風情ある民家が点在する(目白台一丁目) |
早稲田、代々木とわかる建物が望める目白台運動公園 |
日本女子大の講堂 |
途中、目白台三丁目から乗車してもよかったのだが、何だかんだで女子大まで来てしまっていた(歩行時間は15分余り)。ここからは「学05」、即ち日本女子大発、ノンストップで目白駅行き、もその気になれば乗れたのだが、停留所はあいにく構内。おそらく入構できないだろうし、乗れたとしても女子大生の中に昭和男が一人というのは明らかに違和感がある。おとなしく通常の停留所から本日6回目の「白61」に乗車し、目白警察署に戻った。
時刻表を見ると、ちょうど数分後、15:16発の池袋駅東口行きがあったので、それでもう帰途につくことにした。池袋辺りだと、遠征先は西新井とか西日暮里である。そこまで行ってどうこう、という気分でなかったし、「白61」でいい行楽ができたので、もう十分だったというのが大きい。
定刻を過ぎ、まずやって来たのは「白61」の「椿山荘」行き! |
日本女子大行きの直通が通過し、次に来たのが何と西武バス!(池袋駅行きだが、都バスではないので、乗れず) |
ノロノロと「池65」が入ってきた。7分遅れだった。 |
赤羽〜王子〜池袋というのは往復で同じなので、池袋から先を詳述する。以下の通り。
池袋駅東口〜[池86]〜千登世橋、目白警察署〜花園町〜牛込柳町駅、牛込弁天町〜江戸川橋(ここまで[白61])〜大曲、伝通院前〜江戸川橋(ここまで[上69])〜牛込弁天町、牛込保健センター〜椿山荘、日本女子大〜目白警察署(ここまで[白61])〜[池65]〜池袋駅東口
共同事務所移転(6月12日、麹町(半蔵門駅南)→一番町(半蔵門駅北))に伴い、やむなく新天地に引っ越す出版企画会社があって、その手伝いを翌日11日にする。一度ご縁ができるとつながるもので、半蔵門からの道中、市谷砂土原町、矢来町と通って出てきたのが山吹町であり、新目白通りを進んだ先に待っていたのが「白61」が通る区間(落合南長崎駅〜新江古田駅)だった。6月10日は、こっちにも来ようと思えば来れたのだが、見送って正解か。翌日に違う形で来れたのだから、一興である。(従って、途中で「白61」を見かけているはずなのだが、あまり憶えていない。都電は当然のように見つけ、何枚か撮ることができた。)
本来なら、荒川電車営業所での路面電車イベント(6/12)に行くべきところ、移転日当日と重なってしまっては仕方ない。前日にこの8800形が拝めただけでも御の字である。 |
そして6月18日、土曜の夜と言えばおなじみの「アド街ック天国」である。有楽町線の駅はもともと取りこぼしが多いが、江戸川橋は早々にやってよかろうと思っていた。それがこのタイミングで巡って来た。奇遇と言えば奇遇である。江戸川橋は単に乗換レベルで、街歩きをした訳ではないが、山吹町や椿山荘もエリアに含まれるとなれば、雰囲気だけでもちょっとしたおさらいになるし、いいスポットが見つかれば「ぜひ」となる。その日のうちに歩くことができたのはよかったが、結局、また足を運ぶことになる可能性は大。「目白から江戸川橋へ・・・」、思い立ったことは実行すべきだろう。(レポート、一つ気長に)
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